校長室
【借金返済への道】夢見る返済者
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第3章 ホイップの部屋の窓を閉め、夢へと先行していく人達が部屋へと入り終わった。 「早くっ! 早くっ!」 直ぐにでも飛んでいきたいカレン・クレスティア(かれん・くれすてぃあ)が、宿屋の主人に借りてきたお皿の上にお香を乗せ、火を点けている。 最初、火術で一気に煙を出そうとしていたが、冷静だったジュレール・リーヴェンディ(じゅれーる・りーべんでぃ)に止められたのだ。 火が点き、うっすらと煙が出始める。 煙にはラベンダーの香りがついており、気持ちを落ち着けた。 それを部屋の真ん中に起き、眠りに入るのを待つ。 「我らはそろそろ部屋を出る。……頑張るが良い。眠っている間は我が守護する」 「うん! お願い」 ジュレールがしっかりと伝える。 「わたくしも皆さんの護衛をしますわ。頑張って下さいませ」 ジュレールの言葉を聞いたフィリッパもそう宣言する。 「頼もしいな」 2人は頷きあい、結束を固めたのだった。 「あたし、カレンちゃんの夢の中に入っちゃおうかなぁ〜」 「馬鹿な事言ってないで一度出る」 「ええ〜!」 緊張感の全くない八坂 トメ(やさか・とめ)の首根っこを掴んでジュレールは部屋の外へと出て行った。 「はわわわ、自殺なんか絶対ダメですぅ〜。むぅ、やっぱり人の夢を覗くのは気が引けますが……これもホイップを助ける為ですぅ!」 「僕も一緒なんだから大丈夫! 助けられるよ!」 メイベル・ポーター(めいべる・ぽーたー)が床で無理矢理眠ろうとしている横でセシリア・ライト(せしりあ・らいと)が元気づけている。 「土産話楽しみにしていますわ」 そんな2人にフィリッパは声を掛けると部屋を後にした。 黒乃 音子(くろの・ねこ)とアルチュール・ド・リッシュモン(あるちゅーる・どりっしゅもん)はホイップの顔を覗き込む。 「あんまり良い夢ではなさそうだよね」 「しかし、時たま頬を赤らめているように見えます」 音子が言葉を口にするとアルチュールが付け足す。 「不思議だね。どんな夢見ているのか見当がつかないよ」 「う〜む……」 更に、机の周りへと視線を這わせるが、これと言って得られる情報は無さそうだ。 自分達の体が眠れそうな場所を探して、腰を落ち着けた。 「クロセルは行かないのか?」 「女性の夢を覗き見なんて非紳士的な事は出来ませんよ」 クロセル・ラインツァート(くろせる・らいんつぁーと)の肩の上にいるマナ・ウィンスレット(まな・うぃんすれっと)は、いぶかしんでクロセルの顔を覗き込む。 「いつもなら面白そうとか言って真っ先に夢の中へ入ろうとするクロセルが?」 「な、何言ってるんですか! 俺は紳士ですよ! し・ん・し! それにほら、俺のオペラ座の怪人の様な出で立ちよりも、マナさんの愛らしい姿の方が安心して会ってくれますよ」 「……そうか」 “愛らしい”と言う単語に反応して嬉しそうに羽をパタパタさせた。 「俺はある程度時間が経ったら起こしますね。情報が何かあるかもしれませんから」 クロセルの言葉にコクリと頷く。 「おっ? 途中で起こすんか? なら俺も頼むわ」 日下部 社(くさかべ・やしろ)が後ろから声を掛ける。 「ああ、構いませんよ」 社の頼みを快く了承した。 「本当に夢の中に入るつもりなのか? 何かあったらどうする!?」 「えっと、その時はギルさん達が助けてくれるでしょう?」 寝る準備をしている東雲 いちる(しののめ・いちる)にギルベルト・アークウェイ(ぎるべると・あーくうぇい)が噛みついたが、澄んだ瞳には勝てない。 「むっ……馬鹿を言うな! ふふふ……もういい。お前が寝ている間に悪戯をしておいてやろう! 起きた時を楽しみにしているが良い!」 「ええっ!?」 「大丈夫でございます、マスター。私がギルベルトの魔の手から死守しますから」 ソプラノ・レコーダー(そぷらの・れこーだー)はギルベルトを睨みつけ言う。 「邪魔をするつもりか!」 「ギルベルトこそマスターの邪魔をなさるおつもりですか?」 2人の間で火花が散る。 「ふんっ! 俺はもう部屋を出る! ここに居て俺まで夢の中へ入ってしまっては悪戯が出来んからな! ……目覚めてくれないと困るのだからな」 後ろを向いて言葉を発しているので表情は解らないが、心配しているのは間違いないだろう。 「うん。待っててね。あ、それとね、皆に何かあったら全員を起こしてね」 「ふんっ!」 鼻を鳴らすと、すたすたと部屋を出て行ってしまった。 「畏まりました、マスター」 後を追うようにソプラノも退室する。 「それじゃあ、ホイムゥと遊んでくるね!」 「いってらっしゃい、美羽さん」 元気に行って来る宣言をしている小鳥遊 美羽(たかなし・みわ)をベアトリーチェ・アイブリンガー(べあとりーちぇ・あいぶりんがー)が言葉を返す。 ベアトリーチェは自分も寝てしまわないうちにと部屋の外へと出て、そのまま宿屋の厨房へと向かった。 「僕も僕の出来る事をやろう」 その様子を見ていたサトゥルヌス・ルーンティア(さとぅぬるす・るーんてぃあ)が同じく厨房へと歩いていったのだった。 久世 沙幸(くぜ・さゆき)、菅野 葉月(すがの・はづき)、葉月 ショウ(はづき・しょう)、葉月 アクア(はづき・あくあ)、ガッシュ・エルフィード(がっしゅ・えるふぃーど)、篠北 礼香(しのきた・れいか)、城定 英希(じょうじょう・えいき)、ジゼル・フォスター(じぜる・ふぉすたー)、シルバ・フォード(しるば・ふぉーど)、雨宮 夏希(あまみや・なつき)は大人しく夢の中へと入っていった。