リアクション
02 鋼鉄の咆哮 【α分遣隊】のリーダーであるローザマリアは、デルタフォースはともかく、NavySEALsや海兵隊武装偵察隊、海兵隊特殊作戦群なら水中からの急襲を考えていると考え、合同作戦を申し出た。 ローザマリアはワシントンは水辺の都市であることを考え、基地の近くの河川から水路が伸びていないか事前に調査・打ち合わせをし、侵入経路として提案。その結果、採用された。 そして靴や音のする物には布を挟ませる等して消音措置を取り、銃にはサプレッサー(消音筒)を取り付けるなど、隠密行動を徹底する。 その一方で基地の外では相沢 洋(あいざわ・ひろし)とそのパートナーである乃木坂 みと(のぎさか・みと)と相沢 洋孝(あいざわ・ひろたか)。およびエリス・フレイムハート(えりす・ふれいむはーと)によって強行突入のための橋頭堡の確保が行われようとしていた。 「今回の作戦は非常に簡単だ。暴れろ。敵を見つけ次第デストロイなんていう単純すぎる仕事だ。まあ、陽動だからな。橋頭堡を作る。イコンの相手を生身でするよりはマシだ。というわけでいけ!」 洋はそんなことを叫びながら、小型飛空艇をフルスロットルで飛ばし、対空砲火をかいくぐりながら基地上空を飛行していた。 だが、戦車コープス改や、基地の屋根に陣取る多脚戦車コープスの砲撃、戦闘機コープスやヘリコープスのミサイルや銃弾、そしてロビン・フッドの弓矢などを完全に回避することは難しく、すでに小型飛空艇はあちこちから黒煙をあげ、洋自身も幾つもの傷を追っていた。 「さて。新技、披露しちまおうか。じーちゃん、無防備になるから支援よろ! 潜在開放……そして……気力100%充填! 滅技! 龍気砲!」 洋の支援を受けながら、孫であるところの洋孝が、必殺技を放つ。 それは基地の外壁ごと地上に布陣するダェーヴァたちを駆逐するが、技の発動中無防備になった洋孝は、その戦果の代償として小型飛空艇を撃墜され、前もって行っていた熾天使化によってなんとか地上へ軟着陸できたという状態だった。 「よくやった洋孝! うおおおおおおおおおおお!!」 洋も覚悟を決めると、小型飛空艇を爆弾代わりに基地に特攻させつつ、自身はチョコパラソルで離脱する。 そして、着陸すると同時に周囲からの銃火をその身に集めるが、なんとか物陰に隠れつつも、反撃を繰り返す。 歴戦の防御術により、博士はなんとかその場を確保し続けることには成功しているが、このままでは分が悪いと判断。みととエリスに空爆を要請する。 「空爆要請! アルバトロス、 ヴォルケーノ、敵中央部に掃射! 続いて自由に爆撃。敵がまとまっている場所への攻撃を! なお、アルバトロスは攻撃終了後、離脱用に確保する。ヴォルケーノは自爆を含め、砲弾として使用する」 「空爆要請を受理しました。全方位空爆を開始します。ポイント確認。実行します」 「空爆要請受諾、空爆選択します。目標補足。ヴォルケーノミサイル広域散布開始。皆様、爆風、破片等にご注意ください。以上」 そして、始まる空爆。 米軍の戦闘機と戦闘機コープスがぶつかり合い、攻撃機や爆撃機が地上にミサイルや爆弾を落とす。そして戦闘ヘリが護衛する兵員輸送機から、洋が確保したポイントへ米軍の兵士たちが次々と降りてくる。 「GO! GOGOGOGOGO!!!」 輸送機からロープを伝って降下してくる歩兵を狙う戦車コープスやロビン・フッドの攻撃を、イコンが身を挺してかばい、あるいは狙撃によって敵の数を減らそうとする。 更には米軍とともに降下する騎沙良 詩穂(きさら・しほ)が、魔鎧の清風 青白磁(せいふう・せいびゃくじ)の力を借りて常闇の帳を展開する。 その闇によってロビン・フッドの弓は吸収され、また詩穂のパートナーであるセルフィーナ・クロスフィールド(せるふぃーな・くろすふぃーるど)の情報撹乱によって、コープスが用いる戦術リンクシステムに若干ではあるが齟齬をもたらすことに成功し、敵の攻撃が次第に外れるようになってきていた。 そんな支援の中を米軍のパワードスーツをきた歩兵たちが降り立ち、銃火による戦列を敷いて橋頭堡を確保してゆく。 「橋頭堡の確保は成功した! 手早く仕事をやってくれ!」 「任せろニッポーズ!」 米軍から、サムズアップとともに歓声が飛ぶ。 「まずは小手調べですわ」 そして、そんな米兵たちにナコトからの支援が飛ぶ。 「来なさい、フレースヴェルグ!」 巨大な鷲の姿をした怪物が、突如として現れる。それを見た米兵たちは歓声を上げ、驚きながらも基地へと突入していく。 そして、フレースヴェルグによって物理属性の魔法ダメージが基地を防衛するダェーヴァたちに与えられる。更には、その効果によって周辺のヘリコープスや戦闘機コープスが多数墜落。制空権の確保が若干容易になった。 しかし、それに対してダェーヴァは対イコン用生物兵器であるギガースを出撃させる。 牛の頭を持つ巨人、一つ目の巨人、無数の頭と無数の腕を持った巨人、角をはやして金棒を持った巨人、炎を纏った巨人、霜に覆われた巨人などなど、様々な姿の巨人がいる。 ただ、幸い飛行能力を持つ物の数はそれほど多くないようで、敵の制空権の要は戦闘機コープスとヘリコープスのみと断言していい状態だった。 「おいで、バハムート!」 ついで、巨大な竜が召喚される。 その竜が放つブレスは、闇を纏った暗い炎。 ダェーヴァの怪物たちは、コープスたちは、その威力に焼きつくされてこの世界から姿を消す。 それでも、イコンを倒すために作られたギガースだけは生き残った。腕が無数にある巨人が、周囲に落ちている瓦礫をいくつも掴み、それをナコトたちに向かって投げつける。 数十トンもの質量を持つ瓦礫が無数に飛んでくるため、ナコトはとっさにバハムートを再び召喚。暗黒の炎で瓦礫を迎え撃つ。だが、それだけでは迎撃し切ることが出来ず、米兵の何人かが犠牲になる。ナコトも直撃こそ避けたものの破片が幾つか命中し、額から血を流す。 「くっ……単純なだけに厄介ですわね」 ナコトの感触だと、自分の力量と魔法ではコープスや普通の化け物はともかく、ギガースに対してはダメージを与えることは出来ても一撃で倒したりということは難しいようだと感じた。それでも、工夫次第では有利に進めたりとどめを刺すことは可能ではないかという気はしている。 そして、アルコリアが調律を施した輪ゴム銃を、タイミングを見てギガースに発射する。 イコンにも効果が出るように調律された輪ゴムは、ギガースの体に多少の傷を与えることに成功する。が、その程度であった。 「うーん。とはいえあのきょじんは、さいていらんくのぱいろっとがのったじぇふぁるこんれべる?」 そこまで言ってから、アルコリアはちぎのたくらみによる変身を解いて元の姿に戻る。 「第三世代の中でも弱い方なら、私でも何とか渡り合える……と言ったレベルかしらね。シーマやナコトでも協力してギリギリ……さすがに普通の契約者が、生身でギガースの相手をするのは厳しいかしら?」 大体の感触は掴んだ、とアルコリアは判断する。 「おふざけは終わり。アシストしましょうか」 やり方しだいではなんとかなる。そう結論づけたアルコリアは、生身で頑張っている他の契約者の援護をするための行動を開始したのだった。 |
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