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リアクション
「ま、魔王軍……?」
「皆さーん。第四師団の騎凛セイカです。この旅はよろしくお願いします」
騎凛に答えて、黒いマントに貴族風の衣装に身を包んだ男とそれに続く一団がやって来る。
「はじめまして!」
長身のこの男が、
「ジークフリート・ベルンハルト(じーくふりーと・べるんはると)だ。こちらこそ、どうぞ宜しく」
「魔王様、魔王様ぁ〜〜〜〜〜〜」
三人のパートナーたちが取り巻く。彼が魔王のようだ。青白いオーラを纏って見える、どこか不敵な笑み。
しかし彼のグループが、イルミンスールからは唯一率先して協力を申し出てくれていた。
「魔王様、魔王様、魔王様ぁ〜〜〜〜〜〜!」
シオン・ブランシュ(しおん・ぶらんしゅ)。一見は小さな女の子だが、白い忍び風のいでたちに白い髪・赤い目が白蛇を思わせる。
黒髪の可愛いながらも謎めいた女性、大きな本を抱えている。彼女自身がその化身であるノストラダムス・大預言書(のすとらだむす・だいよげんしょ)。
黒い仮面と鎧に身を覆った魔鎧クリームヒルト・ブルグント(くりーむひると・ぶるぐんと)らが、控えている。
そして、ミレイユ・グリシャム(みれいゆ・ぐりしゃむ)の姿があった。
「騎凛セイカ先生。よろしく〜♪」
ヒラニプラ南部では、【黄金の鷲】を助ける形で復興支援に訪れている。その折には、騎凛不在の本営陣相手に自分達の立場から懸命に発言を行った。その時にも同じく姿が見られた吸血鬼であるシェイド・クレイン(しぇいど・くれいん)も一緒だ。
今回は、魔王軍であるパートナーのルイーゼ・ホッパー(るいーぜ・ほっぱー)から、「遠出する魔王様のことが心配だから一緒に来てぇ〜」と言いくるめられた形である。
魔王軍、教導団の一行挨拶を交わす。
「しかし、何故ヴァイシャリーで?」
と護衛の久多。
「それに、魔王軍と名乗る君等が、何故私たち教導団に」
恵琳も問う。
魔王は一呼吸おいてその答えの代わり、
「クリームヒルト」
「……ジーク」
魔鎧に呼びかけると、彼女はリストを手渡した。
「こちらに、イルミンスールの過激派と称される者らの情報をまとめてある。主に、校内のコンピュータによるものだ。
イルミン通過の際のご参考に」
「ありがとう。
これでイルミン関係はばっちりですね」
騎凛は魔王からリストを受け取った。
彼、ジークフリートは、教導団の皆に向けて言った。
「俺は正しいと信じたことをやろうというまでだ。そのために」
……コンロンで何が起きているか、見極めねばなるまい。思いを内に秘め微笑をたたえてみせた。
恵琳らも頷く。「そう、そこまで用意してくれていたのね」信用できる協力者たち、のようね?……
「それから、何故、ヴァイシャリーということについてだが……」
川をまた、遊覧船が通ってくる。
わぁぁ♪ 女の子らは目を輝かせた。
「観光……か。なるほど」
「ミレイユさん。私たちもあれに乗りましょうか」「本当♪ 騎凛先生」「魔王様、魔王様ぁ、私たちも〜!」
プリモやルゥや三厳やロドリーゴたちも再びはしゃぎだす。
久多は困ったものだと思いつつも、騎凛先生とこの風光明媚な街でデートできるチャンスかも? と。
いや、色々と邪魔な要素もあるが……
久多は騎凛の周りではしゃぐプリモやロドリーゴやロドリーゴを止めている博士を見た。
「?」「どうされましたかな。私の顔に何か……?」
「ワタシのことも見たよ。もしかして、ワタシに興味が移ったんじゃ……」
「な、何と。久多殿。それは問題ですな」
「……」
「では、皆さん。私が琳さんと交渉に行っている間、ヴァイシャリーの街を楽しんでてください。
護衛には、ユウさん……」
ベルを二回鳴らすと、すぐさまユウが参上した。ど、どこに……
「このユウ・ルクセンベール。常に、メイドナイトですから」
「久多さんは学内には入れないから、恵琳さんご一緒に行きましょうか?」
「はい」
「久多さんは皆さんを守っていてくださいね」
「……はい。あ、ああ……」
「魔王である俺もついている。ご安心を」