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リアクション
【葛城 吹雪(かつらぎ・ふぶき)の一日】
結論から言おう。テロリスト(非リア充エターナル解放同盟公認)の朝は早い。
ものすごく早い、だがお日様がいい感じだと結構遅い。人の性である。
吹雪は朝早くから入念な準備をした上で、しっかり武装して外出する。
ターゲットは勿論、リアルが充実していそうな者たちへの爆破行為である。
とある街中。
「派手に爆ぜろ、であります!」
真昼間からイチャつくカップルを見つけては、爆破を続けていく吹雪。
―いいぞ! もっとやっちゃってください!
スタッフBが興奮している。何か嫌なことでもあったのだろうか。
「……むっ、あの人影は。尾行するであります!」
彼女は何かを見つけた。一体、何を――
【アルテミス・カリスト(あるてみす・かりすと)の一日】
結論から言おう。天才科学者の朝は、割と普通の時間である。
「フハハハ! 我が名は世界征服計画を企む悪の秘密結社オリュンポスの大幹部、天才科学者ドクター・ハデス(どくたー・はです)!
ククク、今日も世界征服日和だな!」
雲ひとつない快晴に向かって、すごいことを口走っている。
そんな笑い声を聞いたアルテミスは、気を改める。
「よしっ、今日こそ、キロスさんと結婚式を挙げてみせます!」
小声だった。どうしても結婚式を邪魔されたくないようだ。そりゃそうである。
―今日のメイクはばっちりですか。
「はい、いつもよりも時間をかけてメイクをしましたっ」
準備は万全、恋する乙女は最早止められない。頑張れアルテミス。
「お、お待たせしましたっ」
「いや、別に待ってねぇよ」
アルテミスは最愛の人、キロス・コンモドゥス(きろす・こんもどぅす)と昼食がてら待ち合わせをしていた。
いつも式を邪魔される二人は、それでもめげずに何度も何度も式をしているそうな。
「キロスさん、今回はどこで結婚式を挙げましょうか」
「んー、夜に、教会とかか? 小さいところで、静かに」
「な、なんだかロマンチックですね。そういうのも」
「あ、赤くなんなっ! こっちまではずいだろうが!」
―初々しいですねぇ。
「誰が非モテだよ!?」
「キロスさん、誰もそんなこと言ってませんよ!」
スタッフC(既婚者)の言葉にキロスが狼狽していた。
だが、その二人の幸せに、トラブルメーカーたちの魔の手が迫ってきていた。
夜。文句のない、星空に恵まれた夜。
小さな教会でアルテミスとキロスは向き合っていた。
「エーソレデハ」
「時間がないのですぱっと言っちゃって下さい!」
「OH! ジャ、ハーイキースキースキース!!」
ノリが軽すぎる神父だが、これで時間短縮に成功。
「キロスさん……好きです」
「……俺もだ、アルテミス」
そのまま二人の唇がかさ
「そこまでだ! キロスとアルテミスよ、観念して結婚を諦めろ!」
ねられない。惜しい。
オリュンポスの戦闘員たちが二人に襲い掛かる。
そしてここから、四人の一日が交差する――
【テロリスト&トラブルメーカー×キロス&アルテミス】
更にここへ、吹雪が駆け込んでくる。
「リア充には等しき爆破を、そういう世界の掟があるであります!」
吹雪が手当たりしだいに爆破を始め、戦闘員たちもちょろちょろとしている。
「くそっ、結局こうなるのかよ」
「いつまでたっても、式が挙げられませんねっ」
アルテミスとキロスが背中合わせになる。
「まっ、らしいっちゃらしいのかもな!」
「……そうかもですね。では、
正義の騎士アルテミス、邪悪なオリュンポスの悪事を許しませんっ!」
「同じく“アルテミス”の騎士、キロスがお相手するぜぇ!」
二人の攻撃と連携は見事。敵を次々と打ち負かしていく。
「手強いでありますが……一矢くらいは報いるでありますよ!」
吹雪が二人の隙をついて爆弾を投げつけて、爆破する。
これを気にハデスも吹雪も撤退、残ったのはボロボロになった教会と煤けた二人だけだった。
だから、二人のキスの味は、大いに苦かったようだ。
いつしたのか? 我々のフィルムには記録は残っていない。
これが葛城 吹雪、そしてアルテミス・カリストの一日――