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【借金返済への道】夢見る返済者

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【借金返済への道】夢見る返済者

リアクション

 夢へと先行する人達が部屋に入って15分ほど経った。
「もう皆、夢の中かなぁ?」
 そっと、響希 琴音(ひびき・ことね)が扉を開けた。
 部屋の中はラベンダーの香りと煙が充満し、むせかえる。
 見回すが、起きている人はもういないようだ。
「オッケーだよっ!」
 廊下にいる皆に中に入っても大丈夫な事を告げ、中へと入る。
 直ぐに窓を開け放ち、煙や香りを外へと追いやる。
 扉から次々と他の人も入って来た。
「よしっ! あたしホイホイちゃんのために歌うよ!」
 息を思い切り吸うと『小さな翼』を部屋へと響かせる。
 その様子をさっそくヴァーナー・ヴォネガット(う゛ぁーなー・う゛ぉねがっと)は携帯の動画で撮影した。
「みんなの頑張りをホイップちゃんに伝えますよ! ケイお兄ちゃんの雄姿もばっちり撮りますからね」
 携帯が鳴るのを待っているケイにもカメラを向けた。
 真剣な姿を収めると嬉しそうにしていた。
「私はホイップさんの身の回りのお世話をさせて頂きますわ。変な事をなさろうとしたら……うふふ?」
 ホイップのベッドの横に椅子を持っていき、ルディ・バークレオ(るでぃ・ばーくれお)が座ると、エル・ウィンド(える・うぃんど)へと意味深な笑顔を向けた。
「ボクは紳士だ! そんなことはしないさ」
 煌びやかな制服をはためかせて、胸を張る。
 その後ろではクロセルがびくっと体を震わせていた。
 ルディと一緒にいたラグナ・アールグレイ(らぐな・あーるぐれい)はホイップを一瞥。
「金に縁の薄そうな小娘だな。男運も悪そうだ」
 そう言うとエルへと視線を送る。
「だからボクは紳士だって!」
 否定をするエルの後ろで、クロセルはまたも体をびくっと震わせていた。


 なんだか色々と準備をしていたウェイル・アクレイン(うぇいる・あくれいん)がホイップの側へと近づく。
 準備が整ったらしい。
「ソレ、俺も手伝う」
「ああ」
 ウェイルが手にしていたお玉とフライパンをアルカナ・ディアディール(あるかな・でぃあでぃーる)に渡す。
 本人は余分に持ってきていたお玉とフライパンを手に持つ。
 2人は顔を見合わせて行動を開始した。
 宿屋中にフライパンをお玉で打ち鳴らす音が響いた。
 琴音の歌が中断させられる。
 2人分だったので、もの凄い音量だったのだが、ホイップは眉間に皺を寄せるだけで目覚めない。
「ちょっと! そんなやり方野蛮だわっ!」
「す、すまん」
 カーリー・ディアディール(かーりー・でぃあでぃーる)が2人に向けて怒る。
(俺を起こすんだったら、もっと酷いことしやがる悪魔が何言ってるんだか……)
 アルカナは心の中だけで毒づく。
「可愛い女の子なんだからもっと優しくしなきゃダメよ」
 今度はカーリーがホイップの側へと近づく。
「うふふ……可愛いわ〜」
 楽しそうにホイップの寝顔を眺めていたかと思うとほっぺをツンツン指でつついた。
「……それだけか?」
「そうよ!」
「それは姉さんがホイップを触りたいだけだろう?」
 アルカナが抗議をするが、カーリーに睨まれただけで終わった。
「次の起こし方を試してみるか」
 ウェイルはカーリーの気が済んでから、次の行動へと移す。
 今度は濡らしたティッシュをホイップの顔へとかけた。
「……起きないな。苦しくなって跳ね起きると思ったんだが」
「おい、そろそろどかした方が良いんじゃないか? ティッシュの下でホイップの顔が歪んでいるように見えるのだが……」
 本当に青くなっている。
 慌ててティッシュを外し、呼吸が正常に戻るのを待つ。
 そして、次の行動へと移した。
「今度は五月蠅くも危険でもない。コレだ」
 ウェイルが手にしていたのは宿屋主人特製のウィンナー・コーヒーだ。
 たっぷりのホイップクリームが浮かんでおり、カプチーノの様にシナモンの粉が少しかかっている。
「甘いお菓子を用意しようとしたら、主人にこれが好物だと聞いたので用意してもらった」
「あら、美味しそうね。それにシナモンの粉がハート型になってて可愛いわ」
 カーリーが素直な感想をもらす。
 ウェイルはそれをホイップの鼻近くまで持っていってみるが、少しうっとりした表情になった以外は反応はない。
「これも失敗か……」
「もう思いつかないな」
「そうねぇ……あら、美味しい」
 いつの間にかカーリーはウェイルの持っていたカップを持ち、飲んでいた。

「今、白馬の騎士……じゃなかった、白馬のお嬢さんが行きますよ〜」
 廊下では、あーる華野 筐子(あーるはなの・こばこ)が白馬の顔ドアップを描いた段ボールを纏い、隠れ身を発動させていた。
 こっそりと部屋へと侵入成功。
 眠っている人を起こさないように慎重に足を運んで行く。
(抜き足、差し足、忍び足っと)
 ホイップの側まで到着した。
 顔の段ボールを外し、腰をかがめてホイップの唇へと自分の唇を近付けて行く。
 あと数センチ。
 しかし、座っていたルディがいきなり動きだし、体がぶつかってしまった。
「あら? 誰かしらぁ〜?」
 がっしと筐子の体を掴むとびっくりした筐子のスキルが解除され、もう少しでキスの態勢が見られてしまった。
「うわちゃ〜!」
「ホイップちゃんに言いますよ!」
 携帯動画でバッチリ撮っていたヴァーナーが釘を刺す。
「うっ……だって、ほら、白馬のお嬢さんの口づけで目覚めるかなぁ……って。好みの男性じゃない人にやられるより女性同士の方が良いじゃん?」
 弁解も空しく、ラグナにつまみだされるのだった。