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ゴチメイ隊が行く4 ひょっこり・ぷっかり

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ゴチメイ隊が行く4 ひょっこり・ぷっかり

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「あい分かった。つまりオーデションはなくて、ドラマコーナーは投稿のみということなのだな」
 悠久ノカナタの言葉に、コクコクと大谷文美がうなずく。
「それにしても、せっかくシャレード・ムーンに会えると思ったのに残念だ。バイトなどよこさずに、本人が来てくれれば嬉しかったものを……。そういえば、おぬしは、ペットレースのときとか、メイドコンテストのときも司会のバイトをしておったな。いろいろと大変なのだな」
「ええ、まあ」
 またその話かと、大谷文美はポリポリとほっぺを掻いた。いったい、世間からどういうふうに見られているのだろう。
「いろいろなバイトはしましたから。臨海学校のガイドとか、ラジオ・シャンバラ近くの貸倉庫の案内とか、読書会の司会もやりましたよ」
「ああ、そうであったな。ところで、あのときのロボットメイドを持ち込んだ者たちとは、どういう関係だったのだ?」
 さりげなく、されど抜け目なく、悠久ノカナタが問いただした。
「お仕事は、派遣会社から指示されたものなので、特別な関係はないんですけど……。あんなことを起こす人たちだって知ってたら、司会引き受けるんじゃなかったですぅ」
 素直に、無関係であると大谷文美が答えた。
「まあ、巻き込まれることは、ここパラミタではよくあることだからな」
 悠久ノカナタが苦笑する。
「そういえば、あの人たちの声、どこかで聞いたことがあるような……。そうそう……」
 変装していたジェイドたちの顔は記憶にはなかったが、その声に聞き覚えのあった大谷文美が、貸倉庫バイトのときの客のことを悠久ノカナタに話して聞かせた。
「それはまた面白い……」
 悠久ノカナタが、すっと目を細める。
「じゃあ、私はそろそろ戻りますので。また投稿お願いしますですぅ」
 聞かれるままに倉庫の場所を悠久ノカナタに教えると、大谷文美は急ぎ足でラジオ・シャンバラに戻っていった。
 
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「この部品ですか?」
 ミルディア・ディスティン(みるでぃあ・でぃすてぃん)に渡されたメイドロボの部品を見て、ジャンク屋の主人がルーペを取り出した。いわゆるパーツ屋と呼ばれる店で、機械関係の部品を扱う店だ。
「面白いですね、似たような者を買いに来た人が重なるなんて」
 そう主人が言うと、店内にいた緋桜 ケイ(ひおう・けい)が、おやという顔でミルディア・ディスティンを見て軽く挨拶をした。
「同じ所に目をつけたみたいだな」
「そうみたいだよね」
 緋桜ケイとミルディア・ディスティンが言葉を交わす。
「型式からすると、汎用のロボット部品ですねえ。地球の秋葉でなら、ごく普通に手に入りますよ。ただ、パラミタじゃ、あまり需要もないし、取り寄せには時間がかかりますねえ」
「取り寄せは可能なんだもん?」
 ミルディア・ディスティンが主人に聞き返す。
「もちろん取り次ぎがいますからね。ただ、コストと時間はかかりますが」
「じゃあ、在庫を聞いてくれないかなあ。ほしいんだけど、誰かが買い占めちゃったみたいで、なぜか買えないんだよ」
 さりげなく、緋桜ケイが主人に振った。
「ああ、春先には大量に入荷したらしいですね。なんでも、ホビー用のロボットショップを開くとかっていう話だったみたいですが、そんな店できてませんから、仕入れたはいいが資金繰りに困って倒産しちゃったんじゃないですかあ」
 素人が変な趣味の商品に手を出すからだと、ちょっと迷惑そうに主人が言った。
「でも、それじゃ在庫かかえて大変なんだもん」
「そうだな。返品でもしたのかな」
「まさかあ。送り返す方がコストがかかりますからね。多分、貸倉庫街にでも突っ込んでるんでしょうよ。自社倉庫を持たないなら、レンタルした方が安上がりですからね。もっとも、ちゃんと家賃を払えているかは疑問ですが。それで、どうします、お取り寄せしますか?」
 主人に聞かれて、二人はまた今度にすると丁寧に断った。
 メイドロボのルートを調べるのであれば、次はその倉庫だ。
 いきがかり上、ミルディア・ディスティンと緋桜ケイが、同じ倉庫街を目指して通りを進んで行く。日もだいぶ暮れてきた。街灯がそろそろつき始める。
「わあ、なんか綺麗だよね」
 目的の倉庫街の中に立つ鉄塔からのびるレーザービームを見て、ミルディア・ディスティンがちょっと歓声をあげた。
 宣伝のためかどうかは知らないが、その鉄塔から四方八方へ色とりどりのレーザー光線が、イルミネーションとしてランダムに照射されていた。空京の夜空に輝く幾筋もの光は、少し幻想的で最近の空京の名物にもなっていた。
「あの下は、倉庫街だったのか」
 今さらながらに、そんな物があったのだと、緋桜ケイは壮大なシャンバラ宮殿を背後にして燦めく光を見あげて言った。
 
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「暗くなってきたにゃ……」
 同じ光を見あげて、シス・ブラッドフィールドはさっきから鳴き続けているお腹の虫にがっくりとうなだれた。
 
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「なによ、空賊なんでどっこにもいないじゃないの」
「そうよね。あてが外れちゃったよね」
 空京の上空をパトロールするように小型飛空艇とワイバーンで飛び回っていたリカイン・フェルマータ(りかいん・ふぇるまーた)シルフィスティ・ロスヴァイセ(しるふぃすてぃ・ろすう゛ぁいせ)は、ものすごくつまらなそうに顔を見合わせて言った。
「おかしいですねえ。蒼空学園が興味をもってわざわざデータを集めるほど、雲海がらみ、しいては空賊がらみで、何かがあると思ったのですが」
 あてが外れたかと、空京稲荷 狐樹廊(くうきょういなり・こじゅろう)が小首をかしげる。
「確かに、明倫館までしゃしゃり出て飛空艇の事故とか調べてたみたいだけど、本当に空賊が絡んでいるんでしょうねえ」
 ちょっと懐疑的に、リカイン・フェルマータが空京稲荷狐樹廊を問いただした。
「そうだよね。せっかく暴れられると思ったのに。だいたい、蒼空学園って、Xサーバーを持ってるんだから、情報が集まったって普通なんじゃない? だって、パラミタ最大のデータベースなんでしょ」
 シルフィスティ・ロスヴァイセも突っ込んだ。
 確かに、蒼空学園にはあらゆる情報が集まってあたりまえと言える。だからこそ、空京大学としても、自校に同等のサーバーを一から構築しようとしないで、Xサーバーその物を手に入れようと動いているわけだ。それだけ、データの蓄積という物は重要でもある。
「とはいえ、空京を守護する神社に属する身としては、非常に気持ちが悪いのですが。何か嫌な予感がします」
「あんたの勘なんて、あてになったためしがないじゃない」
 たいして考えもせずに、リカイン・フェルマータが決めつけた。
 とりあえず、日も暮れてきたし、どうしようかということになる。
「まあ、夜の遊覧飛行も楽しいじゃありませんか。ほら、イルミネーションも綺麗ですよ」
 倉庫街の鉄塔から夜空にのびる光をさして、空京稲荷狐樹廊が言った。
 
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「お帰りなさい。首尾はどうでしたか?」
 件の倉庫の中でくつろいでいたジェイドが、戻ってきたアクアマリンを出迎えてねぎらいの言葉をかけた。暗い倉庫の中、のんびりとお茶を楽しむ彼の所だけスポットライトで明るくなっている。
「上々です。トロイの木馬も仕掛けられましたので、さっそく信号を送ってタイマーセットします。それから、ネットワーク関係のマップ、それから携帯の中継アンテナの位置を記したマップデータも入手できました。さっそく、メカ小ババ様たちにインプットします」
「お願いしますよ。先ほどオプシディアンから連絡も入りましたから。例の物に火を入れたそうです」
「分かりました、急ぎます」
 そうジェイドに答えると、アクアマリンはそばにあるコンソールにデータカードを差し込んだ。続いて起動コマンドを送る。
 ブンという電源が入るときの独特の音が倉庫内の大気を大きく震わせた。
「ゴパ……」
 暗闇の中、無数の赤い輝きが次々に点灯して倉庫一杯に広がっていった。