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リアクション
第7章 スーパーミラクル全開
(ん? 今何か聞こえたような……いや、気のせいか!)
エロパシーに乗せた周の最期の情報は、総司には届かなかった。
そもそも、総司は今それどころではない。ケータイをマナーモードに設定して、のぞきの真っ最中なのだ。
超重度の巫女フェチである“ドスケベ策士”坂下鹿次郎の案内で、ケイとともに社務所の床下に潜入していた。彼らは、すぐ上で働く巫女さんたちにバレないように、ヒソヒソ声で会話していた。
(鹿次郎さん。鼻血が……!)
(おっほほー。こりゃあたまらんでござるな……!)
鹿次郎は床板の隙間からチラリと見える巫女さんの生ふくらはぎに興奮していた。生足が見えないときは、緋袴の横に切れ目が入っていて丸見えの、千早の尻ラインを見て興奮していた。鼻からのスケベブラッドを大量放出して、床下の土は泥沼になっていた。
ただ、これは巫女フェチだからこその興奮であって、むしろ巫女よりはチャイナが好きな総司はさほど興奮していなかった。これはのぞきの成功とは言えない――総司はそう考えていた。そのため、スケベブラッドはたったの400ミリリットル献血1回分程度だった。
ケイは、ただ苦笑するしかなかった。
上の世界つまり社務所では、鹿次郎のパートナー姉ヶ崎 雪(あねがさき・ゆき)がお守りやおみくじを販売していた。
昼時の混む時間帯が過ぎたのか、隣で働く巫丞 伊月(ふじょう・いつき)とラシェル・グリーズ(らしぇる・ぐりーず)と静かに話しながら作業していた。
「ラシェルさんは、本当によくメモを取るのですね」
ラシェルは色とりどりの付箋がついたメモ帳を片時も離さず、いつも何か書いていた。
「何を書いているんですか?」
「……」
雪に尋ねられても、メモを取るのに忙しくて答えない。
仕方なく、伊月がかわりに答えた。
「あらあら。ラシェルちゃんはしょうがないねぇ。……あれよぉ〜。雪ちゃんのメールの回数でもメモしてるんじゃないかなー」
「そうなんですよね。今日はうちの鹿次郎が何度も何度も、社務所の中の様子を細かく聞いてくるんですよ」
「愛されてるんだねぇー。あれ? それはなあにぃ?」
雪の鞄の横に置いてある、七味唐辛子の瓶を指差した。
「あ、これですか。これは、マイ七味なんですよ。パラミタ産のもので、地球のものより30倍の辛さがあって……ああっ!!」
バッシャー!
手を滑らせて、床にばらまいてしまった。
(うっぎゃああああああああああああ!)
床下で何か聞こえたが、伊月は気づかない。
「あらあら。もう雪ちゃんったら、結構おっちょこちょいのところがあるのねぇ〜」
床下では、鹿次郎が目から血涙を流していた。
(うううー。まだまだあきらめないでござる。……部長殿。ちょっと手洗いに行ってくるでござるよ)
(おお、行ってらっしゃい。あつい部に気をつけろよー)
ケイは、じっと総司を見つめた。
(……)
(てめえ……何見てんだ?)
ケイに話しかけたのは、胸のホルスターにおさまっていたガンマだ。
(なんでもねえよ。……部長、俺もトイレに行ってくるぜ)
(ああ、気をつけてな。……おっ! なんだなんだ。気づけばラッキーのぞきチャンス発生だぜ!!)
伊月が唐辛子を片付けるのを手伝ってかがんでいるので、胸元が見えそうなのだ。
(おお、たまらねえ……!)
着物の隙間から見えそうな胸元ほど、手を伸ばしたくなるものはない。思わず床板の隙間から手を出しかけたそのとき――
(う!)
総司は固まった。
伊月と目が合ったのだ。
(おわった……んぱー)
脳みそがトコロテンになりかけたが、意外! 伊月は叫びもせず、むしろ目配せしてくるではないか!!!
そして、目で話しかけてくる。
(のぞき部ちゃん。そのままでオーケーよ♪)
(うおおお! マジか! い、命が繋がったぜ……こんなこともあるんだな。あとで女子のぞき部に勧誘だぜー)
こうして、総司はのぞきを続けることができた。
その頃、トイレで必死に目を洗ってる鹿次郎の背中を、ケイが血管をピクピクさせて睨みつけていた。
ケイは……復讐の鬼と化していたのだ!
(忘れもしねえぜ。去年の修学旅行……俺を置き去りにして行っちまいやがって。しかもテレビに出るなんて、すげえ羨ましいじゃねえか、クソ野郎どもがッ!!! あんたらのぞき部、全員死刑だ。1人ずつ、確実にぶっ殺してやるぜ!!!)
ケイのすぐ後ろには、パートナーの悠久ノ カナタ(とわの・かなた)が立っている。
さながら悪の女幹部といった体で、カナタがケイを操る。
(ゆけぇい! ケイよ! おぬしこそ……わらわたち、あつい部が放つ最大最強のあつき刺客よっ!)
鹿次郎が目を洗ってようやく顔を上げた、そのとき――
「食らいなっ! 復讐の稲妻を……!」
「えっ? なんでござるか?」
「ファイファーッ!!!」
バリバリバリ!!!
「ごげええええええええええええええええええええええええええ!」
鹿次郎は雷術に倒れた。
しかし、ケイの本当の戦いはここからだ。
鹿次郎が再び目を冷ましたとき、ケイは何故か巫女装束をまとっていた。
「う……うう……」
鹿次郎は二度の負傷で、目がまともに開いていない。
「のぞき部ドスケベ策士、坂下鹿次郎……。ふっ。俺が何故この格好をしているか、あんたにわかるか?」
「うう……格好? 何故でござるか?」
「わらわが教えてやろう……」
悪の女幹部カナタが、床にへたり込んでいる鹿次郎にゆっくりと迫り、耳元に囁く。
「おぬしたちのぞき部の魂、その源は……エロスだ。ならば、そのエロスをねじ曲げてしまえば、どうなるかわかっておるの? ……のぞき部は、お仕舞いだ」
ケイが緋袴の裾をたくし上げてチラリと見せて誘惑する。
「ほら、見なよ……。女になんて興味ない体にしてあげるわ。それがイヤなら……のぞかなければいいのよ。のぞかなければ、私が男か女かなんて関係ないの。そうでしょう?」
しかし、このエロスねじ曲げ作戦には決定的な欠陥があった。
それは……鹿次郎の巫女フェチ度合を甘く見たことだった。
坂下・変態・鹿次郎は、目を開けると、裾をあげて太股をチラチラしている巫女さんのケイに……抱きついた!!
「最高でござるー!!!」
「ば、バカヤロウ! やめろーーっ!」
たまらず逃げるケイを、鹿次郎はスケベブラッド、否、ミコフェチブラッドを大量噴出しながら追いかけていった。
鹿次郎は男女を問わずとにかく巫女姿ならなんでも興奮してしまうのだった……。
「武士道とは、巫女さんとイチャイチャすることと見たりいいいいいいい!!!!!」
「バカなこと言ってんじゃねえええええ!!!!」
カナタは1人、静かに家路についた。
「ケイ……すまぬ。生きて帰れよ」
その頃、野添貴神社には、もう1人女装の巫女がいた。
あつい部のウィルネスト・アーカイヴスだ。
「ファイファー!!!」
ウィルネストは、あつい部部長のケンリュウガーにその格好の意図を問われ、こう答えていた。
「部長! もちろん! あつーくのぞき部を阻止するため。つまり、あつい命をかけた囮作戦だぜッ! 俺の命、受け取ってくれっ!!!」
それを聞いたケンリュウガーは、あつく応えていた。
「なんてあついんだ! ウィルネストこそ真の正義! 真のあつい部部長だ……!! テントは頼んだぜ!!! ファイファーーーっ!!!」
あつい部部長という役職は、あつさに反応すると他が見えなくなる仕様なのだ。
ウィルネストが、実はテントに入って女子の着替えをのぞきたいだけ……なんてことは、全然気がつかなかった。あつさで真実を見失っていた。
そんなわけで、ウィルネストは巫女装束を着ているのだった。あつい部に入ったのも、最初からこれが目的だったのだ。
「この格好なら、テントに入るのも自然ってもんだ。へっへっへ」
たしかに童顔で背が低いため、黙っていればそうそうバレなそうだが……
パシャパシャパシャ!
テントの前には、あつい部広報の天才カメラマン、アラーマキーがライカを構えていた。
「巫女さん、きれいですわー。かわいいですわー! すみません。勝手に撮って。あつい部の広報なのに」
しかし、晶はウィルネストにレフ板を当てる。
「さけさん。やっぱりかわいいからもっと撮るべきですよ!」
「そうですわね! その緋袴からチラリと見えるおみ足なんて、セクシーで売れそうですもの――いえいえ、ただただ美しいですわ。ああ、光が愛撫してますわ!」
パシャパシャパシャ!!!
超ローアングルで股間まで写しかねない勢いのアラーマキーに
「やめろ」
ウィルネストは思わず呟いた。
「え? 今、なんとおっしゃいましたの……?」
ウィルネストは俯いて黙るしかない。
「もしかして……あなた?」
「……」
テントまであと少しというところで、アラーマキーにバレてしまった。
が、しかしだ。
このことは、喋らなければバレないということが証明されたようなもの。
アラーマキーさえやり過ごせば、女子の着替えはすぐそこだ!
どん! どん!
のぞきにあつく燃えるウィルネストは、アラーマキーと晶を突き飛ばした。
「きゃあああ!」
カメラを守ろうとして、アラーマキーは派手に転んだ。晶はそのそばで、レフ板に頭を突っ込んで生首みたいになっている。
「誰にも言うんじゃねえぞっ!」
のぞきの神に魂を売った者は、のぞきを目の前にするとこうまで醜くなってしまうのだろうか。
この哀れな少年の姿を、庭園の奥から見ている1人の中年男がいた。
鬼崎 洋兵(きざき・ようへい)だ。
「おじさん。紳士として、女性にその態度は感心できないな……」
ウィルネストがテントに入ろうと手をかけたそのとき――
ガーンッ!!
洋兵が放ったスナイパーライフルの銃弾は、ウィルネストの緋袴の裾を焦がして森へ抜けた。
ウィルネストはバランスを崩して仰向けに転び……緋袴がペロンとめくれて股間が露わになってしまった。
ちょうど偽テントからピンク映画軍団が何故か火照った顔で出てきて、それを見た。
「きゃああああ! 男よ、男よ!!!」
ウィルネストは全女子に踏みつけられ、その野望は砕け散った。
なお、このとき森へ抜けた洋兵の銃弾は、空飛ぶ箒から落ちて気を失っていた寛太の頬をかすめていた。
「あ……ヤバい! のぞかなきゃ!」
やっと目が覚めた。
洋兵は、ウィルネストの前に手を差し出した。
「立ちなよ」
「ちっ。余計なことを……」
「男同士だ。キミの気持ちもわからんでもないぜ……ただ」
と目線をやると、パートナーのユーディット・ベルヴィル(ゆーでぃっと・べるう゛ぃる)が洋兵を心配そうに見ていた。巫女装束をまとって。
「いや、ユディの着替えだけじゃねえぜ。紳士として、女性を守るのは当然だからな。わかってくれると嬉しいぜ」
「……けっ」
そして、洋兵はあつい部部長のもとに身柄を引き渡しに行った。
その頃、あつい部部長のケンリュウガーはウィルネストをはじめとした部員の力を信じて、自分はサポートするべく境内をうろついていた。
社務所でおみくじでもやろうかと近づくと、伊月は何やら目配せしてくる。そっと床下を指差して、口パクしている。
「の……ぞ……き……」
「なにぃ!!! のぞき部が床下にぃいいいい?」
バリーン!
瞬間、受付のガラス窓をあつくぶち破って突入すると……
「ファイファーッ!!!」
拳で床を叩き割って顔を突っ込んだ。
見れば、こういう狭いところでの移動では異常に能力を発揮するのぞき部ならではのスキル“すげーはやい匍匐前進”で去っていく総司のケツが見えた。
「む……あれは!」
ケンリュウガーは社務所を出ると、本殿前に走った。
と、何食わぬ顔の総司、いや、既に着替えも済ませたマスクド・ゲイザーが立っていた。
そして、床下からもう1人出てきた。
2対1となるとさすがに不利となるケンリュウガーが焦って目をやる。
「ブラックリストになかったが、お前ものぞき部か! 新入部員だなっ!!!」
「……」
それはラシェルで、ただメモをとっているだけだった。
「違うなら……いいんだけどな……」
ケンリュウガーはあつく問い質した自分がちょっと恥ずかしくなって、小さく呟いた。
そして、のぞき部とあつい部、両部長が対峙した。
映画の撮影も大地と大和、2人が担当している。……いわゆる「2カメ」。両者の表情がよく撮れる。
だが、互いに牽制してるのか、睨み合うだけで何も言葉を発さない。
と、そこに洋兵がウィルネストを連れてやってきた。
「おーい。あつい部の部長さんってのはどっちだ? のぞき部の男をとっつかまえたから一応、預けとくぜ」
「のぞき部? なぜだ!!」
問いつめるケンリュウガーにウィルネストはあつく答える。
「ばっかやろー!! あついなら、てめえら本能に従え! 男の本能! それは女子に対する興味だろ!!! のぞいて何が悪いんだ!!! あつくのぞけば、それも立派なあつい部だろうがっ!!」
それは、立派なのぞき部だ。
ガシイッ!
マスクド・ゲイザーはウィルネストの手をしっかりと握った。
「ただのぞきたかっただけ……ウィルネストさん! カッコいいぜ!!!」
「ああ……?」
「一緒にのぞこう! あつい部なんてどうでもいい。未来は本殿の裏にあるぜっ!」
マスクド・ゲイザーはそのまま肩を組んで、躊躇うウィルネストを連れて去っていく。
が、その目の前に……鹿次郎を倒して逃げてきたケイがやってきた。
「ファイファー。……あつい部のケイだ」
「ケイさん……」
既に鹿次郎から連絡を受けていたマスクド・ゲイザーは、静かに頷いた。
「いつでも戻ってきていいんだぜ……」
こうして、ウィルネストとケイの交換トレードは成立した。
そして、マスクド・ゲイザーとウィルネストは、すっかりあつい部に囲まれていた。
「ファイファーッ!」
「ふぁーーーいふぁっ!」
「ファイファイファイファイファイ……ファイファーッ!!」
本殿の目の前だというのに、あつい部はファイファーファイファーとやたらとうるさかった。
マスクド・ゲイザーの胸にいる銃剣付き回転式拳銃のガンマは、舌打ちして吐き捨てた。
「しょうがねえ……。総司てめえ、ひと暴れしとくか?」
「ああ、やるしかなさそうだな」
マスクド・ゲイザーはガンマを構えると、改めてケンリュウガーと対峙した。
が、ケンリュウガーはパートナーのライザーに合図を送ると、黙って空を指差さした。
――空には、メモリープロジェクターによってケンリュウガー自身の姿が投影されている。
その背中、炎の柄の真っ赤なマントには「炎」と書かれていて、バサバサッとはためかせて振り向くと、マスクド・ゲイザーに向かって指を差した。
「悪を断つ正義のヒーロー……あつい部部長、ケンリュウガー見参ッ!!!」
ひゅうひゅう〜。
ぴーぴーぴーぴー。
あつい部の面々は口笛を吹いて盛り上がっている。たぶん、盛り上がりたいだけだが。
「どんどん人が集まってきたじゃねえか……」
巫女姿を見られて恥ずかしがってるウィルネストには、七枷陣が近づいていった。
「やあやあやあ。ウィルネストくん。実はオレもさあ、のぞき部に入ろうと思ってんだよねー。修学旅行で女子にボコられちゃってさー、あれ思い出したらやっぱり……うん。そやね。一緒にのぞき部入ろうや」
そう言いながら肩を組む。
マスクド・ゲイザーと同じパターンだ。のぞき部は何かにつけ肩を組んでくるのだろうか……そんなことを思っていたウィルネストは、完全に油断していた。
「それじゃ、いくで。元キリン隊隊員改め……あつい部所属、な・な・か・せ・じ・ん!」
バリバリバリバリ!!!!
「ぎょぐえええええ!」
……バッタン。
雷術をゼロ距離でぶちかまし、見事に倒した。
「今後ともよろしく! ……なんてね。いいですか? お前らみたいなのぞき野郎がぁ! 騙されたとかなんとか文句を言っては……いけませぇ〜ん♪」
と言ってみたものの、「遺体」はピクリとも動かなかった。
陣のパートナー仲瀬磁楠は、何か手に持ってやってきて大きく振りかぶる。
「のぞき部め……お前にふさわしい装備品をくれてやるっ!」
バシイッ!
焼け焦げた巫女装束の背中に、超協力瞬間接着剤で紙を張り付けた。
しっかりラミネート加工されたその紙には、こう書いてある。
『私は巫女の着替え姿に性欲を持て余す変態紳士です(はあと)』
2人は、ウィルネストをゴロンと転がして、額に『のぞき』と書き、ケータイでパシャ!
すぐさま知り合いという知り合いにメールで送った。
ウィルネストは、これでもう完全にのぞき部員として認知されてしまった。
一方、ケンリュウガーはまだあつく喋っていた。
「のぞき部部長、弥涼総司! いや、マスクド・ゲイザー!! 俺という熱き炎に怯えて逃げ帰るか、それとも貴様ののぞきへの執念の炎で――」
「長えんだよッ!」
ガーン! ガーン! ガーン!
マスクド・ゲイザーがガンマのスプレーショットを放ちながら、突き進む!
そのとき、どこからともなく声が聞こえてくる!
「そこまでですっ! のぞき部の変態部長さんっ!!!」
マスクド・ゲイザーが見上げると、社務所の屋根の上にあつい部員があつく立っていた。
「ファイファー! あつい部所属、熱きハートの魔術師ソア・ウェンボリス、参上ですっ! とうっ!」
ソアはあつく飛び降り……
ひゅーーーー。びったーん!
「またやった!」
雪国ベアが慌ててドタドタ走ってくる。
「ご主人ーーーっ!!」
ソアは地面にびたーんしたまま、泣いている。
「えーんえーん。痛いですーっ」
マスクド・ゲイザーは目の前でびたーんしてるソアに、ごく自然と手を出して起き上がらせた。
「ソアさん。大丈夫か?」
「あ、のぞき部さん。優しいんですね。えへへ……じゃないっ!!!」
慌ててマスクド・ゲイザーの手を払うと、やってきたベアをチラリと見る。
「ほ、ほんとにやるんですか?」
「ご主人。これが一番の作戦だぜ。自信を持ってやるんだ!」
「で、では……いきますっ! ううう。ファイファー!!!」
ソアは叫んで勢いをつけると、徐ろに服を脱ぎ始めた。
「は、恥ずかしいですぅー」
マスクド・ゲイザーは突然のラッキーのぞきにスケベブラッド全開。マスクがぶっ壊れてしまった。
「ええいっ。もうマスクはいらねえ。ただののぞき魔として、堪能させてもらうぜっ!」
申し訳程度に手をかざして目を覆い、パカッと開いた指の隙間からソアを見る。
「ひゃあ。恥ずかしいですよー」
着替えているソアのかわりに、作戦を考えたベアが総司に迫る。
「お前らのぞき部は……あつい連中だ。正直言って、男として尊敬するぜ。だがな……見ろ!!!」
ババーン!
ソアは、スクール水着を着ていた。
「あつい部だから、寒くないですーっ! フィイファー! ……っくしゅん」
恥ずかしそうにモジモジするソアの肩を、ベアががっちり掴んで放さず、まだまだあつく語る。
「いいか、のぞき部! この俺様はお前らとは違う。巨乳女の裸よりも、発展途上の女の子のスク水姿の方が、何百倍も興奮するんだッ! 見ろ! この恥じらう姿を!!! この恥じらうご主人の姿を見れば、お前にもわかるはずだ。すなわち……女の子の方にも『見られてる』という自覚がある方が……エロいッ!!! つまりだ! バレないようにやるのが前提ののぞきでは、このエロさは得られない!!! だから――」
総司は話が長すぎて、よそ見していた。
「よおっ! 寛太さん! 空から落ちたって聞いたけど、大丈夫か?」
森での落下事故から目覚めた寛太が頭を押えながらやってきた。
「はい。なんとか大丈夫です。いやあ、部長。のぞきって奥が深いですね」
ベアは無視されて、怒っている。
「こらーっ! 人の話を聞くときは目を見て聞けーーッ!」
総司が身構えるが、寛太がその前に立った。
「あつい部さん。あなたの話はちゃんと聞きましたよ、。話半分で」
「話半分だあ?」
「あっちがエロいとか、こっちがエロいとか……そんなことどうでもいいじゃないですかッ! 答えは簡単。どっちもエロいんですよ。エロいこと全てに命をかける。それが我がのぞき部なんです! ね、そうですよね、部長」
総司は感心して何度も頷いている。
「ほら、あなたのパートナーをよく見てください……」
寛太はそう言うと、スク水姿のソアに向かって最も適切と言えるスキルを使った。
――アシッドミストだ!!!
胸の辺りがじわじわと濡れて何かが透けてしまい、ミストはじわーっと液体になって股を垂れていく。
「えええっ。なんか、水着が濡れてますよーっ? えーんえーん」
これには思わず、ベアも総司と並んでスケベブラッド全開!
え、えろいっ!!!
既に負傷していた寛太は、この攻撃が精一杯だった。スケベブラッドで制服を真っ赤に染めながら、最期の言葉を呟いて、倒れた。
「安心してください。……このミストは、弱酸性。体にやさしい」
ばったん。
恥ずかしがるソアを静かに鑑賞する総司の前に、今度はプレナ・アップルトンがやってきた。
「のぞき部さん。もういいでしょう」
そして、静かに歌い出した。
「♪三日月揺りかごゆらゆらり〜ひゃっはぁ。
まどろみ揺らいで夢の中〜ひゃっはぁ。
夢なら醒めないままがいい〜ひゃっはぁ」
総司はあっさり眠ってしまった。
「かーんたん! 大成功ひゃっはぁ〜♪ はのんちゃ〜ん!」
クラーク 波音(くらーく・はのん)が喜んでやってきて、2人できゃっきゃはしゃいでハイタッチしている。
「プレナお姉ちゃん! んっふっふ〜。スーパーミラクル全開でいっちゃおうね〜!!」
この2人、何か企んでいるようだ……。
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