リアクション
卍卍卍 「くそ〜重て〜!!」 アキラ・セイルーン(あきら・せいるーん)は鬼鎧絶対無敵要塞『かぐや』を押していた。 しかし、びくとも動かない。 「うっかり誤作動して設置しちまったあああ! どーすっかな……」 この巨大タケノコ型の要塞の最大の利点は、設置時間の短さにあるという。 詳細は不明だが、設置とほぼ同時に瞬間的に『のびる』らしい。 この最大の利点が、今回は裏目に出てしまった。 「仕方ナイヨ。アキラゆえにアキラメル……ナンチャッテ」 「アリス……お前」 アキラの肩の上ではしゃぐアリス・ドロワーズ(ありす・どろわーず)を摘み上げた。 これでも彼女なりにアキラを慰めているのだ。 アキラはぎゅっとアリスを抱きしめる。 「ここで瑞穂魁正(みずほ・かいせい)を止めないと、歴史がおかしくなったままなんだよ。俺の計算が正しければ、この巨大タケノコ要塞でとうせんぼできたはずのに……なのに〜!!」 「アキラの計算が正確だったことが今まであったのか?」 ルシェイメア・フローズン(るしぇいめあ・ふろーずん)がトドメのツッコミを入れる。 アキラは本当に落ち込んできた。 今にも泣きそうである。 「アレレ、アキラ足ヌレテルヨ」 「馬鹿いえ。男がめそめそ泣いてなんか……って、なんだコレ?」 ルシェイメアもスカートをたくし上げて覗き込む。 彼女たちの足元に水が流れ込んでいた。 水は絶対無敵要塞『かぐや』にせき止められ、どんどんたまっていく。 「どこから流れ込んでいる?」 アキラが上流を見上げると、追い立てられるような軍勢の姿があった。 瑞穂国の軍である。 それを九十九 刃夜(つくも・じんや)と九十九 天地(つくも・あまつち)が追いつめているのだ。 しかし、瑞穂の軍馬や兵はぬかるみに足を取られて進めない。 「それでは思うように動けないだろう。行進をやめろ」と、刃夜。 天地が稲妻を発生させながら、再度警告した。 「瑞穂の国へ引き返しなさい。でなければ、我の力をまともに受けることになりますよ」 アキラが目の前の光景に呆然としていると、土方 伊織(ひじかた・いおり)たちに声をかけられた。 「この上の水堤防をベディヴィエールさんとサティナさんが壊してくれたんです。そこへ丁度、この要塞がいい場所に居てくれたので、水溜りを作ることができたんですよ。瑞穂軍はぬかるみで当分動けませんよ。ありがとう、お礼を言いますね!」 「え、ああ……そう。そうなんだ」 アキラにはよく分からなかったが、偶然にも絶対無敵要塞『かぐや』が役に立ったらしい。 いや、そもそもこれは偶然ではなく、必然なのではないか。 必然は偶然のためにあるのではないか? 時空を旅していると何の時系列が正しくて、どれがそうでないのか分からなくなってくる。、 それはともかく、彼の目的も果たせそうだ。 「瑞穂魁正殿、ここからは先へは進めさせません。どうしてもというなら、私がお相手いたします」 九十九 昴(つくも・すばる)は刀を馬上の魁正に向けて突きつけた。 「いったい何を見たのです。秀古に、何を?」 魁正は答えなかった。 すでに天下取りを秀古から大きく水をあけられたのを悟ったのである。 「それがお前たちの意思なのか。これから天下がどう動くか……知っているというのか」 魁正は自嘲しながら言った。 「お前たちは天下を動かした気になっているのだろう。だが、それもわずかの間だ」 魁正は全軍に向けて撤退命令を出した。 羽紫軍に追いつけないのならば、無理に進める必要はない。 これから天下は大きく乱れることだろう。 国へ戻り、時局を見る必要があった。 「なぜこうも思い通りにならん……『鬼の仮面』も『人』も俺の前に立ちはだかるのだ……」 |
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