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リアクション
桜を愛でて
高務 野々(たかつかさ・のの)は、いつもと違った和装メイドの恰好で、皆のお世話をしていた。
仕事の途中、上空を見上げる。
夜桜が一面に広がり、降り注いでくるようだった。
皆のお世話ばかりしている自分。
だけど、こうして見上げれば桜が自分を包んでくれる。
この世に桜が無かったら何と寂しいことか。
そんなことを考えながら気合を入れなおす。
「頑張っていきますよ!」
野乃は、皆の為に仕事に戻った。
クリストファー・モーガン(くりすとふぁー・もーがん)は、ただサクラを眺め、その美しさを堪能すると、相棒がどういう行動に出るかを考えていた。
面白くなればいいと思いながら。
「やっぱり桜は綺麗だなぁ」
皆川 陽(みなかわ・よう)は、故郷日本で家族たちとお花見をしていた頃を思い出していた。
「陽、少し冷えるから、上着着な」
そう言ってテディ・アルタヴィスタ(てでぃ・あるたう゛ぃすた)が自分の上着を陽にかける。
「ありがとうテディ……」
優しく、ほんの少し寂しげに陽がテディに微笑みかける。
「日本にいたころはね、みんなでお花見に行くのが普通だたんだ。ボクは平凡な人間だからただそれだけで幸せだった。でも、テディに出会ってパラミダに来ていろんなものを見て、ボクは何か変わったのかな……ボクは平凡な人間だから、何もないから」
陽が自嘲気味に笑う。するとテディがすぐさま。
「そんなことない! 陽は気づいていないだけなんだ! 陽にはたくさんいいところがある。僕は陽のパートナーだから一番よく分かっている。陽に会ったのは、偶然じゃないから、僕は陽に出会えて幸せだったから……だから」
テディが必死に言うと、陽が優しい笑顔を見せて。
「ありがとう、テディ。ボクも、テディに出会えて世界が広がったよ。桜を見てちょっとホームシックになっただけだから心配しないで。後悔なんてしてないから」
陽の瞳は、テディをじっと見つめ、優しく輝いていた。
皆から少し離れた所でロザリィヌ・フォン・メルローゼ(ろざりぃぬ・ふぉんめるろーぜ)が一本の桜に寄り掛かっていた。
いつものロザリィヌは、華やかなところが好きで、人々の注目を浴びて中心にいることを望む少女だった。
だが、今日の彼女は違った。
理由は、些細なことかもしれない。
ただ、自分が大事に思っている人と少しすれ違っている気がするそれだけだ。
それだけでも彼女にとっては重要問題だった。
鮮やかに咲き誇る桜に自分の姿を見た。
自分は他人に鮮やかに映るよう心がけている。それが自分だから。
「鮮やかに咲き誇ったものも……全ては散りゆくものなのかしら」
いつか自分も散ってしまうのだろうか……。
「散った花は元には戻らない……それでも」
花弁をひとひら手の平に掴む。
「次の年には鮮やかな花をまた咲かせるんですわ……一段と美しくなって」
ロザリィヌはなぜか涙を流していた、理由は分からない。
けれど未来が見えた気がした。
皆が桜見物をしている時、唐突に音楽が流れ出した、
ミレーヌ・ハーバート(みれーぬ・はーばーと)、アルフレッド・テイラー(あるふれっど・ていらー)、アーサー・カーディフ(あーさー・かーでぃふ)の3人が音楽機材を持ち込んで演奏を始めたのだ。
みんなの為に、今宵の夜桜が音楽と調和するように。
音楽を聴いた夜桜はさらに美しさを増した気がした。
3人の演奏会はさらに続けられる。
音楽と桜のハーモニーが今宵の皆の幸せに繋がるように。
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