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リアクション
【Battle・2 判定勝ちでも勝ちは勝ち】
先程の戦闘の傷跡はすっかり元通りに復元され。
仮想のイルミンスールの森で次なる訓練が始まる。
○イコンチーム
蓬生 結(よもぎ・ゆい)とイハ・サジャラニルヴァータ(いは・さじゃらにるう゛ぁーた)のイーグリット、
イングリッド・ランフォード(いんぐりっど・らんふぉーど)とキャロライン・ランフォード(きゃろらいん・らんふぉーど)のコームラント、
鉄 玄丸(くろがね・くろまる)のコームラント、
そして天御柱生徒のイーグリットが二機。
○巨大化チーム
八神 氷夜(やがみ・ひょうや)、
アルツール・ライヘンベルガー(あるつーる・らいへんべるがー)と、そのパートナーのエヴァ・ブラッケ(えう゛ぁ・ぶらっけ)、シグルズ・ヴォルスング(しぐるず・う゛ぉるすんぐ)、ソロモン著 『レメゲトン』(そろもんちょ・れめげとん)達。
開始後、イングリッドは予想外の行動に出ていた。
彼女はキャロラインにコームラントを任せ、持ち込んだ小型飛空挺ヘリファルテでひとり飛び出し、ハンドガン片手に攻撃を行なっていた。
「さあて。どこまでできるかわからないが、やるだけやってみようか」
10メートル大の相手に、元のサイズのままで戦う戦法は危険極まりないが。
相手となっている前衛に出ていた氷夜は、まだ攻勢には出ていなかった。
「なるほどな。そのサイズならむしろ撹乱向きだろうな。でもそれを狙ってるとわかれば、対処の仕方はいくらでもあるぜ」
冷静に相手の目的を読み、デリンジャーや腕で目や喉、急所になりそうな場所を防御していく氷夜。時折飛んでくる狙撃に気を配ることも忘れないでいる。
「お姉ちゃん、だいじょうぶかなぁ。っといけない、キャロはキャロのやるべきことをやらなきゃぁ」
当の狙撃主キャロラインは、精神感応で繋がっていても不安が尽きない様子だった。
それでも隠れる場所を常に移動して、ふたりでの連携を継続させる。
しかしやはりひとり乗りでは出力が30%まで落ちているため、当たっても致命傷になりそうなダメージは与えられていなかった。
「よっしゃ、僕にも協力させてや!」
そこへ飛び出してきたのは玄丸。
彼は先程からビームキャノンを牽制で撃ち続けていたのだが、
「しゃあ! 一気にやってまうぞ、おらあああああ!」
徐々にトリガーハッピーな性格が出始め、もはやただひたすらに撃ち続ける状態になっていた。
「きゃああ! あ、あぶ、あぶな」「うわ、くっそ。ここまで撃つか普通!?」
「ちょ、ちょっと。お姉ちゃんは撃たないよう気をつけてくださいよぉ」
銃弾の嵐に慌てるキャロライン、氷夜。
それでも構わず乱射してる玄丸に、通信で一応注意しておくキャロライン。
「へーきやって、僕はそんなヘタちゃうから!」
確かに射撃の腕自体は悪くなかったため、なにげに味方へ誤射をすることはなく。
弾は確実に氷夜をとらえており、確実にダメージを負わせていっていた。
そうした攻防の傍らでは、シグルズが結&とイハと、天御柱生徒二機とやりあっていた。
「名乗らせていただこう。我が名はシグルズ。ヴォルスング一族のシグルズ!」
「俺は蓬生 結。天御柱学院“高等部生”です」「私はイハ・サジャラニルヴァータ。結のパートナーですわ」
「…………」「おう! オレっちは天御柱学院生にその人ありと言われた最強にして頭脳明晰容姿端麗な――(長くなったので以下省略)」
そんな彼らに混じり武者人形もその場で戦っている。これは巨大化チームの駒のひとつで、沈黙を保ったままの天御柱生徒とやりあっていた。
現在の戦況としては、
結たちがビームライフルで撃ってくれば、シグルズはそのつど木々に隠れては遠当てを繰り出していくという一進一退の状態。数で勝っているとはいえ、結たちもまだ相手の出方を探っていた。
が、状況は変化しつつあった。
それは少し離れた位置で控えているエヴァが、事前にギャザリングヘクスで強化しておいた魔力による光術で、イコンのカメラ潰しを行なっていることが原因である。
実際、イコンに搭乗する皆は視界をカメラだけに頼っているわけではない。
熱センサーや音声センサーを駆使しているからこそ、この状況下でもシグルズや武者人形と渡り合えているのだ。が、それでもピッカピッカピッカピッカしつこくやられてはさすがに苛立つ。
「チッ。このままじゃ無駄に時間稼がれて終わりだな、こうなったらオレっちの超絶的かつ天才的作戦でお前たちを完全無欠に一網打尽――(中略)――いくぞ、作戦Zだ!」
「…………作戦Z。ZはズルイのZ。すなわち、弱そうなほうを先にやる作戦、了解よ」
おしゃべり男と、ずっと無言だった操縦者からの通信を受けて、イハはそれを結に伝えようとした。
というより、結もいい加減じれていたのか、武器をビームサーベルに持ち替え斬り込もうとしていた。
これなら伝える必要もないように思えたが、
「お待ちください!」
イハはあることに気づき、作戦とは正反対にも等しい指示を叫んでいた。
結はかろうじて踏みとどまったものの、ほか二機はかまわずつっこんでいく。
対するエヴァは、自分の手前にアシッドミストによる強酸の霧を展開させていく。
「ふん、そんな霧なんてイコンの装甲の前では無駄、無意味、無謀! そもそもこの無敵なるオレっちのイーグリットは――(以下略)」
二機のイーグリットは巨大化したことで威力も倍増したミストに、装甲を徐々に腐食させられていきながらも、エヴァへと近距離でのビームライフルをぶっぱなした。
「痛っ!」
エヴァは装備していた耐光防護装甲のおかげで、ビーム攻撃を軽減できたはいたものの、さすがに距離を詰められていたぶん、衝撃は身体に伝わって膝をついてしまった。
「はははは! やはりこの最強イーグリットを操縦するオレっち達にかかれば――(略)」
「…………お前、いい加減五月蝿いわよ」
ふたりの機体に左右を挟まれ、絶対絶命のエヴァだったが、
「無敵だとか最強と言うのは、まず疑ってかかるべきよ」
彼女は不敵にそんな言葉を呟き、もう一度近距離でアシッドミストを展開させる。
「ふふん。いくら濃度を濃くしても、そう簡単にイコンの装甲は崩れな「っ、いや待て! マズイ!」
おしゃべり男が話す途中で、割って入った寡黙女の声。
彼女はようやく気づいた。腐食した部分が浄化や換気の機能にまで影響を与えていることに。
「動きを見ていれば、どこから空気が流れているかは大体わかるわ。だから後はその周辺を狙って霧を流し込めばいい」
「げっ、ごほ……くそ。不覚!」「……コホ、コホ、小癪な真似を!」
少しずつ内部に入り込んだアシッドミストは、操縦席にいるパイロット達にわずかずつ呼吸困難に陥らせていく。
「ふたりとも、はやく退避しろ!」
結の言葉を受けても、ふたりは思うように操縦桿が動かせず。
突進してきたシグルズの則天去私をよけること叶わなかった。
そのまま一気に森の奥へと押し込まれる二機のイーグリット。
するとそこには、
紙ドラゴンが二匹とカラスがいて。更にその後ろにはアルツールが控えていた。
「よし、今だ!」
アルツールの号令と共に、まず紙ドラゴンがブレスを放ち、カラスがつつく攻撃でイーグリットを怯ませる。
そこへ禁じられた言葉とギャザリングヘクスで強化しておいた魔力で、アルツールは最大威力のサンダーブラストを喰らわせた。
おしゃべり男も寡黙な女も、内部まで浸透してきたその雷撃に最後は悲鳴もあげられぬまま気絶した。
「戦では、一人で戦う勇者は役に立たん」
アルツールは最後にそれだけを言い残すと、勝ちに奢らずすぐさま空飛ぶ箒で移動しようとした。
「そう簡単には逃がさないですよ」「おふたりの仇、とらせてもらいますわ」
しかし、飛び立つ前に結とイハのイーグリットが斬り込んで来て。
ビームサーベルが目を見開いているアルツールを、両断せんばかりの勢いで振り下ろされた。
確実に形勢は逆転したかに思われたが、
「今更だが、我もここにいるのだよ」
突如、今まで魔術書の形態でアルツールの脇にいたレメゲトンが人間形態に戻り。
アルツールを突き飛ばしてサーベルを回避させ。しかもそこから雷術を繰り出し、イコンの足を一時的に止めた。
目の回るような連続技に、今度は結とイハが驚かされる。
「策というのは、だいたい二重三重に張られているものだ。こんな風にな」
フッ、と不敵に笑うレメトゲンの後ろから、エヴァとシグルドもこの場に合流して。
これで形勢再逆転の構図が訪れた。
「上等です、とことんまでやってやりましょう」「そうですわね」
だがそれでも結たちも諦めておらず、サーベルを構え直したところで、
『そこまで!』
アリサの声が轟いた。
そこでようやく十五分が経過していたことに、戦闘に集中していた彼らは気づいた。
『制限時間いっぱいだ。決着がつかなかったので、判定で決めさせてもらう』
『う〜ん。撃墜数としては、イコンのチームが負けてるよねぇ。それに、パートナーとの連携や罠に嵌める作戦とかが巨大化組のほうが若干勝ってたかなぁ。イコンのみんなも、頑張ってたとは思うけどねぇ』
エリザベートのそうした意見をふまえ、アリサは告げた。
『第二訓練は、巨大化チームの勝利!』
こうして、イコンチームは二連敗を喫した。
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