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夢は≪猫耳メイドの機晶姫≫でしょう!?

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夢は≪猫耳メイドの機晶姫≫でしょう!?

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第七章 その足を止めろ!

「作戦を説明する」
 ≪西の豹族≫を捕まえてコバルトブルーの毛を手に入れるため、白砂 司(しらすな・つかさ)の指示で作戦がたてられた。
「エリセルはコースを囲むように網を張ってくれ。それまでの時間稼ぎは残りの者で行う。交代で対象を追いかける。決して網の外へ逃がすなよ」
 司が皆に確認しながら走る面子を説明した。
「行くぞ!」
 ――作戦が開始された。

 無限 大吾(むげん・だいご)とメイド服の西表 アリカ(いりおもて・ありか)は数メートル先に見えるコバルトブルーの毛が美しい≪西の豹族≫を見失わないように、荒れ放題の木々の間を駆ける。
「俺とアリカで正面から追いかける。ショウさんはサクラコさんと脇を抑えてくれ」
「了解したぜ」
 葉月 ショウ(はづき・しょう)は宮殿用飛行翼で器用に天高く成長した樹の間を縫って追いかける。
 先のほうで≪西の豹族≫が足を止めてあくびをしていた。
「完全におちょっくってますね」
「そうだな。でも、ヘタに焦らせて妙な行動されるよりこれくらいがいいのかもな」
 むっとしているサクラコ・カーディ(さくらこ・かーでぃ)にショウが落ち着くように言った。
 ふと、サクラコが思い出したように質問した。
「あれ、ショウくん。パートナーの方はどうしたんですか? さっき皆で集まった時に見なかったけど……」
「リタはどっかで隠れて隙をうかがっている……らしい」
「はぁ、そうですか」
 四人は≪西の豹族≫に気づかれないようにコースを誘導する。
 
 ある程度して草木の陰から司が現れ、交代が指示される。
「ふぅ、疲れたぜ」
「そうですね。以外と体力を使ってますね」
「お疲れ」
 足を止めたショウとサクラコに司が労いの言葉をかける。
「後は俺達に任せておけ!」
 すると、司達の真上をグラキエス・エンドロア(ぐらきえす・えんどろあ)が枝を蹴って、通り過ぎていった。
 その後ろ姿を見送ってサクラコが悔しそうに地団駄を踏んだ。
「やっぱり、正々堂々と勝負したかったです!」
「まぁ、落ち着けサクラコ。今回は戦うことではなくて捕まえることに意味があるんだ。後はグラキエス達に任せて……」
 司がサクラコを納得させようとしていると、アリカの叫び声が聞こえてきた。
 するとショウは周囲に大吾とアリカがいないことに気づく。
「そういや、アリカ達が戻ってなかったな」
「大丈夫ですかね……?」
「……」
 司は作戦がうまくいくか心配になってきた。

「アリカ。後は他のやつに任せて、俺達も休むぞ」
「うん」
 大吾はアリカに一声かけて速度を落とそうとした。
 その時、前を走る≪西の豹族≫が急に横にステップを踏み、開けた視界から鞭のようにしなる蔦が物凄い勢いで向かってきた!!
「なっ!?」
 大吾は慌ててステップを踏んだ。耳元を風を斬る音。
 間一髪回避した大吾が安堵したのも、つかの間、背後からアリカが叫ぶ。
「ちょ、ボクは急には止まれないんだぁ!!」
「へ?」
 物凄い勢いでアリカが大吾に激突した。
 二人はそのままの一緒に転がった。
 枝をへし折り、緑の葉を撒き散らし、どこまで行くのかと思われた二人は唐突に何かに掴まれ止まった。
 目を開け、確認すると大吾とアリカの身体には白い糸が絡みついていた。
「あれ、なにこれ?」
「それは私が用意した蜘蛛の巣ですよ。なかなか取れなくて大変でしょう?」
 戸惑うアリカにエリセル・アトラナート(えりせる・あとらなーと)が樹海のどこかから答えた。
 どうやら、この糸によって止められたらしい。
 確かに動こうとしてもちっとも外れない。これにひっかれば≪西の豹族≫の足も抑えられるはずだ。
「って、それはいいから外してくれ!」
「すいませんが、私はみなさんのために一刻も早く網を張らなくてはいけません。ですので、大変申し訳ありませんが……」
「ちょ、待って……」
 大吾の呼びかけにエリセルが答えることはなく、すでに気配が消えていた。
 その時、声がした。
「あの……すいません」
「……リタさん?」
「そうです」
 大吾の問いに声の主はリタ・アルジェント(りた・あるじぇんと)だと肯定した。その声はどこか泣きそうだった。
 話によると、リタは木の格好にコスプレして≪西の豹族≫がやってくるのを待ちぶせしていたらしい。
 そして、ようやくやってきた≪西の豹族≫を捕まえるべく怪植物のツタを放ったがあっさり避けられてしまった。それが先ほど大吾を襲ったものの正体だった。
 リタは姿は見せず、何度も謝っていた。
「うん。まぁ、あっ……」
 すると大吾とアリカの前に≪西の豹族≫が降り立った。
 大吾とアリカが動けないとわかると≪西の豹族≫はごろりと仰向けになり、からかってきた。
「こいつ馬鹿にしやがって……このっ」
「ちょっと大吾、あんまり動かないで」
「わ、悪い!」
「あんまり、動くと……服が乱れるから……」
 蜘蛛の糸に絡まれた大吾が動くと、アリカが苦しそうにしながら頬を染めていた。
 妙な沈黙が流れた。
 そこへベルテハイト・ブルートシュタイン(べるてはいと・ぶるーとしゅたいん)の声が響く。
「いまだ!」
 瞬間、≪西の豹族≫が寝転がっていた地面が氷術によってぬかるみになった。
 突然の出来事に驚きながら、≪西の豹族≫が逃げ出そうとするが、ぬかるみに足を取られ、すぐには動けない。
 そこへ≪西の豹族≫を捕まえるべく、グラキエスと廿日 千結(はつか・ちゆ)が空中から一直線に向かってくる。
「もらったぁぁぁ!」
「こっちだってぇ〜〜」
 樹の陰から≪西の豹族≫に向かっていくグラキエスを見てベルテハイトは勝利を確信していた。だが、グラキエスの腰に手を伸ばすエルデネスト・ヴァッサゴー(えるでねすと・う゛ぁっさごー)を発見して慌てて飛び出した。
「エルデネスト! グラキエスに気安く触るな! 」
 ベルテハイトはエルデネスト共々グラキエスに飛びついた。
 瞬間、グラキエスの腰の袋から辺り一面に【しびれ粉】が飛び散った。
「ん、なんだ、コレ、しび、レて……」
 千結は間一髪箒を止めて助かったが、大吾とアリカは≪西の豹族≫と一緒にしびれ粉を浴びていた。
 ≪西の豹族≫はその間に体制を立て直し、木々の間を走って行った。
「あ、逃げちゃう。追いかけますよ!」
 追いついたリアトリス・ウィリアムズ(りあとりす・うぃりあむず)が一目散に追いかけた。
「まちなさぁぁい!」
「お前ら、重いってのっ……くっそ、逃がすかよ!」
「あ、待ッテ……」
 続いて千結とグラキエスは大吾達を無視して≪西の豹族≫を追いかけた。
「エルデネスト! 私達も追うぞ!」
 その後をベルテハイトとエルデネストも追っていく。
「たすけ、テ……」
 大吾の助けを呼ぶ声も虚しく沈黙が訪れた。
 すると、すぐ横で【しびれ粉】をくらったリタが、目を「(×_×)」にして倒れた。
「はぅぅ……」
 リタの格好は葉も生えていない茶色の樹の着ぐるみから、顔だけ出した何とも不思議な恰好だった。
 気絶して喋らないリタ。
「……」
「……」
 そして頬を赤くして何を話したらいいかわからず気まずい沈黙が流れる大吾とアリカは、助けがくるまでそのまま揉みくちゃの状態でいた。