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神々の黄昏

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神々の黄昏
神々の黄昏 神々の黄昏

リアクション

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 【救助】が避難活動に当たっていた、同じ頃。
 彼等が回れぬ他の村々では、別の学生達達が、やはり村民達の避難勧告を行っていた。
 
 ■
 
 【避難勧告】のエッツェル・アザトース(えっつぇる・あざとーす)緋王 輝夜(ひおう・かぐや)アーマード レッド(あーまーど・れっど)の3名は、シボラほど近い村々を回っていた。
 エッツェルは光る箒で。
 輝夜は小型飛空艇で。
 アーマードは地上から加速ブースターを使い、2人の後を追いかけて。
 
「神々の戦いは大変興味深いですが、とりあえずは人命救助が優先ですねぇ」
 ゆるゆると行動の意義を唱えるのは、エッツェル。
「と言う訳で、頑張って下さいね♪」
(そんなこと!
 箒の上から言ったって。
 あたしにしか聞こえないじゃん!)
 嫌味ぃ?
 輝夜は精神感応でぎゃんぎゃん喚きたてる。
 声がやんだ。
「輝夜さん?」
 エッツェルが見ると、輝夜は銃型HCに入ってくる最新情報を真剣に見つめていた。
 わかった、ありがとう。
 礼を述べて、操作を終わらせる。
「どうした?」
(この近くに村があるんだけど。
 龍騎士達の心配はないから、避難勧告だけしてほしいって。
 アーマードにはHCで伝えておいたぜ!)
「了解!
 私達もすぐに向かいましょう!」
 問題の村へ急行する……。
 
 ……こうして、互いに連携をとりつつ、彼等は幾つかの村の避難活動に尽力した。
 彼らの活躍により、村人達は無事にシボラの避難所へと移動する。
 
 メイベル・ポーター(めいべる・ぽーたー)セシリア・ライト(せしりあ・らいと)フィリッパ・アヴェーヌ(ふぃりっぱ・あべーぬ)シャーロット・スターリング(しゃーろっと・すたーりんぐ)の4名は、天王寺 沙耶(てんのうじ・さや)アルマ・オルソン(あるま・おるそん)クローディア・アッシュワース(くろーでぃあ・あっしゅわーす)シャーリー・アーミテージ(しゃーりー・あーみてーじ)と共に、エリュシオンとの国境にそって避難勧告に当たっていた。
 そのせいか、龍型イコンの部隊と遭遇してしまった。
「でも、あのイコン……なぁーんか変な動きよね?」
 沙耶は小首を傾げる。
 特技に【イコン操縦技術】を持つ彼女は、その知識から龍型イコンの操縦士が未熟なことに勘づいた訳だ。
「これを利用して、村民達を逃がせられないかな?」
「私達も同じ意見ですぅ〜!」
 メイベル達は頷く。
 アルマ達も、彼女達の意見に賛成した。
「早くしないと! あの女の子の予言が当たっちゃう前にね!」
「大丈夫、沙耶。8人もいるですぅ〜!」
 メイベルは沙耶を元気づける。
「相手は、新米パイロットのイコン部隊。
 集団で対抗すれば、どうにかなると思うですぅ」
「さて、その策だけど。何かあるかな?」
「お任せするですよぉ。それに百合園の私より、天学の沙耶の方が妥当でしょ?」
 とはいえ、沙耶も軍事に明るい訳ではない。
 基本は誰かを囮にして、イコンを引きつけて、その間に勧告を出しましょう! ということになった。
 だがいざ蓋を開けると。
 8名は2手に分かれてバラバラに行動し。
 アルマはクローディアと口喧嘩をはじめて。
 シャーリーが仲裁に入ってとめ。
 泣きつかれたアルマが、たまたま近くにいたセシリアの厄介になり。
 子供の扱いに困り果てたセシリアは、シャーロットに押し付け。
 フィリッパは呆れて結局1人でマイペースに勧告に行く、という始末。
 
 さて。その間、龍型イコンは? というと。
 
 倒れてきそうになったボロ家から住民を守ったり、「避難勧告」を発令していた。
 アルマを気にかけていたセシリアが、イコンにおやっ? と目を向けた。
「村人達を襲うために、ここへ来たんじゃなかったの?」
『我々が、なぜ、そのようなことをしなければならない?』
 イコンの拡声器を使って、パイロットは怒ったような口調で告げる。
 8名は顔を見合わせた。
『ところで、吸血鬼の少女を見なかったか?』
「いーえ」
 彼女達は首を振る。
『救助活動に、人手が必要だろ?
 いま別部隊が来るから、そいつらに手伝ってもらえ!』
 言いたいことだけ言って、龍型イコン達は去って行った。
 入れ替わるようにして、ワイバーンに乗った龍騎士達が現れる。
「やれ、これほどの協力者がいてくれたとは!
 何と心強いことだ!」
 龍騎士達は少女達の勇気を称え、メイベル達と力を合わせて、避難活動を行う。
 
 彼女達の働きのお陰で、この村の人々もエリュシオンに近い安全地帯へと移動することが出来た。
 8名は村人と龍騎士達の双方から、深く感謝された。

 残った村々では、赤嶺 霜月(あかみね・そうげつ)アイアン・ナイフィード(あいあん・ないふぃーど)がレッサーワイバーンに乗って、やはり避難勧告をしていた。
 だが、この一帯にも龍型イコンはやってくる。
「イコンを遠ざけることが、先決だ!」
 霜月の判断に、アイアンがつき合う形となった。
 レッサーワイバーンを巧みに操って、2人はイコン部隊のかく乱を試みる。
 眼下には、まだ避難せず、野良仕事に精を出す村人の姿が。
「ったく!
 面倒くせぇな!
 避難しろっ! って言うんだよ! ニンゲンども!!」
 アイアンは爆炎波で、彼等の家を焼き払おうとした。
 そりゃ!
 だがその炎は、敵のイコンによって止められた。
『バカ野郎ぅ!
 テメー、村人を殺す気かっ!』
 目が点になったのは霜月達の方。
「え……?
 殺しに来たのは、あなた方の方では?」
『俺達はある少女を捜しに来ただけだ。
 吸血鬼の娘だよ!
 見かけなかったか?』
 霜月達は首を振る。
『ここじゃないのか……すまない。
 ご協力には感謝する』
 だが、とイコンのパイロットは冷たい声を放った。
『村人達に危害を加えようものなら、この俺がただじゃおかないぜ!』

 龍型イコン達は去って行った。
 まもなくジークフリート・ベルンハルト(じーくふりーと・べるんはると)らによる本格的な救助活動が始まる。

「じゃが、わしらはここ以外のどの国にも行きたくないのじゃが」
 村民達は申し訳なさそうにジークフリートらを眺める。
 その言葉に、ある腹黒い決心を秘めていたジークフリートは。
「それでは、皆様のご意見を尊重しましてだな……」
 表面は沈痛そうな表情で、考えを述べた。
「近場の安全な場所で、そこで自分達の村を新たに興す、と言うのはどうだ?」
「おお! それは良い御意見じゃ! お若いの」
 ジークフリートは胸を張りつつ、いやそんなでも、と謙遜する。
(しめしめ。
 これで別名「魔王村」とでも呼ばれるようになるだろう。
 大成功だな!)
 かくして村の建設の際には助力することを約束し、ジークフリートの野望は達成された。
 新たな新天地は村人に決めさせ、ジークフリート達は移動を手伝うことにする。
「さあーて、私の出番かな?」
 シオン・ブランシュ(しおん・ぶらんしゅ)は赤い瞳をキラキラと輝かせた。
「村人はどうでもいいけど、魔王様のお役には立たねば、な〜」
「なら、いい素材があるぜ!」
 シオンに耳打ちしたのは朱点 童子(しゅてん・どうじ)
 彼自身は「先の先」で、錯乱している者達を次々と腹を殴り気絶させていた。
「村と運命を共にする! とか言ってわめいている奴だぜ!
 殴ったくらいじゃ、正気に戻らねぇだろ?」
「なるほど、なるほど」とシオンは頷いた。
「魔王様はお優しい方。
 あのようなものでも救わんとされるだろうな!
 う〜〜〜〜〜〜ん、でもチョット面倒だなぁ……」
 村人に近づいて、吸精幻夜。
 宥めて、言うことを聞かせた。
「どう? 他の村へ移動したくなったでしょ?
 サッサと私についてくるんだよ!」
 3人のパートナー達の中で、最も常識人だったのはノストラダムス・大預言書(のすとらだむす・だいよげんしょ)だった。
 自分達の馬と、村のにある幌で馬車を作ろう! としたのだ。
「でも、幌と車両部分が見当たらないな」
 えい! と予言をしてみるも、どこにもない。
「貧し過ぎるのだな? ふむ、これは困った……」
 音がして、上空を見た。
 龍騎士団の一部隊が村に降りてくる。
「ひょええええええええええ、お助けええええええええっ!」
 ジークフリートの背に隠れようとする。
 龍騎士の隊長らしき男が、待て、と言った。
「我ら、団長の命を受け、村々の救助活動に当たっておる者。
 貴公らは、見れば感心にも村人達を手伝っているようだが。
 何か困っておるようなことはないか?」
 
 ジークフリートらは彼等の力を借りて、板切れや落ちていた布切れから、簡易的な車両と幌を作成した。
 2頭の馬につないで、幌馬車の完成!
 怪我人、ご老人、子供、それ以外の者と、治療薬を乗せて出発していく……。
 
「ここが最後の村だ。
 君等のお陰で避難活動が早まった。
 感謝する!」
 一礼して、龍騎士達は去って行った。
 
 かくして、フマナの人々は全員安全に退去することが出来た。
 
 ■
 
 フマナ・荒れた平野にて。
 点在する村々から避難して行く村民達の群れを眺めつつ、吸血鬼の少女はホッとして胸を押さえた。
「よかった。
 私1人の力では無理だったけど。
 親切な方々がたくさんいらっしゃって……」
 
 だが、その時カラス達が一斉に飛び立った。
 大きな影が、少女の上をかすめて目の前に降り立つ。
「見つけたぞ!
 さぁ、我々と共に来るのだ!」
「嫌です!
 ヘクトル隊長、シャヒーナ様!」
 少女は回れ右をして、駆け出す。
 
 吸血鬼の少女の、本格的な脱出劇が始まった。