リアクション
エピローグ
「とにかく無事で本当に良かった」
「うん、良かったよね!」
相沢 美魅と七瀬 瑠菜は、ケーキに生クリームをデコレーションしていた。そのそばで、家庭科室から発掘されたボールと泡だて器をきれいに洗い、フィーニ・レウィシアとセフィリア・ランフォードが楽しそうに生クリームをあわ立てていた。
本郷 涼介が持ってきたフルーツを白波 理沙と早乙女 姫乃がきれいに切りそろえている。
お茶を淹れているのはミルディア・ディスティンだ。丁寧に選んだ紅茶とハーブティを、カップに次々注いでいる。
ケーキの配布には、兎野 ミミが奔走していた。
カフェテリアから食器を借りて、デコレーションが終わった可愛らしいシフォンケーキを丁寧に切り分けている。橘 カナのために、カフェテリアのテーブルに真新しいテーブルクロスもひいた。
「ケーキナイフがないよ? ミミ」
「じゃ、カナさん、ちょっとそのリターニングダガー貸してくださいッス、これで切り分けて差し上げるッス」
はい、とカナがミミにリターニングダガーを手渡す。
気ぐるみの丸っこい手が、カナのリターニングダガーを握ってケーキを切っている。
『アナタ、ソノ手デヨク切リ分ケラレルワネェ』
ちゃんと握れているかも定かでないのに、切り口はゆがみ無くまっすぐだ。
「はい、どうぞッス、カナさん」
左手でフォークをとると、ぱくりと一口ケーキを頬張るカナ。
『マァ悪クナイ味ネ』
「うんうん、すっごくおいしーい!」
福ちゃんとカナがそれぞれ(?)の感想を述べると、満足そうにミミが頷く。
次は自分の分だ。ケーキ皿に切ったシフォンケーキを並べるミミ。
「自分もいただきま……、あ」
と、毒島 大佐がミミのそばにやって来た。
「自棄食い用ケーキをいただきたいのであるが。我が相方の分も」
「あなた様もお召し上がりッスか? どうぞどうぞ」
食べようとしていた皿を、ミミはそのまま毒島 大佐に手渡す。
更に、校内の清掃を買って出たレキ・フォートアウフとアリア・セレスティが、ケーキを受け取ろうとこちらに向かって歩いて来た。
「あ、ミミ。あっちにも。他の人にも分けてあげて」
もぐもぐとケーキを頬張りながら、カナが指示を出した。
ケーキ皿をもって、奔走するミミ。
「他にケーキが行き渡ってない方はいないッスか? 大丈夫ッスか?自分、切り分けて配るッスよ」
いつの間にか、ミミのそばにケーキ待ちの行列が出来ている。
その行列から離れて、クルード・フォルスマイヤーはティーカップを手にしていた。
勿論、砂糖抜きの紅茶だ。
「フルーツだけ貰ってきましたよ。これなら食べれますよね?」
ケーキ皿にフルーツだけ盛り付けてユニ・ウェスペルタティアがクルードに渡す。
……ミミがやっとケーキを食べることができたのは、全員に皿が行き渡ってからだった。
「では、自分もいただくッス……」
そう言うと、ミミがおもむろに自分の頭に手をかけた。
「え……?」
爆発する!!
思わず伏せた全員が、こわごわと顔を上げて見たものは。
ポン。
熊の着ぐるみの首がとれて。
「いただきますッス!」
熊のきぐるみの下からのぞく、ピンクのウサギの着ぐるみだった。
みんなが美味しくティータイムを楽しんでいる頃。
切ったケーキを持ってそっとその場を離れると、美魅は未散とリシェルの眠っている保険室へ向かった。
「……いらっしゃいますか?」
そっと中を覗けば、日比谷 皐月と雨宮 七日が未散達の様子を伺っている。
「目が覚めるまで待っているつもりなのでしょう?」
「うん、誰もいなかったらかわいそうだしね」
二人に微笑みかけると、美魅は皐月にケーキと紅茶ののったトレーを差し出す。
「お疲れでしょう。召し上がってくださいね」
「あ、ちゃんとデコレーションしてあるね」
「クリームもあわ立てて、フルーツも飾ってみました。紅茶もどうぞ」
「ありがとう。いただきます」
微笑み合う美魅と皐月のところに、小鳥遊 美羽がやってくる。
「まだ、目が覚めないんだ?」
「はい、もう少しかかりそうです」
「粉まみれでかわいそうだから、制服持ってきてあげたよ!」
じゃーん。
超ミニスカートの制服を広げると、美羽が嬉しそうに笑った。
ちなみに。
未散とリシェルは一ヶ月の家庭科室掃除を言い渡された。勿論回復を待ってだ。
それから、救出に来てくれた勇敢なみんなに、二人はお礼とお詫びを言いに回った。
オーブンに水がかかってしまったが、救出活動の一環だったため、お咎めなしとなった。新しいオーブンは校長のポケットマネーでなんとかなるらしい。
食べ切れなかったケーキはほうぼうに配布した後、どうにもならない残骸は幾嶋 冬華に預けて畑の資料とした。
こうしてほとんどの事件が片付いた後、……たった一つ残された問題。それは。
「校長の彫刻を作ってデコと書いた者、おとなしく職員室に来るように」
校内放送の出頭命令に、犯人が従ったかどうかは、定かでない。
はじめまして! 新人マスターの日曜 快晴です。
このたびはシナリオにご参加いただき、本当にありがとうございました。
沢山の楽しいアクションを拝見させていただき、
楽しくそして沢山悩みながら書かせていただきました。
面白く出来上がっているといいのですが……。
皆さんが気に入っていただけると大変嬉しく思います。
また次回、お会いできれば幸いです。