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リアクション
「ヴァイシャリーの廃屋での戦いに、ここでケリをつけてやる!」
協力を申し出ていた松平 岩造(まつだいら・がんぞう)はパートナーのファルコン・ナイト(ふぁるこん・ないと)を伴い、現場に駆けつけた。
かつて敗北した屈辱を胸に、白百合団の後に続いて突入をする。
「1人たりとも逃がすな! 頭領は奥か!?」
岩造は、しびれ粉で敵の動きを止めていく。
「進ませてもらおう!」
ファルコンは加速ブースターを使い、一気に接近すると高周波ブレードでチェインスマイト。
製造室の作業員を斬り倒していく。
製造されていた粉がふわりと舞い飛び、血しぶきも舞った。
「汚名返上よ」
その製造室に、敵側の女性が飛び込んでくる。報告と謝罪の為に本部に訪れていたメニエス・レイン(めにえす・れいん)だった。
(いつも通りの自分に戻らなきゃ……そうすればまたいつも通りに戻れる……)
心の中で唱えながら、メニエスはアボミネーション、冥府の瘴気、地獄の天使を発動した状態で、ブリザードを放った。
「くっ」
「岩造様!」
岩造とファルコンナイトは恐怖の感情を受けつつも直撃は避けた。
「邪魔よ、消えてなくなりなさい!」
メニエスが次々に魔法を放つ。
彼女の前には、ミストラル・フォーセット(みすとらる・ふぉーせっと)が立ち、護衛についている。
「メニエス!」
声をききつけて、呼雪が駆け込んでくる。先に行けと岩造に手で合図をし、岩造とファルコンナイトは呼雪に任せて通路へと走り出ていく。
「ここにいたか……静香校長が会いたがっている」
呼雪の口から出たその名前にメニエスの眉がぴくりと動いた。
「知るか! あたしには関係ないわ!」
「お前は何故こんな事を……?」
「パラミタを文化侵略しようとしている地球人共を全て滅ぼす為だ」
メニエスが繰り出す攻撃を、呼雪は機械の後ろに隠れて防ぐ。
「この組織で、こいつらの行動を見ても、地球人だけが害悪だと言い切れるのか?」
「煩い!」
魔法を放ち続けるメニエス。
「ここは桃源郷でも何でもない。お前の夢見た国の住人にも、攫った地球人の娘が死ねば、焼却炉で燃やしてしまうような神経の持ち主もいるんだ」
「黙れ!」
「所詮人間なんて、地球だろうがパラミタだろうが本質は変わらない」
「だからなんだ」
どんな言葉もメニエスは受け入れようとしない。それでも呼雪は訴え続ける。
「パラミタが地球から見た死後の世界と言うなら……何処に行っても延々と同じ事を繰り返しているだけだ」
「……っ」
「これ以上戯言を吐くのは止めていただきましょうか。メニエス様には進んでもらわなければならないわ」
黙って防御に徹していたミストラルが怒りを込めた声でそう言い、カタールで斬り込んでくる。
「お相手いたします」
ユニコルノ・ディセッテ(ゆにこるの・でぃせって)がキマク鋼の楯でミストラルの攻撃を受け、戦闘用ドリルを繰り出す。
「不愉快ですわ。不愉快極まりない」
攻撃を躱して、ミストラルは苛烈に武器をユニコルノに叩き込んでいく。
「メニエス様!」
奇襲班に加わった悠希がメニエスの存在を聞きつけ、製造室へと飛び込んできた。
「静香さまは貴方を傷つけず連れて来て欲しいと仰いました……どうか武器を捨て共に参りましょう」
「関係ないのよ」
メニエスは攻撃をやめない。
だけれど「なんでこいつらは……」と呟き声を発し攻撃が弱まる。
「これ以上の干渉は許しません」
ミストラルはユニコルノに大きなダメージを与えると、悠希に斬り込んでくる。
「殺せ! 機械は壊すなよ!」
更に、武装した男達が部屋の中に入り込み、斬り込んでくる。
「外野は任せてもらおう」
上杉 謙信(うえすぎ・けんしん)が、男達の中へ跳んで、ブロードソードを繰り出していく。
「悠希、謙信……っ」
隠れ身で姿を隠しながら、槙下 莉緒(まきした・りお)は皆の援護の為に、順番にヒールをかけていく。
「メニエス、さん!」
もう1人、少女が駆け込む。
彼女の姿にメニエスの目が見開かれる。
「帰ろう。みんなも、待ってる……」
「何をしに来た。死にたくなかったら失せなさい」
メニエスは険しい表情を見せるもその人物――桜井静香に似た魔道書真口悠希著 桜井静香さまのすべて(まぐちゆきちょ・さくらいしずかさまのすべて)の方へは魔法を放たない。
「元凶のご登場ですね」
ミストラルは悠希の攻撃を弾くと、悠希の魔道書の方へと跳んだ。
一切の武装をしていない魔道書は身体を大きく切り裂かれる。
「静香さま!」
校長の静香ではなくても、辛い光景だった。悠希は栄光の刀とさざれ石の短刀をミストラルの背に繰り出した。
ユニコルノもまだ倒れたわけではない。ドリルをミストラルに突き出す。
ミストラルの体が深く傷ついていく。
「ふーん。結局、純真なイイ子ちゃんだったメニエスが、悪い吸血鬼に誑かされちゃったって事なのかな」
呟き声が発せられる。
メニエスがちらりと目を向けた先に呼雪のパートナーとなったヘル・ラージャ(へる・らーじゃ)の姿があった。
「そりゃ、何処にだってしょーもない人間はいるよ。でも、傷付けたくない子も見付けたんでしょ?」
その言葉に、メニエスは動揺しながら、首を強く左右に振り始める。
ヘルが作り出した隙に、呼雪が吸精幻夜を放ち、幻惑を試みる。
「ミストラルを攻撃しろ。そしてこちらに来い」
呼雪がそう命じたその瞬間に、呼雪は脇腹に強烈な衝撃を受ける。
「貴様ら! これ以上おねーちゃんの邪魔をするんじゃねぇ!」
隠れ身で身を隠し、メニエスを惑わす呼雪の側面に回りこんでいたロザリアス・レミーナ(ろざりあす・れみーな)のブラインドナイブスだ。
「コユキ!」
直ぐにファルが駆け寄って、ヒールをかけていく。
「貴様ら! これ以上おねーちゃんの邪魔をするんじゃねぇ!」
鬼眼で脅しながら、ロザリアスは悠希にも攻撃をしかける。
「させません」
傷ついたユニコルノが盾でロザリアスの攻撃を受けた。
「メニエス様を本当に惑わしているのは……貴方達です!」
悠希は立て続けに石化を狙ってさざれ石の短刀をミストラルに繰り出し続ける。
「く……っ」
ミストラルの体の一部が石へと変わっていく。
「メニエスさん、なんだか辛そうに見えるよ……無理してない?」
ファルは呼雪を癒しながら、メニエスに目を向ける。
「ボクも神子だって分かった時襲われたけど、憎めないよ。呼雪もこんなこと、されたけど……」
ファルのその言葉の後に、呼雪、悠希がメニエスに声をかける。
「こっちに来い」
「行きましょう、静香さまのところへ」
「……るさ、い」
メニエスは頭を抱え、強く左右に振った後、唇を噛み切り血をがなしながら、血走った目で大声を上げる。
「元に戻ろうと決めたのに、これ以上私を惑わすな!」
メニエスはエンドレス・ナイトメアを放ち、続いてファイアーストームを製造室に放つ。
敵も味方も関係なく命令も忘れて狂いながら、精神力が尽きるまで激しい魔法を繰り出し続けた。
薬品に引火し、更なる爆発が起こっていく。
散り散りになって近くのドアと窓から皆外へ飛び出す。
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