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リアクション
洞窟地帯を抜けると、地下神殿の遺跡に到達した。
「いや、これ、神殿っていうよりは……」
シリウスが、そう呟いてサビクを見る。
「コイツは、古王国時代の遺跡だよな?」
「多分ね。
再び此処に戻るとはね……。因果なことだよ」
サビクは頷く。
神殿のように見えるが、もしかしたら王宮の一部かもしれない、とも思った。
荘厳な建築物であることは間違いないようだが、火山と一体化していて、判別が難しい。
「今となっては、ボクの記憶もあまり役に立たないだろう。
この遺跡が昔何だったかなんて、どうでもいいことさ」
サイコメトリで構造を調べようとして、サビクは気配に気付いた。
何かが近づいて来る。
柱の間を縫って這うように、何か巨大な物が移動している。長い。
「大蛇か……!? いや、」
シリウスの横で、リーブラが光条兵器、オルタナティヴ7を構えた。
頭の部分に、人の体がついている。人の形をしているだけで、その瞳に、知性の色は全く窺えなかったが。
機を窺う大蛇は、既に契約者達に気付いていて、牙を剥きながらシリウス達を睨みつけている。
その口元からシュウシュウと吐き出される息に気付いて、シリウスははっと腕を見た。
此処まで流れてくるガスで、石化しかかっている。
「こんなところにゴルゴンかよ? 皆下がれ!」
一行に叫ぶシリウスの声と共に、リーブラとサビクは前に飛び出し、左右に散る。
地下遺跡群に足を踏み入れる前に、セルフィーナ・クロスフィールドは誰にも気付かれないように密かに祈りを捧げた。
この遺跡が古王国首都のどの建物なのか、セルフィーナにも判別はできなかった。
(けれど此処は、わたくしの種族にとって、神聖な場所……。
どうか皆様に、歴代の民の加護がありますように)
セレンフィリティとセレアナは、互いにフォローしあいつつ、襲撃するガーゴイルの群れに応戦していた。
「ねえセレアナ」
ガーゴイルの頭を銃弾で砕きながら、一旦戻って背中を合わせたセレンフィリティに、「何?」と答えた。「この戦いが終わったら……結婚式を挙げない?」
「……セレン……」
ドキリと顔を赤らめて、頭を砕かれても尚攻撃してくるガーゴイルの体を、それでも銃撃の手は止めずに容赦なく撃ち砕いて、セレアナはふっと息を吐いた。
「――そういう、死亡フラグみたいなことは言わないで」
「だってもう、暑くて……」
ふっ、とセレンフィリティも苦笑する。
この六月に、二人は結婚した。
けれど挙式は二人きりで挙げたので、近い内に友人達を招いて改めて結婚式を披露しようと、それは前々からの予定だった。
「いいねえ、結婚式! 俺は愛する者の味方だぜ☆」
駆けつけたウォーレン・アルベルタ(うぉーれん・あるべるた)とジュノ・シェンノート(じゅの・しぇんのーと)が、後方から弾幕援護で援護射撃をしながら、叫ぶ。
核とか関係ない。愛を掲げるものを支える、がウォーレンの信条だ。
セレンフィリティ然り、リア・レオニス(りあ・れおにす)然り。
「前の方で、デカい奴が出てきたらしい。
ここは俺達に任せて、援護に行ってくれるか?」
「了解したわ。後お願いね!」
セレンフィリティ達は、この場をウォーレン達に任せて走って行く。
「やれやれ、損な役回りですよ」
思ってもいないことを呟いて大袈裟な溜息をついてみせ、ジュノがガーゴイルの群れを見渡す。
「敵さん、そこをどきなさい。
生産性の無い方が邪魔をしないでください」
ジュノは飛来するガーゴイルに、【天のいかづち】を撃った。
ガーゴイルは嫌悪の雄叫びを上げたが、決定打にはなっていない。
「流石に、堅いですね……!」
元より、ジュノは主戦力ではなくサポートタイプだ。
ウォーレンも同様に後方支援タイプだったので、この数にてこずっていると、当座の魔物を撃退した北都達が駆け寄って来る。
「遅れました。多いですね」
クナイ・アヤシはガーゴイルの群れを見上げる。
「これ、やり過ごせないかな?
相手する必要は無いんだし、通り過ぎられればそれでいいよね」
北都が言って、まだ後ろにいる者がいるかどうか、ウォーレンがHCを使って確認する。
その間に、龍鱗化で防御を固めたクナイが、前衛に飛び出した。
氷の属性を纏った絶冷斬でガーゴイル達に、まとめて攻撃を放つ。
「すまない! 俺達で最後だ!」
殿を取っていた歌菜と羽純が駆けて来る。
「じゃあ、行くよ」
北都は、一帯にホワイトアウトの吹雪を起こし、ガーゴイル達の目を眩ませ、動きを鈍らせて、その間にこの場を撤退する。
追ってくるなら、追って来た時だ。今は最深部に到達することが最優先事項である。
結和・ラックスタインは、石化した大熊丈二の腕の治療を済ませて、ほっと息をついた。
更に、丈二が火山ガスにやられている様子でもあると見て、【清浄化】の魔法を掛ける。
「腕が砕けなくてよかった……。終わりました。でも、どうか無理はなさらないでください」
「ありがとうございます」
「熱気もすごいですから、熱中症には気をつけてくださいね。
他に集中していると、対処を忘れがちになる症状ですので」
てきぱきと処置をする結和の言葉に、丈二は頷く。
「留意するのであります」
結和は、地下遺跡内の、目立たず手頃な一室を見つけて、救護室として利用していた。
扉のところにはパートナーのエメリヤン・ロッソーが立って外を伺い、護衛をしている。
「私達は、最深部には行かず、このまま此処で待機します。
何かありましたらすぐにおいでくださいね」
魔物には好戦的な物が多く、こちらが戦いを避けようと思っていても大抵向こうから襲撃して来たが、幸いにも此処まで、重傷者は出ていない。
少しの不調にも気をつけておこうと、北都など時折結和の所に来る者もいるが、いつも症状は軽く安堵していた。
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