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【アナザー北米戦役】大統領救出作戦

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【アナザー北米戦役】大統領救出作戦

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08 ほんの僅かな幕間




「はい、どうぞ!」
 穏やかなほほ笑みとともに、ベアトリーチェが鞄から武器を取り出す。
 こんな小さな鞄のどこにこれだけの武器が入るのかとアナザーの人々は驚いているが、突っ込む暇もないほどに武器が取り出されて、暴れるように要請されるので、とりあえず頷いて米軍兵士とともに武器を持って暴れつつ基地からの脱出を図る。
「そういえば、その秘密兵器ってどこで起動しているの?」
「さすがにその場所まではわからないし、分かったとしても警戒が厳しいと思うが……お嬢さん、行くのか?」
 美羽の質問に、転向者がそんな質問をすると、美羽は大きく頷いた。
「悪いことは言わないからやめておいた方がいい……と言いたいところだが、お嬢さんはいっちまうんだろうなあ……」
「そうね! でも、あなた達は脱出するといいわ」
 美羽のその言葉に、転向者の一人が感慨深い顔をする。
「人生なにがあるかわからんな。人類は絶望的だと思ってダェーヴァについたが、今度はこんなことになるなんて。嬢ちゃん、無事でな」
「うん!」
 そして、救助した人たちと別れると、美羽を含めた一部の契約者たちはさらに基地の奥へと進んだのであった。

 この作戦においてリバイバルストライプに優位な点といえば、攻める敵の拠点がかつて知ったる米軍基地、というのがあげられるだろう。
 もちろんダェーヴァが改造していることを考慮に入れても、元の基地の平面図や立体図などの資料類はすぐに手に入るし、基地の周辺の地形の情報もよく分かる。
 そこに目をつけた契約者たちも少なからずおり、それらの情報は旧米軍を経由して余すところなく契約者たちに伝えられていた。
 トマス・ファーニナル(とます・ふぁーになる)をリーダーとする【ドラグーン】もその一部である。
 その他にもルカルカ・ルー(るかるか・るー)たちの【獅子の牙】やその他単独で動いている者達も米軍からもたらされた見取り図などを元に行動をしていた。

 そして、武器を運んできた【獅子の牙】の契約者のうちクエスは退路を確保するためにと、救助した人々とともに基地の入口の方へと移動する。
 その際クエスティーナは士気が高揚しているために契約者や米兵たちとともに基地の内部に進もうとしている元捕虜たちを、優しい言葉でたしなめる。
「ここでさらに怪我をしたら元も子もありませよ。本格的にアメリカを開放する時に貴方の力を沢山貸して下さい。今は、少しだけ体を休めましょ。退路を確保して待ちませんか?」
 ニッコリと、穏やかなほほ笑みを浮かべるクエスのその言葉に、元捕虜たちは血の気を抜かれたようで、おとなしくその言葉に従うのだった。
「さて、クエス。そろそろ行こう。あまり長居をしていても危険だ」
 サイアスのその言葉に、クエスは元捕虜たちを促して、撤退を始めた。
「クエス中尉、僕たちはもう少し基地内部を物色してから撤退します。ついては撤退の道中に捕虜になっていた人たちから基地内部のことを色々と聞いて戦術ネットワークの方にアップロードして頂きたいのです」
 エールヴァントは少尉なので、階級上は中尉であるクエスには丁寧な言葉づかいで頼み込む。
「はい、了解しました。エールヴァント少尉もあまり無茶をしてはダメですよ?」
「はっ! 中尉もご無事で」
「クエスちゃんクエスちゃん。これをとっとと終わらせて、また一緒にウマいメシでも食いにいこーぜ!」
 そんな中アルフはクエスにナンパをしかける。
「おい、アルフ!」
 エールヴァントは語気を荒げるが、クエスは気にした様子はなかった。
「はい。みんなで祝勝会でもしましょうね!」
 みんなでという予防線を張って、ナンパをサラリと回避するすべを女性は知っているからであった。

 契約者たちの中でもひときわ異彩を放っていたのはドクター・ハデス(どくたー・はです)であろうか?
 ハデスはハデスの 発明品(はですの・はつめいひん)とユニオンリングを用いて融合すると、アメリカ人が映画で見たことがあるような如何にもといった感じのメカメカしいサイボーグの姿に変化する。
「ククク、これぞ俺の新たなる姿、メカハデスだ!」
 突入前、ハデスはそんな感じに高らかに叫んでいたという。
 ハデスの背中からはマルチウェポンアームが蜘蛛の脚のように複数伸び、多数の銃火器を構えていた。そして、これらを機晶脳化により直接制御している。
 これらの銃火器は、オニキスキラーや女王騎士の銃に加え、サポートウェポンでサブ武器化したドラグーン・ライトニングや即席武器工房で調律機晶石を元に作った銃などで、その銃器の数はF型のパワードスーツ以上であったので、その火力は推して知るべし、といったところであろうか。
 とはいえ、ハデスがそれらの銃火器で全力を出すことは、サイアスなどから止められていた。サイアス曰く
「中には生身の人達も沢山居るのですから、建物の中での活動は慎重に。壁にぶっ放してその壁の先に捕虜とかがいた。壁が壊れたせいで捕虜たちが怪我をした、では洒落にならないですから」
 と、それは米軍も含めて突入する全員に通達されていたことではあったのだが、ハデスも一応はそれを聞き入れ、機晶脳化をフル活用して銃火器の射線をコントロールし、建物に被害が及ばないように苦心しているのだった。
 そんなハデスの前に現れるのは、基地の内部ということもあってパワードスーツのコープスや多脚戦車のコープス、そしてレッド・キャップがメインであった。
 連携をしながら攻撃を仕掛けてくるコープスに対して、ハデスは情報撹乱も使いつつ複数の銃火器を独立して動かして各個に対応する。
「フハハハ! ダエーヴァどもよ! この俺の脅威の科学力の前にひれ伏すがいい!」
 たしかに、ハデスの力は脅威だった。F型以上に複数の銃火器を器用に使いこなしているその様子を見て、米兵からは感嘆の声が上がるほどだったのである。