空京大学へ

天御柱学院

校長室

蒼空学園へ

東西対抗『逃亡なう』

リアクション公開中!

東西対抗『逃亡なう』

リアクション



□ 第4フェーズ □

【開けられた宝箱は9個。オニが十人追加されます】
【現在捕縛された人数:西;十九名、東:五名。新たに捕縛されたのはアニス・パラス、スノー・クライム。第四フェーズを開始します】


「ここへ来て十人追加とは、厳しいねぇ」
 物陰に潜んだまま今まで逃げ切ってきたレティシア・ブルーウォーター(れてぃしあ・ぶるーうぉーたー)が、配信されたメールを確認して眉根を寄せた。
「そうですね……後少し、逃げ切れるでしょうか」
 パートナーのミスティ・シューティス(みすてぃ・しゅーてぃす)が、不安そうに時計を見詰める。
 残り時間はそれほど多くない。このまま隠れ切れればいいのだが。
「おや、風向きが変わったようだねぇ」
 レティシア自身は隠れ身を使えるが、ミスティは特に役立つスキルを持っていない。極力気配を悟られないよう、風下を選んで移動する。植え込みから移動しようと、二人は周囲に気を配りながら立ち上がる。
 が。
「おや」
 運が悪いことに、立ち上がった瞬間、サングラスを掛けたロア・ドゥーエ(ろあ・どぅーえ)とそのパートナーの

レヴィシュタール・グランマイア(れびしゅたーる・ぐらんまいあ)の二人と目が合った。
 刹那の対峙。
 次の瞬間、レティシアとミスティの二人は、カッと目を見開いた。
 レティシアの鬼眼、ミスティの神の目にそれぞれ射竦められ、目を眩まされ、ロアとレヴィシュタールは一瞬足を止める。
 その隙に、レティシアとミスティはくるりと踵を返して走り出した。
 だがロアとレヴィシュタールはすぐに体勢を立て直すと、二人の後を追い始める。
「あー、くそ、もうちょっと近ければ吸精幻夜で体力奪えるんだけどな……」
「なら、私が」
 思うように追いつけなくて焦れるロアを、レヴィシュタールが制す。
 ス、とレヴィシュタールが手を伸ばすと、それに従うようにアシッドミストの煙がふわりと伸びていき、レティシアとミスティを包む。
「なっ……?」
 予想外の攻撃に、レティシアとミスティは慌てて霧を振り払おうとする。が、しかしジワジワと、確実に、強酸の霧が二人の体力を奪う。
「ルール違反じゃありませんかねぇ」
 レティシアがむくれた様子で抗議の声を上げる。が、ロアはお構いなしで距離を詰めてくる。
 そして、そのままミスティの腕を捕まえた。
 その時。
「こーらーッ!」
 甲高い声が響いた。と、思うと、先ほどまで鍵の配布を行っていたさくらが何処からともなく走ってくると、レヴィシュタールの手をぱしんと掴んだ。
「化学物質の散布、禁止!」
「ああ……これは、失礼した」
 さくらに怒られたレヴィシュタールは慌ててアシッドミストを引っ込める。
 が、ロアとレヴィシュタールがさくらに気を取られている隙に、レティシアはその場をそっと離れるのだった。

 ルイ・フリード(るい・ふりーど)は、快哉の声を上げていた。
「レッツ・ハンティング! さあ、行きますよ!」
 試練3の結果解き放たれる事となったルイは、待機時間のソワソワをぶつけるかのように、生き生きとした表情で参加者達を追いかけ始める。
 隆々と鍛えられた筋肉、浅黒い肌、2メートルオーバーの身長に、浮かべたイイ笑顔。ついでにオニの証のサングラス。
 恐い。
 正直恐い。
 残り少なくなってきた参加者達は、遠目にルイの姿を見付けると一目散に逃げていく。しかしその様子すらルイは楽しそうに眺め、はっはっはと笑いながら追い回す。実に生き生きとしている。
 しかし、その目立つ体躯の所為で参加者達に見つかるのも早い。そのため、なかなか思うように参加者を捕まえる事は出来ずにいた。
 と、そこへ。
「はい、はーい! ここにまとめて隠れてるよっ!」
 高い女の子の声が響き渡った。
 ルイがそちらの方を向くと、一応サングラスを掛けた茅野 菫(ちの・すみれ)が茂みの手前でぴょんぴょんと跳ねている。
「クッ、お前……!」
 茂みの中に潜んでいた紫月 唯斗(しづき・ゆいと)が、菫によくもという視線を向ける。が、菫の呼びかけに応じたルイがのっしのっしとやってくるのを見て、慌てて茂みから飛び出す。
「あっ、待って下さい唯斗兄さん!」
「ちょっ、ちょっと待て唯斗!」
 続けて、唯斗のパートナーのエクス・シュペルティア(えくす・しゅぺるてぃあ)紫月 睡蓮(しづき・すいれん)の二人も飛び出してきて、慌てて走り出す。
 ずっと西エリアに潜んでいたため、地形は完璧に把握している。
 パートナーである魔鎧、プラチナム・アイゼンシルト(ぷらちなむ・あいぜんしると)を纏った唯斗は軽い身のこなしで西エリアを駆け抜けていく。
 しかし。
「いやぁー!」
 唯斗の後を付いて走っていた睡蓮とエクスが、ルイに高々と抱えられていた。
 丁度、その時。


【只今をもって、ゲームを終了します!参加者は本部前に集合して下さい】

 一斉メールが、ゲームの終了を告げた。