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聖戦のオラトリオ ~転生~ 最終回 ―Paradise Lost―

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聖戦のオラトリオ ~転生~ 最終回 ―Paradise Lost―
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「ヴェロニカ!」
 トゥーレに向かっているとき、和泉 直哉(いずみ・なおや)はヴェロニカの姿を見つけた。
「直哉君、結奈さん」
 彼女が、彼と和泉 結奈(いずみ・ゆいな)を交互に見る。
「絶対に、無事に生きて帰ってくるんだぞ」
「うん、もちろん。だけど、みんなも――誰一人欠けることなく、帰ってこようね」
 微笑むヴェロニカ。
 無理をしているようには見えない。つい先日、兄の乗った機体が消し飛ぶのを目の前で見たばかりだというのに……。
「ああ、当然だ!」
 強いな。
 直哉は純粋に、そう感じた。
 だからこそ、そんな彼女をしっかり支えてやりたい。この学院で、共に生きるみんなと一緒に。
「それじゃあヴェロニカさん、また後で」
 結奈が口を開く。
 静かに頷くヴェロニカを見届け、その場は一旦別れた。

* * *


「なるほどね。罰の調律者ローゼンクロイツに、プラントにある量子コンピューターS.E.R.A.
 PASDのデータベースにあるローゼンクロイツの情報は手に入れたわ。その人がループに深く関わっているのは疑いようがないわね。それにプラントにいるナイチンゲールさんにプロテクトを掛けた人ってことは、ニュクスちゃんの秘密も知ってるかもしれないわ」
 館下 鈴蘭(たてした・すずらん)は、海京分所から戻ったミルト・グリューブルムからの話を聞いていた。
「人形の女の子と白雪姫の話だと、ニュクスならループを脱するための鍵になりそうなものを知ってるだろうって。それはきっと、何度もループしたニュクスがこの世界で初めて見るものだと思う」
 それは、本人に聞いてみるしかないだろう。
「あら、こんなところでどうしたの? そろそろ出撃準備に入る時間よ」
 トゥーレの前にいた彼女達に、ニュクス・ナイチンゲール(にゅくす・ないちんげーる)が声を掛けてきた。
「ニュクスちゃん、事後報告になってしまうけど……この前のこと、彼に話したわ」
 鈴蘭はループのことをミルトに話し、彼からホワイトスノー博士や罪の調律者にも伝わったことを告げる。
「そんな気にしなくていいわよ。口止めしたわけでもないんだから」
「ごめんなさい。だけど、私だけじゃきっとループを回避するための力にはなれない。この学院の、共に戦ってきたみんなの力が、未来への意志があれば……」
 きっと変えられる。
「……ありがとう」
 ニュクスがそう言って、わずかに目を潤ませた。
 これまでもきっと話したことはあるはずだ。しかし真に受けた人はいなかった。だから、いつしか彼女はその事実を話すのを止めてしまったのだろう。
 それが、今度ばかりは違う。
「ねえ、ニュクスちゃん。これまでの世界になくて、この世界で初めて見たものって何かある?」
 前に、『わたしが知る極めて稀なイレギュラーが次々と起こっている』と彼女は告げた。ならば、そのイレギュラーは何かを引き起こすためにあったのではないか。
「初めて見たもの……完成されたジェファルコンよ。これまでの世界でも、同じように第二世代機は開発されていた。だけど、最終決戦への投入が間に合ったことはなかった」
 それに、と続ける。
「『トリニティ・システム』。そんなものは、今まで存在しなかったわ。ジェファルコンの開発が進まなかったのは、当初の設計では十分な出力が得られず、内部機構の見直しが必要になったからよ。ポータラカの技術でようやく出力の底上げが出来たってときに、最後の戦いになっていたわ」
「トリニティ・システムが……分かったわ」
 ジェファルコンに搭載されたそれが、おそらく鍵だ。ということは、先日の戦いでは見られなかった何かが、まだジェファルコンにはある。
「それじゃ、あまりヴェロニカを一人にさせるわけにはいかないから、わたしは行くわね」
 ニュクスを見送り、鈴蘭はトゥーレに乗り込む。

「さ、私達も行きますわよ」
 ペルラ・クローネはミルトを見遣った。
「うん――ループを抜けた先の未来へ。ヴェロニカやニュクスと一緒にね。もちろん……」
「『ノヴァや白雪姫もイワンさんもドクトルも、分所の研究員の人もサクラや聡、翔やアリサ、学校の友達、ペルラも、世界のみんなみんな一緒にだよ!』ですわよね? ミルトの言いそうな事は精神感応を使わなくても分かりますわ」
 微笑み、小さなパートナーの肩を叩く。
「見つけましょう、私達に出来る最良の一手が打てるその瞬間を。『ノヴァを取り戻す機会を窺う』ですわね」
 ノヴァを、倒すべき敵だとは思わない。
 ――誰一人欠けることなくみんなで。
 そう決めているのだから。