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【学校紹介】イコンシミュレーター2

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【学校紹介】イコンシミュレーター2

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【SpecialBattle・1 圧倒的な相手に立ち向かってこそ成長する】

 九度目の復元を受けたイルミンスールの森。
 今そこに、50メートルのエリザベートと、その周りを囲むようにして10メートルのサイコゆるスター100匹が圧倒的な存在感で立ちはだかっていた。
「さあ、とうとう私の出番ですぅ! 生徒のみんな! 遠慮はナシでガンガンかかってくるですぅ!」
 対する生徒達は緊張の色を濃くする。
 念のため、アリサも自身のイーグリットでその場には来ていた。
 そんなアリサに神裂 刹那(かんざき・せつな)ルナ・フレアロード(るな・ふれあろーど)が挨拶の言葉を告げる。
「改めまして、初めましてイルミンスール所属の神裂 刹那です。今日はよろしくお願いします」
「同じく、刹那のパートナーのルナ・フレアロードと申します。今日は宜しくお願い致します」
「アリサ・ダリンだ。皆がんばってくれ、私は応援だけだけどな」
「ま、やるだけやったるから任せとき」「はぅ〜☆ ボクもがんばるよぉ」
 彼女たちに日下部 社(くさかべ・やしろ)と、パートナーの望月 寺美(もちづき・てらみ)や、
「私はシフ・リンクスクロウです。今日は一緒に頑張りましょう」「ワタシもいるから安心してね!」
 イーグリットに搭乗しているシフ・リンクスクロウ(しふ・りんくすくろう)ミネシア・スィンセラフィ(みねしあ・すぃんせらふぃ)も加わり。
「シフさん、イコンの乗り心地ってどんな感じなんですか?」
「え? そうですね、意外と快適ですよ。操縦席につくだけで、なんだか自分がとても大きな存在になったような気がして」
「巨大ロボの操縦なんて、まさに男のロマンやもんなぁ」
 刹那、シフ、社を筆頭にしばらく和気藹々と話をしていたが。
 やがて、
「こぉらぁ! おしゃべりは後にして、さっさと始めるですぅ!」
「あーはいはい。わかりましたって。それじゃあ……特別訓練、はじめ!」
 アリサが合図と共にその場を離れるや否や、談笑していた刹那とルナが動いた。
 まずルナが近くに生えていた手頃な大きさの木を引き抜き、ぐぐぐっと、おおきく振りかぶって勢いよく投擲した。
 更に、間髪いれず刹那が火術で点火させ、即興での火槍と化したその木はサイコゆるスターの群れの中に激突し連中をいきなりうろたえさせる。
 ルナはそのまま隙を与えないように、引き抜いては投げ、引き抜いては投げを繰り返し。
 更にその中の一本を、悠々と構えているエリザベートへと投げはなった。しかもスキルのバーストダッシュで勢いもプラスさせて。
「ふふん。こざかしいですぅ」
 だが彼女はまるで動じた様子もなく、氷術を右手から放出し即席火槍を空中で弾き飛ばした。
「やっぱり、簡単にはいかないですね」
 刹那はとルナは、心の中で気合いを入れなおしながら、攻撃されて怒ったサイコゆるスターの相手をしていく。
 その様子をほくそえみながら眺めるエリザベート。
 と、そんな彼女の目の前に、なぜかあんパンやメロンパン、妖精スイーツなどが垂れ下がってきた。
「なんですぅ? これ……」
 手を出そうとしたら、ひょいと離れる。掴もうとしたらまたひょいと。
 さっ、ひょい、さっ、ひょいと、いたちごっこなやりとりが行なわれていくうちに、エリザベートはいつしかサイコゆるスターの群れからひとり離れていく。
 その機を逃さなかったのは狭霧 和眞(さぎり・かずま)ルーチェ・オブライエン(るーちぇ・おぶらいえん)のイーグリット機だった。
「なんだか知らないが今がチャンス……あれ、ちょっとルーチェ。なんで校長の真正面に躍り出てるんスか?」
 和眞はメインパイロットをルーチェに任せており、その彼女が無策にも近い行動に出て驚かされていた。
 そしてそのルーチェは、
「エリザベート先生! ただちにネズミさんを解放してください!」
 なんだか突拍子も無いことを発言していた。
 和眞は思わず操縦席に頭を打ち付けかけた。
「可愛いネズミさんを戦いに駆り出すなんてとんでもない!」
「可愛い!? むしろ怖いッスよ、10mのゆるスターなんて! というか怖い通り越してキモい!」
「もふもふは癒しの為に存在するべきです。ビバ、もふもふ」
「癒されるどころか殺気しか漂ってこないんスけど!?」
「さあ、エリザベート先生も一緒にもふもふしましょう」
 ルーチェの説得と、和眞のツッコミに対しエリザベートはというと、
「私のものをどうしようと私の勝手ですぅ! そしてそのスイーツも私のものですぅ!」
 ルーチェと、あんパンたちに対して早くもキレ出して。
 容赦皆無で巨大化して威力も増した雷術をイーグリットとあんパンへとぶちかました。
「ええ? ど、どうして攻撃するんですか先生!」
「いや訓練なんだから普通攻撃されると思うッスよー!?」
 彼女は怒りのまま雷術を連続打ちして、イーグリットをあっというまに沈黙させ。
 そのついでにあんパンやスイーツをぶら下げていた糸が切れて、エリザベートの手元へと落下した。
「あーもう、もうすこしだったのに」
 残念そうにぼやいて光学迷彩をとき、姿を見せたのは光る箒に乗ったザカコ・グーメル(ざかこ・ぐーめる)だった。
「校長相手なら、このまま誘導していけるかと思ったんですけど」
「むむっ! むむむむむむむ、むっむむむむむぅ、むむむむむむむむっむむっむむむむむむむむむぅ!(ふんっ! 誤解ないように言っておくけどぉ、いまのはわざと引っかかったフリをしたんですぅ!)」
 ザカコの意図を察したエリザベートは、かなり焦げたあんパンをはむはむしながら弁解していた。
「むむむむ! むむむむむむむむむむむむむ、むむむむむむむむむむぅ!(お前たち! 私はしばらくこれ食べてるから、ちゃんと迎撃しておくですぅ!)」
 指示を受け、サイコゆるスター達は一気にゾゾゾゾゾと、猛進を開始し。
 時折熱線魔法での攻撃も混ぜて来はじめた。
「ここは、まずサイコゆるスターを片付けなくてはいけませんわね」
 ウォーハンマーを手に佐倉 留美(さくら・るみ)は、自身にパワーブレスをかけて回転するような勢いでハンマーを振り回し……というよりほとんど振り回されながらサイコゆるスターをなぎ倒していく。
 その際に、はいていた超マイクロミニスカがひらひらになびいていた。
 近くで戦闘に加わっていたソア・ウェンボリス(そあ・うぇんぼりす)は、パートナーの雪国 ベア(ゆきぐに・べあ)に冷ややかな目線を送る。
「ベア。女の子のスカートを覗くのはあまり感心できないです」
「え!? いやいや、ご主人! 俺様別に覗いてねーよ!」
「最低ですわ。わたくしのウォーハンマーで、正義の鉄槌をお見舞いして差し上げましょうかしら?」
「いやいやいやいや、そっちのアンタも! 覗いてねぇって言ってんだろ!?」
 やけに必死に弁解してるところが怪しい「だから覗いてねぇ!」ベアに、今がチャンスだとばかりにサイコゆるスターが群がっていこうとするも、
「があああ、くそっ! 人が喋ってるときに、邪魔すんじゃねぇぇ!」
 ベアは所持していた緩世音菩薩像を振り回し、サイコゆるスターをなぎ倒して陣形を崩していく。数の差で足とか腕とかに噛み付かれたりしながらも、怯むことなく怒りのままに場の敵を一掃していく。
「随分と、のせやすい人ですわね」
 留美の呆れ半分褒め半分の言葉を背に、ベアは攻撃の手を休めず。
「さあ、私も一生懸命がんばりますっ!」
 放たれる熱線魔法のほうは、ソアが設置した氷の壁により空へと向けて屈折させられていった。
 ソア達の頑張りを横目に、社も、
「俺も負けてられへんなぁ。よっしゃいっちょやったるかぁ!」
 闇黒ギロチンを虚空から降らせ、サイコゆるスターに畏怖を感じさせ動きを止めていく。
「よっしゃあ、まだまだいくでー。って、寺美何しとんの?」
 ふと、パートナーのほうへ目線を向ければ、
「さぁ! ボクの踊りを見て下さぁ〜い☆」
 寺美は戦場の中で、ちょっと小高い丘になっている場所にわざわざ立って、特技の舞踏と誘惑のコンボによるオンステージを繰り広げていた。
「ちょぉ待てぇ! 今回随分張り切っとると思ったらなにやっとんねん!」
「はぅ! だって、マスコット的な可愛さでゆるスターに負けてられませんからぁ!」
 社にツッコまれながらも、寺美は踊り続けた。
 ただ。意外にもサイコゆるスター(♂)は、戦いをやめて呆けていたりもしたが。
 代わりに周囲のサイコゆるスター(♀)が、なんか凄い睨みながら熱線魔法を寺美に向けて集中砲火した。
「はぅ〜☆」という叫び声と共に吹っ飛ぶ寺美。
「いやそりゃそうやろがぁ! あんな障害物なんもないとこ立っとったら!」
 社は、傷ついた寺美のボケ加減にどう感情揺らせばいいのかわからず、とりあえず駆け寄る。
 寺美は、震える手で社の頬を触り、
「こ、これでボクの戦いは終わったですぅ……。社、ボクは、世界のマスコットになるため、最後まで、戦った……よ…………ガクッ」
 わざわざ「ガクッ」と口で言ってから、満足した笑みを浮かべて気絶した。
「ボケまで劇場版級になりやがって……」
 しんみりとした口調で呟く社だが、目は少し生暖かい感じだった。
 なんにせよ誘惑が解けたサイコゆるスター達は、隙だらけの社に襲いかかろうとしてくるが。
 それはシフとミネシア機のビームライフル射撃によって阻まれた。
「ミネシア。向かってくる相手は無視して大丈夫です。撃ち続けてください」
「うん、わかったよ。射撃は任せて! ネズミさん、一匹残らずブチ殺すよー! あっはははーッ!」
 感情が高ぶっている様子のミネシアに射撃を任せ、シフは回避行動に努めるつもりらしい。
 大きめの樹に身を隠し、時折逃げながらの銃撃ではあったが。なにぶんまだまだ数が多いゆえ、放たれ続けるビームは着実に敵を倒していく。
 そんなシフ機の近くでカロル・ネイ(かろる・ねい)もまた距離をとりながら、アシッドミストで数を減らす事を優先させている。
「うじゃうじゃと鬱陶しいわねえ」
 確かに数は減ってはいるものの、中にはミストをかいくぐってこちらに近づいて来る兵も、何匹か混じっていた。
 近距離で霧は自滅しかけないとして、カロルはブロードソードを抜き放ち、
「ビキニアーマーの騎士、カロル・ネイ参るっ!」
 宣言と共にチェインスマイトで斬り払っていく。とても個性的な衣装で。
 長丁場になるかと思うカロルだったが、そのまま五、六匹ほど斬り伏せたところで、残りの何匹かはなぜか森の奥へと走っていた。
「なに、諦めたの?」
「違うよ。あっちにおびきよせたんだ」
 と、入れ代わりに顔を見せたのは七尾 蒼也(ななお・そうや)
「エサつきのおもちゃ車でゆるスターを誘導したんだ。子供みたいな手だけど、本能がある動物には効果的なのも確かだから」
「ふぅん。皆いろいろ考えるわね」
 蒼也はカロルの感心の言葉を聞きながら、周囲の状況を確認していた。
 ここまででやっと四分の一程度は戦闘から排除、もしくは逃避させたものの。エリザベートの前にはまだ何十匹とサイコゆるスターは控えている。
(たぶん、彼女が近くに控えさせてる敵はエサで誘導しても無駄だろうし、どうするかな)
「巨大化しても、エリザベート校長は可愛いですね……。皆さん、私は可愛い人を攻撃することはできません。変わりにネズミ共の相手を引き受けましょう」「…………」
 そこへやってきたエッツェル・アザトース(えっつぇる・あざとーす)アーマード レッド(あーまーど・れっど)のふたり。
 到着早々エッツェルはサンダーブラスト、レッドはミサイルランチャー攻撃で次々とサイコゆるスターを叩いていく。
「雑魚は私達が引き受けます、今のうちにエリザベート校長をお願いします」
 エッツェルは言葉をかけた後に右から、レッドは無言のまま左から、
 木を盾に熱線魔法をかわしながら、周囲の木々ごと再度サンダーブラスト&ミサイルでガンガン群れを押していく。
 ふたりの範囲攻撃に、連中は徐々に倒れるか攻撃に転じるかの行動をとり始めた。
 それはどちらにしろエリザベートの前を護ることができなくなるということで。
「今です。さあ、急いで!」
 陣が割れたのを確認後、蒼也をはじめ多くの生徒達がこの機に前へ出た。
「ふぅ。お腹いっぱいですぅ」
 蒼也は悠然と構えているエリザベートに、挨拶代わりの光術で軽く目をくらませる。
(あまりやりすぎると、『お母さんをいじめないで』ってミーミルに怒られそうだな……)
 ふいに複雑な思いを抱き、同時に違和感もおぼえた。
(迎撃に魔法攻撃してくるかと思ったけど、どうしてあんなに余裕なんだ?)
 よぎる不安に、意外な形で答えは返ってくる。
「そこで止まれっ!」
 突然飛んできたのは誰かの魔道銃の弾丸。
 サイコゆるスターの熱線魔法に混じって生徒達の足下に着弾した。
 敵の攻撃だと誰もが理解できた。
 けれど、撃ったのはエリザベートではなく。
 彼女の前にいつの間にか姿を見せていた、生徒達によるものだった。