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海に潜むは亡国の艦 ~大界征くは幻の艦~(第1回/全3回)

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海に潜むは亡国の艦 ~大界征くは幻の艦~(第1回/全3回)
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リアクション

 
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「ちょっと、フリングホルニからもらった地図、全然違うぜ。どうなってるんだ」
 機関部の破壊を目指して進んでいたエヴァ・ヴォルテールだったが、艦内で道に迷ってしまい、マップを再確認していた。どうやら、スキッドブラッドは大幅な改造がくわえられていたらしい。
 そこへ、敵の自立兵器が迫ってきた。
「こっちへ!」
 真空波で一端押しやると、エリス・クロフォードを連れて通路の先へと逃げる。そのとき、敵の後ろから強化スーツに身を固めたエリザベータ・ブリュメールたちが突っ込んできた。
「ふう。助かったよね」
 エリス・クロフォードが一息つく。
「ここはいったい、どこなのです。敵を捕まえてこの艦を制圧したいのですが、さっきから人間がいません」
「さあ、こっちも迷っちゃって。ブリッジには、仲間がむかったから、こっちは機関部を制圧しようと思っているんだけど」
 エリザベータ・ブリュメールに聞かれて、エヴァ・ヴォルテールが答えた。
「まあ、人間以外はとりあえず壊しちまえば、楽ちんだけどな」
 悪びれずにオルフィナ・ランディが言う。
「こちらは艦橋からまっすぐに降りて来たんで、機関部だったらこのまま一番下に行けばいいんじゃないの?」
 セフィー・グローリィアが言った。
 スキッドブラッドは、外見から察するには、艦尾にしか推進器はないようだ。理論的には、艦底近くの後ろに行けばいいことになる。
「あるいは、脱出艇とかがあって、乗組員はみんなそっちに行っている可能性もあるわね。急ぎましょう」
 セフィー・グローリィアにうながされて、一同は艦底部へと急いだ。
 だが、艦内図にあるはずの階段やエレベーターが見つからない。確かにそれらしき物が存在した跡は見つかるのだが、すべて封鎖されていた。まるで、その下に別の物を取りつけたかのようだ。
 ときたま出てくる警備兵とも言える自立兵器を撃破しながら、エリス・クロフォードたちはやっと下への階段を見つけた。だが、そこも何やら銀色の隔壁で閉ざされている。そのとき、大きなゆれが船体を襲った。
「誰かがやり過ぎて、誘爆を引き起こしたんじゃないだろうね」
 それは冗談じゃないと、オルフィナ・ランディが言った。
 だが、床に亀裂が走り、階段を埋めていた銀色の隔壁が下に下がっていく。いや、そこにあった何かが離脱していったのだ。階段の先が、ぽっかりと開いた穴に変わる。
「脱出艇? まずい、崩れます!」
 エリザベータ・ブリュメールが叫んだ。
 一同があわてて避難する。だが、船体の崩壊は止まらなかった。
『――煉、聞こえる? 艦がヤバい、みんなを脱出させて!』
 エヴァ・ヴォルテールが、精神感応で桐ヶ谷煉に伝えた。
 
    ★    ★    ★
 
「まずいな、艦がもう持たないらしい」
 桐ヶ谷煉が、鳴神裁(物部九十九)に伝えた。
「みんなに伝えるよ」
 鳴神裁(物部九十九)が、ドール・ゴールドの力を借りて、テクノパシーで艦内放送をコントロールする。
『艦が自壊するよ。みんな逃げてー』
 
    ★    ★    ★
 
 スキッドブラッドの異変は、外からも確認できていた。
 フリングホルニよりも大型の船艇機関部の装甲がひび割れて剥離しだしたのだ。その下から、目にも眩しい銀色の装甲が現れる。やがて、殻を脱ぎ捨てるようにして、そこからまったく別の飛行物体が現れた。
 形は、平たい涙滴型をしている。その表面は、まるで鏡のようであった。そのまったく別の艦が、スキッドブラッドの艦底に機関部としてすっぽり収まっていたのだ。
 その艦が抜け出てしまったことで、スキッドブラッドの船体強度が保てなくなり、自壊が始まった。
 間一髪、鳴神裁(物部九十九)の放送で危機を知った突入部隊がおのおの脱出してくる。
 船腹でいきなり爆発が起きたかと思うと、猫井又吉たちのパワードスーツ輸送車が飛び出してきた。その後ろに、如月和馬を乗せたイカロスが続く。さらに、エヴァ・ヴォルテールとエリス・クロフォードの乗ったセラフィートが飛び出してきた。
 艦橋から鳴神裁(物部九十九)にかかえられた桐ヶ谷煉が、小型飛空艇に乗ったセフィー・グローリィアたちと一緒になる。
「こっちですよー」
 果敢に接近していたアイランド・イーリの甲板で、シャーウッドDに乗ったリネン・エルフトが彼らを手招きした。
「よいしょっと……ぐはあ」
 猫井又吉の運転するパワードスーツ輸送車両が、甲板の上で大きく跳ねた。荷台にいた国頭武尊とシーリル・ハーマンたちが、ゴーレムたちと共に甲板の上に投げ出されて思わず尻餅をつく。
「ビームシールド展開。急いで!」
 次々にアイランド・イーリの甲板に突入部隊が降り立つと、ユーベル・キャリバーンが急いでビームシールドを張った
 直後に、銀色の飛行艇からビームが発射され、スキッドブラッドに命中した。正確に火薬庫を狙ったのか、爆発が起こりスキッドブラッドが吹き飛ぶ。飛んできた破片が、アイランド・イーリのビームシールドの上で弾けた。
 
     ★    ★    ★
 
「何、あの飛行物体は!?」
 宇宙港からそれを見た高天原鈿女が言った。今まで見たどの大型飛空艇とも形が違う。一言で言って、異質だった。
「ああ、かぐやが!」
 謎の飛空艇の攻撃で吹き飛んだスキッドブラッドの巻き添えを食らった絶対無敵要塞『かぐや』を見て、アキラ・セイルーンが叫んだ。消し飛びはしなかったが、ごっそりと絶対無敵要塞『かぐや』の半分ほどが削り取られてなくなっている。
『危ない!』
 飛んでくる破片を見て、星心合体ベアド・ハーティオンがカル・カルカーのハーポ・マルクスのそばに避難してきた人々をかばうように立った。その背部にある星怪球バグベアードの触手部分がみるみるうちに増殖して壁を作る。それが防護壁となって人々を守った。
 コントロールセンターの方も、カタパルトから降りてきた東朱鷺の第八式改・ボゥゲンシャウツンが、シールドを駆使してなんとか飛来物から建物を守りきっていた。
 
    ★    ★    ★
 
「なんだあれは。アニス、情報収集しろ」
 高高度に位置するブラックバードから状況を見守っていた佐野和輝が、アニス・パラスに言った。
「りょーかい。すぐに……。あれ、あれえ、いなくなっちゃったよ。完全にロスト。見つからないよー」
 分析を始めようとしたアニス・パラスが、突然すべてのセンサーから消えた敵艦に、アバターをコックピット内で右往左往させて困惑した。
 突然透明になった敵艦は、目視でも確認できない。どうやら、高度な遮蔽装置を使ったらしかった。