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先生、保健室に行っていいですか?

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先生、保健室に行っていいですか?
先生、保健室に行っていいですか? 先生、保健室に行っていいですか?

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CASE6 葦原明倫館の場合

 古き良き日本の文化を表現したような学園、葦原明倫館。
 ここでの保健室模様を観察してみよう。
 他の学園とは違い、畳張りで怪我人を迎える保健室にはゲイル・フォード(げいる・ふぉーど)
 忍びとして優秀な彼の保険医としての生活を見てる。
 そんな保健室へ一人の生徒が近付いていく。
「ベリルー、そんなに引っ張らなくても大丈夫だよー」
「うっさいこのチビ!手を切ったのなら先に言えよな!おかげでノートが血だらけになったじゃないか!!」
「そっちの心配!?それに痛みはそんなにないし、紙ってよく切れるんだなぁーって思って見てただけだもん」
「心配してほしいなら先に言えよチビ助!」
「僕チビじゃないもん!!それにベリルだって僕と変わらないじゃないか!!」
「俺はまだまだこれから伸びるんだよ!お前はもう無理だチービチービ!!」
 廊下をやかましいほどに歩いているのは鏡 氷雨(かがみ・ひさめ)ベリル・シンブル(べりる・しんぶる)だった。
 こちらに向かってきているなと嫌がおうにも分かるゲイルは二人が入ってくるのを待つ。
 現れたのは、先程から出てきた小さい、という単語がぴったりな少年たちだ。
 お互いをチビと反論しているが、とりあえず若干背丈のあるベリルは氷雨の手を掴んでゲイルに見せる。
「これ、掌切っちゃったんだ。消毒してくれ」
「大丈夫だよ別に何ともないもん!」
「良いから治療を受けろ!それともあれか?氷雨は消毒液も我慢できないようなお子様だったのか?」
「むうっ!?僕ガキじゃないもん!」
「だったら治療を受けろ!」
「むうぅーー!!」
 完全に意地の張り合い、子供のよくある喧嘩風景だ。
 だがゲイルは二人を止めようとしない、というが止め方が分からないと言っても良いだろうか。
 とりあえずは成り行き任せに事の流れに乗って見ようとする。
 何だかんだ言い争いながら、氷雨はゲイルの治療をしっかりと受けて、ベリルは治療が終わると安堵していた。
 帰る際も仲睦まじい姿が見られたが、決して止めようとはしなかった。
 その後、他の先生にその様子を見られてしまい結局二人ともお灸を据えられることとなる。

 その日の放課後、帰宅の途に就く生徒も出始めて生徒の数がまばらになっていく校舎の人知れず保健室に近づく影が一つ。
 音もなく近づいたそれは静かに保健室の扉を開く。
「すみませーん……誰かいますか?」
 そっと室内の様子見をしているのはミーナ・リンドバーグ(みーな・りんどばーぐ)である。
 しかし保健室には先程までいたゲイルが忽然と姿を消していた。
 机には飲みかけのお茶と、整理している最中の書類の束がおきっぱなしだった。
「あれ、誰もいないのかな〜?」
「……何用だ?」
「うひゃあっ!?びっびっくりさせないでください!」
 様子がおかしいと思うミーナの背後、突如彼女に向けて声が掛かる。
 いきなりのためにミーナは驚きのあまり声をあげて腰を抜かしてしまった。
 驚きつつ振り向けば、そこにはゲイルが手に何故かクナイを持って立っていた。
「すまん、怪しい気配でつい警戒をしてしまってな……」
「あうぅ、ひどいですよ〜……」
 一人で起き上がれなくなってしまったミーナを抱き上げて、とりあえずはと畳に座らせる。
「それで、要件は……?」
「あっはい……あの、女の子が女の子に恋するっていうのはおかしなことなのでしょうか?」
 治療を始めようと症状を尋ねたのだが、どうやらミーナは相談をしたいようである。
 それもまたちょっと特殊な恋愛事情のようで、答え方を考えなければならないパターンだ。
 人権の尊重、といった枠で考えるのであれば答えは様々だ。
 そしてゲイルもまた、そんな答え方をする。
「悪いことではない、むしろ普通……だろう」
「……そうですか、ありがとうございます。あの、好きな子を振り向かせる良い方法ってありますか?」
「そうだな……背後から音もなく近づき、武器片手に要求、というのはどうだ?」
「そうやると、成功するんですか?」
「そうだな……8割方は成功するはず」
 何だかちょっとおかしなことを答え始めるゲイルにミーナは真顔で受け止めてしまう。
 無論、そんなやり方が一般的ではない。
 告白というより脅迫となってしまう。
 だが誰も突っ込む者はいない。
 こうしていたいけな少女がまた一人、間違った知識で行動することになるのであった。

 翌日、ゲイルが仕事のために保健室には無人……のはずだった。
 勝手滴る何とやら、というように保健室にいるのはイランダ・テューダー(いらんだ・てゅーだー)よいこの絵本 『ももたろう』(よいこのえほん・ももたろう)だった。
 ももたろうは勝手に保健室に入っていいものかとおろおろしているが、イランダの方はすっかりその気になっていた。
「まずいですよぉ、勝手に保健室にいちゃあ」
「しょうがないじゃない、今日保険医が誰もいないんだから。私が今日は悩める子羊たちを導いてあげるのよ!!」
「そんなぁ〜」
「というわけだから、ももたろう。あなた何か相談をしなさい。そうねぇ、手っ取り早く恋愛相談が良いかな?」
「ふぇっ!?ぼ、ぼぼぼぼ、僕そういうの、分かりません!!」
 手始めにとパートナーに恋バナを振って見るが、ももたろうは全身真っ赤になってわたわたと動いてる。
 それだけでも面白いとイランダは感じているが、今はそんなことを求めているわけではない。
 保健室と言えば、色々と逸話が残る話がたくさん聞ける場所だ、という違った解釈を持っているようだ。
 そんなイランダ達がいる保健室に一組の生徒が訪れる。
「失礼します、すみませんが少し床を貸していただきたいのですが……」
「床!?何々、もしかして保健室でのあんな体験希望者!?もう大歓迎だよ!」
「……えっと、彼女を休ませたいのですが、一体何のことでしょうか?」
「え、何だ違うのか……つまんない」
「だ、駄目ですよ!ええっと、こちらへどうぞ!」
 長原 淳二(ながはら・じゅんじ)がパートナーのルル・フィーア(るる・ふぃーあ)の肩を持って訪れた。
 淳二の言葉を聞いて勘違いをしたイランダは興奮するが、彼らには全く把握できなかった。
 態度がころころ変わるイランダを何とか諌めつつ、、仕方なしにとルルを布団へと誘導するももたろう。
「どうかしましたの?イランダさん、何だか不機嫌そうに見えますが……?」
「すみませんです……」
「謝らなくて良い、それじゃあ俺は教室に帰るから。ルル、しっかり休むんだぞ」
 淳二はルルを寝かせると一足先に教室へと戻る。
 イランダの方は期待外れといった感じで不機嫌だった。
 そもそも、ピンクな展開は誰もいないという大前提がある限りでのみで、まず発生することはないということに彼女は気が付いていない。
 たった一組対応しただけで飽きてしまったような素振りを見せるイランダ。
 そんな暇を持て余す少女の下へ、近づく影があった。
「失礼します、あの……」
「ん?なぁに、休みたかったら勝手に休んでいいよ〜」
「相談があるのですが、よろしいでしょうか?」
「相談?……もちろん大丈夫だよ!ささっ!座って座って!」
 かなりどぎつい恰好をしているミゼ・モセダロァ(みぜ・もせだろぁ)を見てイランダは期待する。
 こんな恰好している位だから、きっと話はもうすごいだろうと。
 確かに凄いうと感じる、しかしそれはイランダの想像を超えることになる。
「実は……最近パートナーのつぐむ様が、私の体を‘弄って’下さらないんです」
「ふぅ〜ん、そうなんだ……って弄る?」
「えぇ、少し前まで二人っきりの時はとても楽しそうに私の体を‘弄んで下さった’のに、最近ご無沙汰でして……」
「ご、ご無沙汰……??」
「はい、それはもう人に言えないようなところまで色んな器具を使ってもうあんなことやそんなことを……。ですが最近は‘全く開発して下さらない’のです」
「か、開発……!?」
 ミゼの話しにイランダの顔は徐々に林檎化していく。
 それはももたろう、聞くつもりはなかったルルまでも伝染していた。
 だがミゼは止まらない、ここからは書くことさえできない直接的な表現で相談内容は過激さを増していた。
 保健室でそんなことが起こっているとは知らずに、パートナーの様子を見に来た十田島 つぐむ(とだじま・つぐむ)ガラン・ドゥロスト(がらん・どぅろすと)竹野夜 真珠(たけのや・しんじゅ)の三人。
「ミゼ、最近元気なかったからな。どうしたんだろうか?」
「問題なかろう、しかし主を心配させるのは頂けんが……」
「大丈夫ですよ、そんなに心配することはありませんってば」
 話題の彼女が保健室で飛んでもないことを話しているとはつゆ知らず、三人は保健室の前に着く。
 扉を開けようとしたつぐむはその時、中で話すミゼの声が聞こえた。
 盗み聞きはよくないと思いつつ耳を澄ませてみる。
 それはちょうどミゼがイランダ達に相談内容を話し始めたところだった。
 過激さを増す内容につぐむの顔色が青くなる。
 どうしたのだろうと見ているガランと真珠。
 二人の存在を忘れたようにつぐむは保健室へと勢い良く乱入した。
「ミゼ!お前いったい何を話しているんだ!?」
「つぐむ様……何故ここに?」
「じゃ、じゃあこの人がその相手……?!」
「違う違う!待ってくれ誤解だ!」
「……この鬼畜整備士」
「鬼畜!?だから違うんだ、ルル!ももたろう、君はそんな怯えた表情で離れないでくれ!」
 イランダ達はミゼの言葉を真に受けてしまっているせいか、つぐむの言葉に信憑性を感じられなかった。
 一方のミゼは自分の不満を聞かれたことに顔を赤らめて、もじもじしている。
「嫌ですわ、つぐむ様。盗み聞きなんて破廉恥な……」
「ミゼ!今すぐ誤解を解け!」
「誤解、ですか?」
「何を言うか主よ。ミゼの言うことは間違っていないだろうが」
「ガラン!頼む何とか……!」
「主は‘我にも’同じことをしているではないか」
「っておいこらぁ!?」
 ガランの登場で事態の収束を図れると期待したが、ガランはさらなる爆弾を投下。
 話を聞いた三人の脳裏にはミゼだけではなく、そこにガランの姿も加わることとなる。
 赤くなるどころか、青くなり始めるイランダ達は自然とつぐむから距離を取った。
「だから違うんだ!ただの整備の話をしているだけで……!」
「……つまりは調教師、というわけですか。この、変態!」
「誤解なんだ!まずは俺の話を……」
「そうです!つぐむちゃんには何の非もありません!!」
「真珠、お前はなんて……」
「つぐむちゃんがそういうの好きなら、私はいつでも大歓迎だし、何されても構わないっていつも思ってるから……」
 どうやっても言葉が届かない、つぐむは必死だった。
 だからこそ、真珠の存在は最後の切り札だった。
 そう、切り札である。
 つぐむに取ってとどめの一撃を、彼女はぶちかます。
 世界が終る、つぐむは一人そんな予感を感じた。

 翌日、十田島 つぐむは葦原明倫館にその名を轟かせることとなる。
 だがそれは蔑みの眼差しに満ちていた。
 何処を歩いても自分の味方はいないといった感じだ。
 そして朝からずっと彼は背筋をふるわせる視線に耐えなければならなくなった。
 その後、ミゼはきちんと謝罪したが後の祭り。
 真珠に至ってはいつでも待っていると、つぐむのキャラ固定がしっかりとされてしまう。
 残るガランは、75日もすれば噂など消えると具体的なアドバイスをつぐむに言う。
 どの道、つぐむに取ってしばらくは白い視線に耐えなければならない日々の始まりであった。