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リアクション
7章
アルタイルが陽一と戻ってきた直後――踏まれた陽一は、なんとか動けるぐらいまでは回復したらしい――るるはベガに頼んでおいたもう一つのものについて尋ねた。
「ベガさん、笹の葉と短冊持ってきてくれた?」
「カササギたちに指示してありますので、時機に――と、どうやら来たようですね」
カササギたちが運んできたのは巨大な笹の葉と、人数分の短冊だった。
「おっ、ええな〜。せっかくの七夕なんやから、お願い事せえへんとな」
「凄いねぇ。空まで届きそうだよぉ」
それをみた社とマリエルも、乗り気なようだった。
「じゃあみんなに短冊配るわよ」
愛美が短冊を配り、それぞれが思い思いのことを書いてゆく。
「皆様、短冊に願い事は書けましたか?」
短冊は、ベガが回収することになっていた。
恥ずかしいことを書いても、誰かに見られないようにするための対策である。
飾り付けるまで、時間がかかるとのことから、雑談して待つことになった。
「姫やん、助けに来てくれてホントにありがとう」
信じていた通りに助けに来てくれた和希へ、ミューレリアは感謝すると同時に、胸の内が温かくなった。
「当たり前だろ? ミュウがピンチになったら、必ず助けに行くぜ!」
そう言いきった和希は、先ほどのことを思い出したのか、にやにやしている。
「それに、抱きついてくれるなんて滅多にないしな」
「ひ、姫やん!」
思い出しただけでも恥ずかしいのか、ミューレリアは耳まで赤くなっていた。
そのままチラチラと和希を見ていたのだが、少しだけ距離を縮めてきた。
それに気がついた和希は、ミューレリアの手をとると自分の方に引っ張り、少しだけいつもより近い距離になる。
いつもより近い距離のまま、二人は飾り付けを眺めていた。
「想い人と一緒にいられる人はいいよねぇ」
「まぁ元々そんなイベントですから、仕方ないですよ」
ため息をつきながらそうのたまった玲奈に苦笑しつつ、朔が諭す。
ましてや七夕なのだ、仕方の無いことだろう。
「落ち着くのだよ、たかがこれしき……どうやら我の思い違いだったようだ。イベントを恋人たちといられる者は人類の敵なのだよ!」
物騒な台詞とともにロケットランチャーを構えようとする毒島。
「それはダメですよ! いくらなんでも危険すぎます」
「大丈夫、死にはしないわ。――殺りなさい!!」
「何か矛盾してますよ!? 玲奈も煽らないでください!」
一人ストッパーとして動かざるを得なくなってしまった朔だった。
一方こちらでは、ジョニーと拓海が意気投合、正義がしきりに頷いていた。
「おぬしもなかなかでござるな!」
「リックマンのほうこそ。まさかここまで合うとは思わなかったのだよ」
「なんという友情! やっぱりヒーローに仲間は付き物だな!」
「「「HA☆HA☆HA☆HA☆HA☆HA」」」
肩を組みながら笑いあう三人。
もはや誰にもまざることはできないほどの、謎の熱気がそこにはあった。
「へぇ〜、百合園女学院てそうなってるんだ〜」
「なるほどね〜。学校によって違うもんなんだねぇ」
莱菜と茜の言葉に、由宇は頷く。
「そうなんですぅ。学校によって違うんですねぇ」
「まぁ何処も同じってなると、学校の特色なくなっちゃうからね」
セシリアのもっともな意見に三人とも納得。
親交を深めている四人は、そのまま各学校についての話で盛り上がっていた。
「羊羹を釣り上げるってできるんですか?」
「俺も初めてだったからな。あまりの衝撃に、思わず面白さの点数をつけたぐらいだ」
陽太と峯景の会話に、ツッコミチャンスがあったエリシアはキュピーンと目を光らせ、手早くツッコミを入れた。
「なんでやネーん☆ 」
「ゴフッ!」
よって、まともにヒットした峯景は倒れ付してしまう。
「エリシア! あれほどダメだといったでしょう!?」
「これがっ! 海の生態系頂点の力だァ!!」
「話を聞きなさい!!」
ツッコミのあまりの威力に閉口した陽太だったが、一連のやりとりで割り切ることにした。
つまり、こういうものだと悟ったともいえる。
そのままわいわいと騒いで時を過ごした。
「マナはどんな願い事書いたの?」
「きっと運命の人と結ばれますように、とかだってぇ」
ふと思い出したように尋ねた未沙だったが、愛美が応えるよりも早くマリエルが応えてしまう。
「残念ながら違うわよ」
「へ〜、じゃあなんて書いたの?」
「運命の人が私を見つけてくれますように! よ」
「それはたいして変わらないって……」
興味をもった美羽が尋ねるも、愛美からの返答に、思わず未沙はため息をつく。
「あ、そうそう。新しくできたところのケーキ、今度みんなで食べに行こう?」
「あれ美味しそうだよね! あたしも行こうと思ってたんだよね!」
「なら決まりね。今から楽しみだわ」
美羽からの提案に、未沙と愛美はすぐに乗った。
――マリエルは飛べなくなったらどうするか悩んではいたが。
ともあれ、笑顔が絶えることはなかった。
「なぁ、チーシャは短冊に何書いたんだ?」
傍で聞こえてきた話題に乗るようにして、カセイノは聞いてみた。
「えっとね、みんな仲良くいれますように、だよ〜」
満面の笑みで言うウィキチェリカに、リリィが微笑んでいた。
「チーシャらしくていいですわね。カセイノはなんて書いたんですの?」
「決まってるだろ? ズバリ、幸福になる!」
リリィとウィキチェリカはおもわず納得する。
「リリィはなんて書いたの?」
「ふふっ、それは秘密ですわ」
ウィキチェリカの質問を、唇に人差し指を当てて笑顔でごまかしたリリィだった。
「彦星と織姫って凄いと思わない?一年に一度だけなんて私じゃ耐えられない」
「郁乃様、それは桃花も同意見です。もし郁乃様とそんなことになったら、絶えられません」
そしてすぐさま自分たちの世界を作り上げる郁乃と桃花。
真は苦笑しながら言葉を続けた。
「織姫と彦星って夫婦なんだよね。信頼してるから待てる…のかな」
「それだけ相手のことを想いあえるのって、凄いことだよね」
京子も同意のようだ。――もっとも、チラチラと真を盗み見していたが。
「それだけ二人の絆が強いってことだよね」
「素晴らしきことだ、私達も見習わなければならん」
朱里とアインも寄り添いながら、桃色空間を発生させる。
それを真は呆れながら、京子は羨ましそうに見ていた。
「こんな大きいの、よく準備できたよね……」
「天帝の御使いだからじゃないか? じゃなきゃ、こんな立派なのは持ってこれないだろ」
「それもそうだな……にしても、短冊に願い書くなんて何年ぶりだ?」
正悟とマクシベリス、それとセリスの三人は、飾り付けられていく笹の葉を見ていた。
「……ねぇ、なんでさっきから、カササギの群れが空に突入してるの?」
「見たところ、雲がある場所みたいだが……まさか無理やり雲を消してるのか?」
「天の川の橋をかけたり、大きな笹の葉運んだり……苦労してるな」
働きづめなカササギたちに視線を移すと、また一つの群れが突入していく。
意図的に視線を外して、見なかったことにするしかなかった。
「ほぉ、立派なもんだな」
「どれだけ気合入れて飾りつけしてるのよ……ベガも何か楽しそうね」
動けるようになった陽一は、美由子と共にいた。
「さぁ、後は涙を売りさばけば一件落着ね!」
「だからそれは止めろとあれほど言っただろう!? 何でも言うこと聞くからそれだけは……っ!」
「じゃあいろいろと買ってもらおうかしら? もちろんお兄ちゃんの奢りで」
「ちょ、そんなにないぞ!?」
うろたえる陽一が面白くて、笑みをこぼす美由子がそこにはいた。
少し離れた場所に一人でいるアルタイルを見つけた社とるるは声をかけた。
「お嬢様、少しは心の整理できました?」
「ええ、ほんの少しなら。彦星様については……ゆっくり考えてみないとわかりませんわね」
それにるるは笑いながら言葉をかける。
「大丈夫、いつかきっと見つけられるよ……自分だけの彦星様を」
視線の先には、ベガによって綺麗に飾られた七夕飾りができあがっていた。
――色とりどりの短冊に、思い思いの願い事
――天まで届けと笹の葉は、遥か高みへ背を伸ばす
――空に広がる星の海、一つ一つが瞬いて
――深き絆で結ばれた、年に一度の星合を
――これは、互いの絆を確かめ合った、ほんのちいさなおとぎばなし
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担当マスターより
▼担当マスター
みかん箱
▼マスターコメント
初めまして、この度『蒼空のフロンティア』のゲームマスターになりましたみかん箱です。
今回のシナリオ【2020年七夕】サルヴィン川を渡れ!? はいかがだったでしょうか?
自分なりに頑張ってみたつもりですが、皆さんに少しでも面白いと思っていただければ幸いです。
最後となりましたが、このシナリオに参加してくださった全ての方に、無限の感謝を……
以上、みかん箱でした。