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ゆきやこんこんはいきんぐ

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ゆきやこんこんはいきんぐ

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○12月17日
今日から帰り道。峠を越えたら一気にゴール。おかあさんにお土産持って行きたいけど、なんにもないしなあ。がー君飼いたいって言ったらダメって怒られそうだしなぁ。どうしよ。
―――――――――
 中隊は行程の最大の難所に差し掛かっていた。標高2500メートル、上は断崖絶壁、下はどこまでも続く谷底。さらに厳しさを増す寒さの中、わずか数メートルの幅の道を中隊は縦列になって行軍していた。
 ふと、先頭を行く中隊長は、岩石でできたバリケードのようなものを目にする。中隊長が兵員に進軍停止の指示を出そうとしたとき、バリケードから隊長の頭めがけて巨大な石がうなりをあげて飛んできて、中隊長の頭蓋骨を砕いた。
 中隊長は低くうめいて、そのまま谷底へと落ちていった。

 中隊の指揮系統が完全に失われたなか、バリケードの向こうから石塊や棍棒や槍を持った雪男、イエティたちがのそりと姿を現し、猛然と襲いかかってきた。気が付けば中隊の背後にも槍を持ったイエティたちが迫り、そして頭上からはおそらく同じイエティたちが岩石を絶え間なく投げ落としてくる。中隊は包囲された。
「畜生、何でこんなところにイエティがでるんだ?」
「頭上に気をつけろ!」
「戦えるものは戦列を立て直すんだ」
「衛生兵はいないか!?」 
 谷底に滑落するもの、槍先や岩石によって命を落とすものが相次ぐ。
「うおおおおおおぉ! いくぜっ! 正面突破は武術部に任せなっ」
 マイト中心に武術部の一団が正面のイエティに突撃をかける。
 先陣を切ったのは未央だった。果敢に突撃する未央は、イエティの振り下ろす棍棒や槍をラウンドシールドではねのけ、牽制する。未央の目的はあくまで敵の攻撃を引きつけること。その隙をうかがって遠野 歌菜(とおの・かな)宇都宮 祥子(うつのみや・さちこ)が突入する。歌菜は持ち手に布をまいて凍傷を防ぐよう工夫したハルバードで敵をなぎ払い、祥子は妖刀村雨丸を抜いて斬り込む。祥子にざっくりと脇腹を割かれたイエティは絶命して斃れる。動転するイエティたちにさらなる斬撃を加える祥子。
 一閃、二閃、三閃。
 祥子の刃がきらめく度にイエティたちの骸が増える。
 だがその祥子に石塊が直撃!
 祥子はくらりとよろめき、その額から血が滴る。
「祥子っ!?」
「くっ……でもまだ……死ねないわね……」
 がっくりと膝を落とす祥子にイエティの石斧が襲いかかる。
 ハルバードで受け止める歌菜。劣勢なふたりをイエティたちが取り囲む。
「数が多すぎる……支えきれない……」
 だが、後方からシャーロット・マウザー(しゃーろっと・まうざー)の機銃掃射が加えられた。けたたましい銃声と共に、シャーロットの正確な効力射が歌菜と祥子を囲むイエティを蹴散らした。シャーロットは次の目標を探し、再び引き金を引こうとする。だがそのとき、何者かによってタックルされ、突き飛ばされた。
「……!?」
 次の瞬間シャーロットが目にしたものは、巨大な岩石で押しつぶされた自分の機関銃陣地だった。
「大丈夫ですか? シャーロットさん」
「ありがとう、ですぅ……」
 命の危機を救ったのは同じ部員の水神 樹(みなかみ・いつき)だった。
「距離を詰めないと上から岩を落とされます。接近戦に切り替えましょう」
 そういうと樹は片手剣の光条兵器を手に果敢に敵陣に突進していく。そして最前線の乱戦の中で刃をかわす。
「わたしもいかなくちゃ」
 シャーロットもパイクを手にして前線に飛び込んでいった。
 
 一方的な苦戦がしばらく続いた。
 だが突然、イエティたちは先を争うように逃げ去って行ってしまったのだ。
「うぉおおおおおお! 俺たちの勝利だぜ! ヒャッハー!」
「違うと思うじぇ」
 無邪気に飛び跳ねるマイトにメトロがごにょっとつぶやく。
「僕もそう思います」
笹島 ササジ(ささじま・ささじ)が割って入る。彼は背中のザックに派手な風船をつなげていた。風船はわずかにたなびいていた。
「見てください。風が出てきています。それに雲行きも怪しい……さっきのイエティたちの行動といい、これはもしかしたら天候が荒れる前兆かも知れません」
「ふむゅ」
 メトロがこくりと肯いた。
「それは本当ですか?」
 振り返るとふたりの軍人が立っていた。ルース・メルヴィン(るーす・めるう゛ぃん)少尉と鷹村 真一郎(たかむら しんいちろう)鷹村 真一郎(たかむら・しんいちろう)だった。
「俺はルース・メルヴィン少尉。で彼は鷹村、同じシャンバラ教導団のものです。教官が亡くなられた今、見たところ最専任の俺たちが臨時に指揮を執ります。ガラじゃないけどね……」
 ルースの言葉に続けて真一郎が補足する。
「特殊部隊にいた経験から言わせてもらうと、この状況で吹雪かれたら隊は全滅する。一刻も早く峠を越え、安全な場所でビバークする必要がある。重傷者の治療と搬送も考えなければな」
 間もなく天候が荒れるかもしれないという情報は速やかに伝達され、戦いの疲労も癒えぬまま、部隊は道を急いだ。やがて雪が舞い始め、風が強くなり、どんどん気温が下がっていく。
 峠を越え、ようやくテントを設営し始めた頃、雪山はその本当の凶暴さを晒そうとしていた……。
―――――――――
イエティにぼこぼこにされました。すごくいたいです。