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リアクション
「おお! 美味い! これが伝説の焼きそばパンなのじゃな」
織田 信長(おだ・のぶなが)は桜葉 忍(さくらば・しのぶ)が用意した焼きそばパンを頬ばった。ただしそれは伝説の焼きそばパンではなく、多比良 幽那(たひら・ゆうな)が無料で配っていたマンドレイク焼きそばパンだった。
信長が風紀委員に追っかけられた後も、忍はなんとか頑張ったが、結局わずか50個では入手するのは困難だった。しかしそれでは信長は納得しまいと考えた結果がこうだった。
無料で怪しく感じた生徒は何人もいた。彼らに声をかけると簡単に数が集まった。試しに忍も1つ食べてみたが、伝説とまでは行かないものの十分に美味しかった。
「うん、美味い、美味い」
無邪気に食べている信長を見ると、あの短気な信長と同一人物とは思えなかった。
「忍よ、お前も食べるか?」
最後の1つを忍に差し出した。こんな優しさを知っているのは俺だけかもしれない。
「いいえ、どうぞ」
忍が遠慮すると、信長は「本当に良いのじゃな」とかぶりついた。
「いいか忍! 明日も伝説の焼きそばパンを目指すぞ!」
忍の肩がガクッと落ちた。
ルシオン・エトランシュ(るしおん・えとらんしゅ)は焼きそばバーガーと韓国風焼きそばパンを食べ比べていた。
「うん、どっちも美味いッスねぇ。田舎の妹たちにも食べさせてあげたいッス」
そんなルシオンの肩をトントンと叩く者がいた。ルシオンはビクッと震えると、ゆっくり顔を向ける。
「おいしそうだな」
ルシオンのマスター、四谷 大助(しや・だいすけ)だった。
「待ってたッス。さぁ、大さん、ここに座るッス」
大助に椅子を勧めると、自分が食べていたパンを前に出す。
「さぁ、美味しいッスよ」と無理矢理食べさせようとした。その手を大助はしっかり掴む。
「オレを放り込んだ後で、いろいろ食ってたってわけか」
「違うッス、アレもトレーニングの一環ッス。大助さんのことを考えて……」
「……言い訳はそれだけか? 残念だ。本当に」
「ちょ、大さん? 顔が怖いッスよ……ぎゃーーーーーーーーーッス!!」
ユイ・マルグリット(ゆい・まるぐりっと)は、焼きそばパンを口にした。もちろん伝説の焼きそばパンではなく、マンドレイク焼きそばパンだ。髪の毛は何箇所かハネて、胸のリボンは曲がっていた。
「やっぱり無理だったね」
アトマ・リグレット(あとま・りぐれっと)は、お弁当を分けるとユイに差し出した。
「ありがと。買うどころか、姿形すら見られなかった」
ユイが購買部にたどり着いた時には、伝説の焼きそばパンどころか、他のパンすらもほとんど売り切れていた。マンドレイク焼きそばパンがなければ、お昼抜きすら覚悟した。
「明日もあるんだし、元気出しなよ」
その言葉に、ユイは笑顔を取り戻した。
『この笑顔を守りたい』
アトマ・リグレット(あとま・りぐれっと)は心底そう思った。
「お兄ちゃーん」
ティエン・シア(てぃえん・しあ)は高柳 陣(たかやなぎ・じん)を見つけて呼びかけた。
「すまん。買えなかった」と謝る陣に、ティエンが袋を渡す。
「何だ?」と陣が開けると、ソースの香りが鼻をくすぐる。
「これ、伝説の焼きそばパンじゃねぇか。ティエン、お前もしかして……」
ティエンは両目をうるうるさせて首をふる。
「怒らないで、ね?」
陣は深呼吸をして、気を落ち着ける。
「怒りゃしないって。良いからどうしたんだこれ、言ってみろ」
「僕が逃げていったらね。大きいお兄さんと大きいお兄さんと同じくらいのお姉さんがいたの。で同じくらいのお姉さんがくれたの」
陣は良く分からなかったが、男2人女1人の3人組から貰ったらしい。がにわかには信じられない。
『伝説の焼きそばパンをくれちまうやつがいるのか?』
しかし現物を見たら、いるとしか思えない。
「名前は聞いたか?」
ティエンは首を振る。
「俺みたいな制服を着てたか?」
「着てた!」
もちろんそれだけではクモの糸ほどの手がかりにしかならない。
「お礼は言ったか?」
「言った!」
『それなら良いか』と陣はいくらか安堵する。
「よし、コーヒー牛乳とフルーツ牛乳、買ってきて食うか」
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