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神楽崎優子の挨拶回り

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神楽崎優子の挨拶回り

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「おーし、そろそろ終了、終わりだ。片付けようぜーっ」
 イルミンスールのウィルネスト・アーカイヴス(うぃるねすと・あーかいう゛す)が子供達に声をかける。
「あいたっ、てめ、今俺にぶつけたの誰だ!? 出てきやがれ!!」
 突如背中に衝撃を受けて、振り向いたがその方向には木が立ち並んでいるばかりだ。
「うふふふ」
「あはははっ」
「きゃーっ」
 子供達がわっと飛び出して四方八方に飛んでいく。
「そこへ直れ、今の恨み3倍にして返すッ!!」
「あしたねー」
「あしたもあそぼうね〜」
 ぶつけられたボールを拾い上げて手を振り上げるが、子供達は別荘の方へと飛んでいってしまう。
「こんにゃろー! 待てって言ってんだろー! ごらぁ!!」
 子供達と遊んであげながら、ウィルネストは遊ばれてもいた。精神年齢は子供達とあまり違わないようだ。
「鬼ごっこですか?」
 小さな笑い声と共に、大人の女性が近付いてくる。
「っと、マリルの方?」
 振り上げていた拳をおさめてウィルネストが問うと、その女性は首を縦に振った。
「んーと、ちょうどよかった。ちょっと聞いてみたいことがあったんだ」
 ウィルネストは、ボールの入った箱を持ち上げて、マリルと一緒に別荘の方へ歩き出す。
「ズバリ、この子達なんなの? オマエ達、何をするために、どこに行くんだ?」
 ウィルネストも子供達の里親を探している件について、話しを聞いていた。
「遠い昔、色々あって……私達は生まれて、集落を築いて、皆で暮らしていたのだけれど。私とマリザは女王の騎士に志願し、認められて女王をお守りしていたわ。その後、現在のヴァイシャリーにあった離宮に移って女王の親族をお守りしていたの。その間に、ここに存在していた集落は、鏖殺寺院の襲撃により滅ぼされてしまって……。逃げ延びた子供達と一緒に、私達姉妹は長い眠りについたの」
 マリルはウィルネストに経緯を話していく。その声に元気はなかった。
「この時代に目を覚ましたことが、果たしてよかったのかどうか分からないけれど。戦争はまだ終わっていないから。私とマリザはまた戦いに行かなければならないのかもしれない。そんなところ」
「んー……」
 淡い笑みを浮かべたマリルに、ウィルネストは頭を掻きながら話しだす。
「オマエ達が眠ってたところを叩き壊したのは、申し訳ねーと思ってるけどそれだけじゃなくてだなー」
 ウィルネストが空を見上げれば、子供達は上空でまたはしゃいでいる。
「早く早く」
「おそうじするんでしょ! ウィルののろまー!」
「おそうじしないと、Gのお家になっちゃうよ〜」
「こーらー!」
 ウィルネストが拳を振り上げると、きゃあきゃあ声を上げて、妖精達はまた別荘の方へと飛んでいく。
「まー。チビども言うこときかねーわ悪さばっかするわだけど……なーんかこう、可愛いんだよなー」
 そして「自分も引き取りたい」と、ウィルネストはマリルに話すのだった。
「そんなに悪さする子はいないわよ。多分、そういう子にあなたが好かれてるんだと思う。……よろしくね」
 マリルが微笑みを浮かべて、ウィルネストと一緒に飛び舞う子供達に優しい目を向けた。

「むしった草、どうすればいいの?」
「石もたくさんたまったよ」
 人道に近い場所で、草むしりと石の除去作業をしていた子供達が、一緒に作業を行っている蒼空学園の牛皮消 アルコリア(いけま・あるこりあ)に訊ねる。
「草は焼却所に持っていきましょう。石は集めておいて、もっと沢山集まったら、台車に乗せて私が河原に持っていきますよ」
「うん、わかった」
「じゃ、草、ふくろの中にいれていくね」
 子供達は草を抱えて、袋の中に入れていく。
「もう少し綺麗になったら、耕して花の種を植えましょう。お花のアーチも申請中ですよ。ペチュニア、パンジー、バラそれから、百合の花も咲かせましょう」
「うん、お花いっぱいにしようね」
「しようね〜」
 このあたりの気候は安定しており、色とりどりの季節の花が楽しめそうだ。
 アルコリアは土壌に向いている野菜や果実についても質問したのだが、私有地の趣味的農園な為、それほど沢山の作物の栽培は考えていないようだった。
 種類を提案したところ、葡萄や、柿や、姫林檎、梅などを、別荘の庭先に植える許可が下りた。可愛らしい花も楽しみである。
「桜の並木道は、とっても綺麗ですよー」
 アルコリアは、子供達に地球のことや、パラミタで見て回った風景、冒険について話して聞かせていた。
 この地を殆ど離れたことのない子供達は、非常に興味深そうにアルコリアの話に耳を傾ける。
 特に冒険の話になると、目を輝かせて子供達は沢山質問を浴びせてくる。
「何かを達成するって愉しいモノですよ」
 ふふっと、可愛らしい子供に笑みを向ける。
「うん、かんせいするとうれしいよね」
「パラミタいっしゅうとかしてみたいなあ〜」
 子供達の話を、頷きながら聞き、アルコリアはいつも一番熱心に聞いていた子に、問いかける。
「そう、世界は驚きや冒険に満ちてます。宜しかったら、私といろんな所へ行って見ませんか?」
 ぱっと顔を輝かせて、その子は強く首を縦に振った。
「夕食の準備の手伝いに向かいましょう」
 採った野菜を籠にいれ、子供達と一緒に運んでいるナナ・ノルデン(なな・のるでん)がアルコリア達に声をかける。
「みてみて、あたしたとったおやさい」
「わたしのほうがおおきいのとれたんだよ」
「かずはボクがいちばーん!」
 子供達が次々に野菜を見せていく。
「果物はまだ何も出来ていないようでしたけれど、葉物野菜は多少収穫できるようです。スープでも作りましょうか」
 ナナの言葉に頷いて、アルコリアは立ち上がって共に別荘の方へと歩きはじめる。
「果物は温かくならないと難しそうね」
「お疲れさまですぅ」
 イルミンスールのシャーロット・マウザー(しゃーろっと・まうざー)が、別荘の側でタオルを配っている。
「みんなもそろそろお部屋に戻りましょう〜」
 シャーロットは鬼ごっこをして一緒に遊んでいた子供達に声をかける。
「あせかいたよ、さむいのに」
「わたしもー」
「泥もついたー」
 近付いてきた子供達に、シャーロットは濡れたタオルを渡す。
「そのままお部屋に入ったら、お部屋が汚れちゃいますよぉ。ちゃんと拭いてから入って下さいね〜」
「はーい」
「は〜い」
 返事をして、妖精の子供達はタオルでごしごし顔や手を拭いていく。
「えーい」
「いたっ、おかえしっ」
 そして、そのままタオルで叩き合いを始める。
「怪我しないようにしてくださいねぇ。あ、はい使ってください〜」
 シャーロットは子供達に注意を促した後、ナナとアルコリア、一緒に戻ってきた子供達にもタオルを配っていく。
「拭き終わったら、この籠の中に入れて下さい〜」
「ありがとうございます」
「よろしくお願いします。皆さんも暗くならないうちにお部屋に戻って下さいね」
 子供達の様子に微笑みを浮かべながら、ナナとアルコリアは手を拭いたタオルをシャーロットが用意した籠の中に入れて、頭を下げると別荘の中へと戻っていく。
 笑顔で見送った後、シャーロットは籠の中のタオルに目を移す。
「沢山溜まりましたねぇ」
「たまりましたねぇ」
「たまりましたねぇ」
「たまりましたねぇ」
 子供達がシャーロットの言葉を真似た。
 シャーロットは笑いながら、ランドリーの技術で洗濯をしていく。
「こういう時にランドリーって便利ですよねぇ。それにしても……」
 シャーロットが子供達に目を向ける。手だけではなく、服も泥だらけの子が多い。
 服着たままランドリーした方が早いんじゃないか……とか、そんな考えが浮かぶも、首を左右に振る。
 冬だし、寒いし。
「一応攻撃スキルですしぃ、危険ですねぇ……」
 シャーロットの妄想を知らない子供達は、回る洗濯機を楽しそうに眺めている。
「洗った後は火術で乾か……これもダメですねぇ〜」
 おっとり、少し外れたことを考えるシャーロットのことも、好いている子供達もいて。
「あしたはおねーちゃんがおにね」
「わたし、いっしょにおにでもいい〜っ」
 パタパタ飛びまわっては、勝手におんぶをしたり、勝手に腕にぶら下がっているのだった。
「重いですぅ〜。あ、そうそう果物はまだとれないようですけどぉ、蜜柑を持ってきましたのでぇ、皆で食べましょうね〜」
「はーい」
「わ〜いっ」
 洗濯機の中のように、子供達がぐるぐると空中を回りだす。