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黄金色の散歩道

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黄金色の散歩道
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繋がる空の下で


 とある休日の公園。

「……良い天気だな」
 シリウス・バイナリスタ(しりうす・ばいなりすた)は一人気ままに誰もいない園内を時折澄み切った空を見上げながら歩いて休日を楽しんでいた。
 歩き回る中
「…………リーブラと出会ってから6年、久々の一人で寂しいんだろうな、オレも……自覚はあるけど(オレは百合園で教師、サビクはシャムシエルを捜索にニルヴァーナ残留、リーブラは宮殿勤め……離れ離れだが円満な別れ……一生会えないという訳じゃねぇけど)」
 シリウスは自分の寂しがる気持ちに苦笑気味に唇の端を歪めながら
「……あれから何も無いようであったからな(その中でも一番は心配されるから誰にも言ってないが、たまに感じる……いや見えるアイツの……行方不明のシャムシエルの気配……姿が)」
 現在の自分が抱えるちょっとした異変をしんみりと胸中でつぶいていた。
 シャムシエル・サビク(しゃむしえる・さびく)に対して最初は興味から関わっていたが、彼女を知るにつれ何とかしてやりたいという思いが次第に強くなるものの相手には拒絶され気味であったが、ニルヴァーナの大瀑布で決着を着ける事が出来た。しかし、シャムシエルは大瀑布に落ちて行方不明となりシリウスは教職という仕事を果たすため一人パラミタに戻って来たのだ。
 その時
「……噂をすればなんとやらか……今もいる」
 そう言うなりシリウスは金色の双眸を前方のベンチに向けた。
「……相変わらずの挑発的な笑顔だな……(……生きていたとしてもこんな所に顔出すはずがないから……妄想、思い込みだってわかっちゃいるが……)」
 シリウスは自分にしか見えないベンチに座る挑発的な人を小馬鹿にしたような笑みを浮かべる因縁の相手を見据えていた。
 その上、
「……やっぱり喋らないか……例え幻でも……」
 幻のシャムシエルは何も喋らずただ挑発的に笑うばかりなのだ。
 しかし、シリウスには
「……何も言わなくともお前が言おうとしてる事は分かってる」
 聞こえるのだ。あの聞き慣れた声で
『結局、キミも独りになったんだ』
『キミもボクと同じようなものさ』
 と言うシャムシエルの声が。
「…………分かってるよ。お前が来るのはオレが挫けそうな時、心が凹んだ時だもんな」
 シャムシエルの声が聞こえたシリウスは目の前の彼女をにらみ唇の端に笑みを浮かべた。
「……全く、こういう時ばっかりに現れて」
 シリウスは溜息を吐きながらシャムシエルの隣に腰を下ろした。因縁の相手だからこそ寂しさや困難な現実の象徴として自分の前に現れるのだと。
「……」
 ベンチに座ったシリウスは隣のシャムシエルには一瞥もせず、竪琴の妖精鳴弦ライラプスを取り出し
「どんなに離れても、時が過ぎても(お前だって……いつかまた見つけてみせる……必ず)」
 変わらぬ笑みを浮かべるシャムシエルに胸中で話しかけながら
「オレたちは一つだ(これまで様々な事があったな……そのおかげで……)」
 これまでの山あり谷ありの出来事を振り返りつつ静かに弾き語り
「オレたちはここにいるんだ……!」
 シリウスは自分の意志が込められた最後の音を奏でた。

 竪琴の余韻が残る中。
「……負けるかよ。オレは一人だけど孤独じゃない。離れても、相棒はいつもオレの心の中にいる……繋がってるんだ……どこかで……」
 演奏を終えたシリウスは澄み切った青空を見上げ胸に詰まった多くの思い出や相棒の顔を思い出していた。どこかで自分と同じ空を見上げているはずだと信じて。
 そして
「……そうだろ?」
 シリウスは顔を空から離し隣に向かって声をかけた。
 その先にはもう誰もいなかった。