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【アナザー北米戦役】大統領救出作戦

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【アナザー北米戦役】大統領救出作戦

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13 感動の再開 そして撤退戦




「ハイナ!」
「叔父様!」
 それは、感動の対面と言ってもいいだろう。
 輸送機からおりたハイナとアイザック大統領は、激しく抱擁を交わす。
「叔父様、ご無事でよかった……」
 涙を零しながら、震える声でハイナは喜びを伝える。
「感動の再会やなあ……」
「その感動を守るためにも、もう少し気を入れて周囲を警戒してくださいな」
 感動に浸る太輔に、レイチェルの厳しいツッコミが入る。
「……せやな。周囲に敵影は?」
「今のところなしです。基地にウィルスが流れたせいか、戦車コープスの長距離狙撃もぱったりと止んでいます」
「そりゃよかった。とにかく、大統領が専用機に登場するまで時間稼がんとな」
 そう言いながら、太輔は周囲を警戒しつつバンデリジェーロを飛行させる。
「積もる話は後だ。ハイナ、レッドグリフォンを」
「はい、叔父様」
 大統領は、専用機であるレッドグリフォンに乗り込むと、全軍に対する通信回線を開いた。
『諸君、私は今専用機たるレッドグリフォンに乗り込んだ。これよりアメリカを取り戻す戦いを始める。だが、無茶はするなよ。今回の戦略目標は私の救出であると聞いている。私も闘いつつ徐々に後退する。諸君も解放された人々を守りつつ、闘いながら後退。殿は援軍の皆さんにお任せする。さあ諸君、パーティーを始めようじゃないか!』
 そして、響く歓声。
 米軍からイコン部隊に対して輸送ヘリを護衛してほしいとの要請が入る。
『こちらスター1、了解。サビク、行くよ』
 そう答えたのは天御柱学院の三世代機を中心とした『星小隊』の隊長であるシリウス・バイナリスタ(しりうす・ばいなりすた)だった。
 シリウスはパートナーのサビク・オルタナティヴ(さびく・おるたなてぃぶ)に操縦を任せつつ、小隊に指示を出す。
「よし、行こう。もしスター3が遅れるなら、鼓舞の唄をお願いね!」
 サビクはそう答えつつ機体を操縦する。
 シリウス達は小隊を編成している以上、組織だった有機的な行動を行いやすい。そのために護衛を引き受けたのであった。
『スター1より小隊各機へ。これより星小隊は捕虜の人たちを後方に輸送するためのヘリの護衛をするぜ。全機、我に続け!!』
 情熱的な赤髪に包まれたシリウスは、金色の瞳に意志の光を宿しながら愛機ノイエ13を操作する。ノイエドライツェン、通称13は濃い紫色をベースにしたカラーリングのスマートなフォルムの機体で、今回がデビュー戦となる最新鋭機であった。
 13はギガースの中でも特に空を飛んでいるネフィリムの相手をメインに、ヘリに襲いかかるダェーヴァたちをバスターライフルやシールド一体型ライフルをつかって次々と撃ち落としていた。
『スター2、了解よ。陽動も上手く行ったし、そろそろ終わりね!』
 そんな叫びとともに踊り出るのは堂島 結(どうじま・ゆい)だ。
 結が駆るのはシルバーと薄い青をベースにした羽根の生えたイコンライン・ハート【エクセリオン】だ。
 結はピーキーな仕上がりの高機動な機体を自在に操り、敵の航空戦力を撃ち落としながらヘリの防衛を行っていた。エクセリオンは近接がメインのために剣や槍を持った近接型のネフィリムや、地上を歩いて進軍しながらヘリに向かってくるギガースを相手取って、デュランダルを振るいながら戦っていた。
「美桜ちゃん、周囲の様子はどう?」
 結は、パートナーの仁科 美桜(にしな・みおう)に尋ねる。
「今のところ以上はないみたい。天気晴朗なれど波高し、だっけ? ……違うか。とりあえず安定して敵はたくさんいるけど、倒しきれないほどじゃないわ」
「了解。何か変化あったら教えてね!」
「うん」
 そのようにして、結と美桜は戦闘を続けるのだった。
『スター3。了解しました。性能の差が戦力の差じゃないってセリフ、今こそ見せてやるわ!』
 そんなことを言うのは第二世代のジェファルコン、愛称ウィンダムを駆る高崎 朋美(たかさき・ともみ)だった。確かに第二世代は第三世代に比べると色々とスペックは劣るものの、朋美は結局のところ技量や戦術で補えると考えていた。
 さすがにパワー負けはするのだが、他の第三世代機を攻撃担当とし、自分のウィンダムは防御担当とする。その上で倒せそうな敵がいたら倒していき、敵の攻撃の手数を減らす。それが朋美とパートナーであるウルスラーディ・シマック(うるすらーでぃ・しまっく)の戦術であった。
 特に二人は精神感応で互いの思考を共有し、操作にかかるタイムラグを極力減らしている。そのために下手な第三世代機よりも俊敏な反応で敵の攻撃に対応でき、周囲の第三世代の足を引っ張らずに戦うことができていた。
『スター4も行くよ!』
 元気にそう叫ぶのはメイ・ディ・コスプレ(めい・でぃこすぷれ)だ。双子の姉のマイ・ディ・コスプレ(まい・でぃこすぷれ)をサブパイロットにしつつ、{ICN0005591#ダスティシンデレラ}を駆って遠距離ではウィッチクラフトライフルを、近距離では二式を操りながらダェーヴァを迎撃してヘリを守っている。
 その一方で、米軍たちも負けていなかった。
 専用機レッドグリフォンに登場した大統領は口径160mm、重量にして3トン近くにも及ぶ超大型の大砲を右肩に、そしてそれと同じ大きさで広範囲に攻撃できる散弾を使用する大砲を左肩に装着し、両手にはF型が使うものと同じ重機関銃を装備して戦場を駆けまわっていた。

 ひと通りの目的を達成した米軍が天城 一輝(あまぎ・いっき)たちの空挺支援を受けて、少しずつ後退をしていく。
 こと戦闘において、撤退戦ほど大きな被害を出すということは常識と言ってよい。軍が壊滅して無秩序に逃げ出す場合などは特にその傾向が高く、攻める側は必死で逃げる敵の背中を攻撃するだけで次々に戦果を上げていく。
 逆に組織だって撤退する場合でも通常の戦闘よりは被害が出やすいため、いかに秩序立てて、上手に撤退していくかが指揮官の腕の見せどころであり、撤退戦が巧い指揮官にこそ、名将の栄誉はふさわしいという風潮も世の中には多かった。