リアクション
* * * 「見ていたのだろう? 彼も、君達の仲間か?」 ブルタが去った後、窓の外を眺めていたアクリトは、背後の気配に尋ねた。 「失礼。扉が開いておりましたので」 「しっかりと閉まっていたはずだが」 そしてアクリトはその人物――サングラスをかけた黒いスーツ姿に向き直る。度々彼に接触を図ってきている男だ。 「君達の元へ行くつもりはない」 「先日はまだ迷ってお出ででしたが……残念です。貴方は『こちら側』の人間であると、主達が仰っていましたが」 「前までは、そうかもしれない。だが今は違う。私はここで、今の私にやれることをやるだけだ」 「『彼が御神楽 環菜を暗殺した段階で、接触を図るべきだった』と主達は仰ることでしょう。いえ、実行したのはパートナーでしたか。どちらにせよ、我々は遅すぎたということでしょう」 淡々と喋り続ける相手の真意は読めない。 「最後に一つ聞く。君の主達というのは、『十人評議会』と呼ばれるものか?」 「その質問への答えを、私は持ち合わせておりません。主達の真の姿は、私の知るところではございません」 貴方の力を欲する勢力など、世界中にいくらでもいるのですよ。と彼女は続けた。 「それでは、『別件』もございますので失礼致します」 アクリトの部屋を去っていく。 男の姿は誰にも気付かれていなかった。主から渡された高度な隠行の術式が刻まれたカードのおかげで。 空京大学を離れ、一旦『変装』を解く。 そこに現れたのは、仕事の出来るキャリアウーマンを彷彿とさせる女性の姿だった。 『猊下、やはりと言いますか、今の彼は完全にシャンバラに懐柔されております。これ以上の説得は困難かと』 『止むを得まい。無理に席を埋めることもないだろう。君の主に、しばらく代理で第二席にいてもらうことにしよう。 次は予定通り、私に手紙を送ってきた彼に接触してくれ』 |
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