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【学校紹介】イルミンスール大歓迎会!

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【学校紹介】イルミンスール大歓迎会!

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 第3章 「私も料理したことないんですが、とにかく焼けばいいんですよね?」

一方そのころ、
世界樹イルミンスールの根元では、
新入生歓迎会の準備が行われていた。
黄泉 功平(よみ・こうへい)は、リンネに頼れる男だと思われたいと、
蒼空学園生だが、協力を申し出ていた。
「リンネちゃんもみたいだけど俺もお料理ってしたことないんだよね。
今はバトラーとして少し始めてみたけれど」
功平は、食材を焦がしてもいいように多めに用意していた。
緊急時はリンネのパートナーのゆる族モップス・ベアー(もっぷす・べあー)を尊い犠牲にするつもりである。
(絶対にその方が絵になるからな。
余興っぽい雰囲気も出せる。
パーティには余興が必要だろ)
「なんだか寒気がするんだな」
「今日はリンネちゃんがお料理するから、
 モップスは雑用やってなさい!」
と、会場の設営を命じられたモップスが、少し離れた場所でつぶやく。
「大丈夫、大丈夫。
 大魔法使いのリンネちゃんにはお料理なんてお茶の子さいさいだよ!」
リンネはそう言って、笑顔で包丁を振り回している。
音井 博季(おとい・ひろき)は、
そんなリンネのそばで、料理の下ごしらえをする。
「リ、リンネさん、
 危ないですから、切るのは僕がやります!」
「そう? どうもありがとう!」
初恋の相手であったリンネに笑顔を向けられ、
博季は真っ赤になる。
(ああああ、リンネさんが近くに……いいところをみせなきゃ!)
博季は大量に用意したわけのわからない食材を切り刻んでいたが、
緊張で指も一緒に切りまくる。
「いたあああああ!?」
「だ、大丈夫なのか?」
功平は思わずライバルである博季を心配してしまう。
「よーし、やっぱり、リンネちゃんの本領発揮は炎の魔法だよね!
 ファイア・イクスプロージョンで大爆発だよ!」
リンネはそんな様子には全く気づいていない。
新入生の比島 桜花(ひしま・おうか)も、
リンネと一緒に歓迎会準備を行っていた。
「私も料理したことないんですが、
 とにかく焼けばいいんですよね?」
引っ込み思案なので、
「自分から人に話しかけられるようになる」というのが目標の桜花だったが、
歓迎会準備の楽しい雰囲気に、自然とリンネに話しかけていた。
「うん、焼けば食べ物になると思うよ!」
「じゃあ、焚火を起こしましょう」
「よーし、ファイア・イクスプロージョン!」
焚火を起こして食材を放り込もうとする桜花と、リンネを、止める者が現れる。
エリオット・グライアス(えりおっと・ぐらいあす)は、
リンネが着火したキャンプファイアーのような焚火を、
火術で火の勢いを弱めてから氷術で完全に消火する。
「……自分の学校を消し炭にでもするつもりか?
 それに、『焼けば食べ物になる』とはなんだ。
 むしろ、焼いたら食べ物ではなくなるだろう……」
エリオットはリンネを説教する。
エリオットのパートナーの
剣の花嫁クローディア・アンダーソン(くろーでぃあ・あんだーそん)は、
料理下手な子達が間違った火力で料理しないように、ブレーキをかけ、
なるべく大勢に料理を教えようとしていた。
「料理はね、時には火力もいるけど、それでも限度ってものがあるの。覚えておいてね」
クローディアを先生として、料理教室が始まった。
同じくエリオットのパートナーである魔道書ヴァレリア・ミスティアーノ(う゛ぁれりあ・みすてぃあーの)は、
少し離れたところで別の人を相手に消火活動を行いつつ、ついでに女子のぞき部として声をかける。
「ほらほら、そんなに力入れちゃダメよ……?」
「ひゃうっ!?」
ヴァレリアは、食材と格闘し始めた桜花の耳元に息を吹きかける。
「ふふ……、カタくならないの……」
「まったく、面倒事は嫌いだというのに……」
エリオットは、その様子を見て、ため息をつく。

★☆★


エリオットの注意が一瞬離れた際に、
百合園生のネージュ・フロゥ(ねーじゅ・ふろう)は、
リンネに提案する。
「リンネちゃんと一緒に、地上で流行の衝撃波の調理法を
 やってみたいと思うんだ。
 どうかな?」
「へー、爆発で料理できるんだ! 
うん、やってみよう!」
リンネは了承して、ファイア・イクスプロージョンを放つが、
ネージュごとぶっ飛ばしてしまう。
「きゃあああああ、お約束だよー!?」
ネージュはお星様になった。
「あれー?
 おっかしいなあ」
黒焦げになった食材を前に言うリンネに、
百合園生のメイベル・ポーター(めいべる・ぽーたー)が、接近する。
「新入生の方々を守るためですぅ。
 パラミタ撲殺天使、降臨!」
「ぎゃふっ!?」
メイベルは、リンネの後頭部を野球のバットで殴って気絶させた。
「危険が危ないところでしたぁ」
メイベルは額の汗をぬぐう。
メイベルのパートナーの剣の花嫁セシリア・ライト(せしりあ・らいと)と、
同じくメイベルのパートナーの英霊フィリッパ・アヴェーヌ(ふぃりっぱ・あべーぬ)は、
料理の準備を手際よく行おうとしていた。
「今のうちだよ!
 特に、火を使う料理は早くすませないと!」
フライやサンドイッチなどの歓迎会用料理を、セシリアは率先して行う。
フィリッパも、セシリアが料理を張り切っているのでメイベルとともにサポートする。
「これからの学校生活、パラミタに来ての第一歩です。
皆仲良くにっこりとしたいですね」
フィリッパは、新入生の伊礼 悠(いらい・ゆう)と、
パートナーの守護天使ディートハルト・ゾルガー(でぃーとはると・ぞるがー)に声をかける。
「は、はい。サンドイッチとか、軽食なら作れますし、
 配膳も手伝えると思います。
え……っと、これで大丈夫……でしょうか?」
「ええ、大丈夫ですよ」
引っ込み思案だが、だからこそ友達を作りたいと参加していた悠は、
フィリッパに優しく微笑まれて安堵する。
「私は料理はできないが、配膳は手伝おう。
 それと、力仕事の必要があれば、言ってくれ」
悠に危険が迫ったら守ろうと考えていたディートハルトは、
メイベルもヤバいのではとちょっと思っていたが、悠が真剣なので黙っているのだった。

★☆★


「そういえば、一年前も似た様な光景があったな。
 皆、疲れて帰って来るだろうから私は彼らの為にうまいものを作って待っているか」
ルクオールの町が冬になってしまった、パラミタに来て初めての事件を思い出しながら、
本郷 涼介(ほんごう・りょうすけ)は、
ミートボール入りのトマトソーススパゲッティを作る。
涼介は、得意の料理を新入生達に披露しようと考えていた。
パートナーのヴァルキリークレア・ワイズマン(くれあ・わいずまん)は、
クルミやアーモンドなどのナッツ類に、
レーズン、ドライオレンジ、チェリーなどのドライフルーツを使った
パウンドケーキを用意していた。
「今から作れば、みんなが帰ってくるころにはできあがってると思うから頑張らないと。
 ね、おにいちゃん」
「ああ」
クレアと涼介は笑顔で言う。
出雲 竜牙(いずも・りょうが)は、食材を森で調達してきた。
「まあ色々と面倒くさいけど、
こういうサバイバル技術を身につけておかないと、
イルミンで生きていくのは辛いぜ?」
山菜に魚、野兎、猪などをとってきた竜牙は言う。
「何しろ森が広くてたまに迷うからな。
それで家に帰れなくなって食料もゼロ、あるのは己の身一つになったら、
こうやって狩りをするしかないからなー」
野兎や猪を捌いているのはさすがに皆ドン引きだろうと考え、竜牙は裏に行く。
赤城 花音(あかぎ・かのん)も、新入生だが歓迎会準備に参加していた。
「ボクは新入生だけど、よろしく!
一応……メイドだから!
全ては歌姫になるための修行なんだ!」
涼介やクレア、肉を持って戻ってきた竜牙にあいさつし、
花音は炊飯ジャーで料理を作る。
炊飯ジャーは、校内放送のアナウンスで大量に集めてある。
「肉じゃが、風呂吹き大根、鶏の水炊き、カレー鍋、ビーフシチュー、ロールキャベツ……etc。
ナポリタンパスタやホットケーキも美味しいんだよ!」
パートナーのシャンバラ人リュート・アコーディア(りゅーと・あこーでぃあ)は、
ブレーカー落ちに注意する。
「僕は銀シャリで、特製おにぎりを作ります。
ネタは鮭、明太子、天蒸す、梅、昆布……etc。
注文に応じて、握らせて頂きます。
皆さんで、楽しい思い出に出来ればよいですね」
リュートは言う。
「日本人に銀シャリは心の故郷だよね。
たくさん食べてね!」
「たしかにそうだな。森の食材に銀シャリはよくあうよな」
「これだけ炊飯ジャーが並んでると壮観だな」
花音の言葉に竜牙はうなずき、涼介もよい香りを立てる炊飯ジャーを見回す。
こうして、まともな料理ができていくのであった。