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リアクション
更に、ここは……艦の調理室?
ぼさぼさ頭で一見少し頼りなげな印象もあるけど、軍人らしく鍛えられた長身の男がいる。野菜の皮むきを、している。
「……」
「あらあら、この空の旅でこんな若い子と一緒に仕事できるなんて、張り合いがでるねぇ!」
調理場のおばちゃんらに人気になっているようだ。
「り、りゅーき……」
白猫の着ぐるみの子も可愛がられて仕方がない。
「……。
色々ありそうだが……ま、ゆるっとやっていきますかねぇ」
実は、艦長室のクレア、クレーメックらの他に、今回従軍している士官がいる筈だという話だったのだが……
彼が、曖浜 瑠樹(あいはま・りゅうき)少尉である。
ヒラニプラ北部の戦いを主任務としていたが、その任務が終わって、この出兵に参加。彼自身は護衛として志願したのだが、道中それ以外にも、「オレたちに手伝える事があれば、手伝いたいねぇ」というわけで……
掃除でもと思ったら新兵に少尉は掃除なんてしなくていいですから〜とほうきとちりとりを取り上げられてしまった。「……」
それで、
「何か手伝う事とかあったりしますかねぇ?」
調理室を覗いた次第。おばちゃんたちは誰が少尉だ中尉だのよく知らないので、部屋を間違った新星や獅子の面々でも平気で追っ払っていた。
「料理できる男かい。いいねぇ、きっと、ふふ……」
「……」
「りゅ、りゅーき。ちょっと、お外いきましょう。たまねぎ目にはいっちゃって……」
マティエ・エニュール(まてぃえ・えにゅーる)の涙がとまらなかった。
「……いいよ。じゃあ、おばちゃんたち、ちょっと失礼するよ」
「ああ! また来てよ!」
瑠樹がマティエの涙を拭いながら、調理室の裏へ来ると、武装飛空艇の砲台が並んでいるところに出た。
「そうだよな。今はのんびりした旅だけど俺たちはまた、戦いに行くんだよなぁ」
「りゅーきー? うっうう、ごめん何も見えなくて……」
「いいんだ。今はまだ……。ん? あれは」
まだ、今は誰も配置に着いていない砲台に、見ると一人、誰かいる。
「これが教導団の新しい飛空艇でありますかっ!? 船にも変形できるなんて何かかっこいいでありますっ!」
女の子か。何だか、興奮しているっていうか、エキサイトしているっていうか……だねぇ。ん?
「今回も遠い遠足なりそうでパンダ……きっちりおやつに笹をもっていくのでパンダよ? 大砲を磨き上げながら有事への備えを万全にしておくのでパンダ!」
もう一人、誰かいる。パンダだ。
「なに? え、パンダ? りゅーき。あ、見えた。ほんとだ」
配属先として飛空艇の砲撃手を激烈に希望して、もう配置に着いている孔 牙澪(こう・やりん)とほわん ぽわん(ほわん・ぽわん)なのであった。
「今までに培った砲撃手としての腕前を見せるのでありますーっ!」
「孔中尉、吶喊するであります!でパンダーっ!」
「それ、ボクの台詞であります……」
「でパンダ……」
な、何。孔中尉? 中尉が率先して、一砲撃手に。どういうことだろう。料理をする少尉の瑠樹は思った。
「あ……男の方。
先輩、であります?」
「いや、あんたのが先輩……であります、かな。孔中尉?さん。
うん……と、どうも軍っぽいのには慣れないかなぁ。すまない、すみません。……」
「い、いえいえ。ボクは中尉というかその、孔中尉なのでありまして、……ご、ごめんなさいであります。……」
「……
この艦に配属になったことについてとか、好きなこととか……ぜひ聞いてみたいねぇ」
ともあれ、せっかくなので話しかけてみる瑠樹。
「もちろん、砲撃でありますっ!(配属になったことについて。)
あ、えっと、好きなことまでは砲撃じゃないであります。(これでも少女趣味で……というのは恥ずかしいでありますから……)リボン集めぼそっ」
「へぇ。色んなリボンか。それは綺麗だねぇ」
「また、ゆるキャラにも目がなく、ほわんぽわんのグッズも大量に持っている(侭)。であります」
孔中尉は、言いながら、懐から大量のほわんぽわんのグッズとかほわんぽわんのリボンを取り出した。
「趣味とか、楽しみにしてる事ってありますか?」
マティエは、ほわんぽわんに尋ねてみる。
「子どもやお年寄りが大好きでパンダ」
「あ。いいですね」
「内緒だけど、お祭りでは射的荒らしの異名を持つでパンダ」
「あ。……」
「マティエさんも、グッズになるととっても可愛いでありますね、きっと。ふふふふ」
空の旅もこうして初めは、穏やかに過ぎていった。
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