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地に眠るは忘れし艦 ~大界征くは幻の艦(第2回/全3回)

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地に眠るは忘れし艦 ~大界征くは幻の艦(第2回/全3回)

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    ★    ★    ★
 
「あの、ヴィマーナが気になる」
「行くか!」
 悠久ノカナタと緋桜ケイの乗るエンライトメントが、もう一つの母艦らしき円盤型のヴィマーナにむかった。
「確かめさせてもらう!」
 大上段に振り上げた薙刀を艦の表面に突き立てて、突入口を作りだす。それを確認すると、エンライトメントのコックピットハッチが開いた。
「あの二人、何をやっているんだ!? むかうぞ!」
 それを目撃したトマス・ファーニナルが、パワードスーツで大きくジャンプした。
「おいおい、いったいどうなってるんだよ」
「追いましょう」
 テノーリオ・メイベアとミカエラ・ウォーレンシュタットもそれに続く。
 エンライトメントが作りだした亀裂から中に下りると、緋桜ケイと悠久ノカナタが、コントロールルームらしき場所を調べていた。そこにも、イレイザー・スポーンのものと思われる水晶柱に似た突起が、あちこちから突き出ている。
「何をやっているんだ。ここにはなんにもねえぜ」
 早く戻れと、テノーリオ・メイベアが二人を急かした。
「ここを調べたいんだが……」
「ここか。それで気が済むんだったら、僕が調べよう」
 緋桜ケイの言葉を聞いて、トマス・ファーニナルがパワードスーツのハッチを開いて外に降り立った。
「周囲の監視を頼む」
 言われて、テノーリオ・メイベアとミカエラ・ウォーレンシュタットがトマス・ファーニナルたちを挟むようにしてパイルバンカーシールドとギロチンアームを構える。
「ただの床だから、あまり期待はしないでくれ」
 トマス・ファーニナルが、床に手をあててサイコメトリを行った。ただの床の記憶など、上を行く者のものがあれば御の字だ。
 浮かんできたのは、イレイザー・スポーンに侵食されて、床から水晶柱が次々に生えてくる船内を逃げる十二人の剣の花嫁と一人のニルヴァーナ人の男の姿だった。床からは、十二本のシリンダーのような物が飛び出している。それに剣の花嫁たちを避難させながら、ニルヴァーナ人が追ってくる敵の前に立ちはだかった。敵は、イレイザー・スポーンに侵食された小柄な機晶姫のようだ。その機晶姫の槍がニルヴァーナ人の男の身体を貫いたかに見えた。その瞬間、男の身体が細かなナノマシンとなって、剣の花嫁たちが横たわるシリンダーの中に分散して入っていった。すぐさまカバーが閉じ、カプセルが床下に引き込まれていった。
「何が見えたのだ?」
 悠久ノカナタの声で、トマス・ファーニナルが我に返った。
「なんで、サイコメトリでこんなにはっきりヴィジョンが見えたりする……。まさか、まだこの下に……」
 トマス・ファーニナルが、軽く床にギロチンアームで傷をつけてみたときであった。
「敵です!」
 ミカエラ・ウォーレンシュタットが叫んだ。通路の方から、さっきトマス・ファーニナルが見た機晶姫がやってくる。その半身は、結晶化していた。
「やはり、サテライトセルか。いったい、何を見たんだ!」
「話は後だ。脱出するぞ!」
 素早くパワードスーツに戻ると、トマス・ファーニナルたちは緋桜ケイたちをかかえてそこから脱出した。二人をエンライトメントに送り届けると、一緒に急いでヴィマーナの母艦を離れた。
 
    ★    ★    ★
 
「何が起こっている!?」
 奇しくも、デュランドール・ロンバスもエステル・シャンフロウと同じ言葉を口にしていた。
 宇宙港の天井が二つに割れる。
 先に、東のエリアがそうであったように、少し遅れてこちらの天井も開き始めたのだ。
 外の光が、イコン戦が繰り広げられている空間を照らした。
 
    ★    ★    ★
 
「遺跡に変化が、全員注意してください!」
 リカイン・フェルマータが、艦隊全体に注意をうながした。
 土煙をあげて、遺跡のあった大地がすべて開いていく。
 まるでパンドラの箱を開くかのように巨大な扉が開いた。それはそのまま壁のようになって、大地に直立し、奇妙な光を放ち始めた。
 東側に巨大な壁ができ、やや遅れて西側にさらに巨大な壁が立ちあがった。
 その東側の壁の間から何かが浮上してくる。やや湾曲した長方体に見えたそれらの巨大物体は、空中を速いスピードで移動していき、合体を始めた。やがて、空中に巨大なリングが形成される。
「ゲートだと!」
 グレン・ドミトリーが、目の前に現れた物を見て叫んだ。
 その間にも、ゲートの後方部分が回転を始める。まるで空間に穴を掘っていくかのように、回転するゲートリングの後方がかき消すように見えなくなっていった。やがて回転する部分がすべて見えなくなると、残ったゲートリングの内部がゆらぎ始めた。
「ゲート開きます!」
 観測していたリカイン・フェルマータが叫んだ。
 
    ★    ★    ★
 
 遺跡内部では、東と西のブロックを隔てている壁が開いた。ゲートが収められていた部分の床が、斜めにせり上がり始め、完成したゲートへむけてのカタパルトを構成する。
 それに一番近い輸送艦型のヴィマーナが、ゆっくりと離床を始めて浮かびあがった。微かな高周波音と光を放ちつつ、ヴィマーナがカタパルトへと進んで行く。やがて加速してそのままゲートの中へと飛び込んでいった。
「いけない。ヴィマーナはパラミタへとむかうつもりです。止めてください!」
 それを見たエステル・シャンフロウが叫んだ。