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水着デートは刺激的?

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水着デートは刺激的?

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 流れるプールに行けばうなぎが、波のプールに行けばクラーケンが遊びに来た人たちの邪魔をしている。それを見たソア・ウェンボリス(そあ・うぇんぼりす)雪国 ベア(ゆきぐに・べあ)は顔を見合わせた。
「ベア! 大変です! 遊んでる場合じゃないですよ!」
「いや、中には楽しんでる人もいるし、アトラクションかなんかじゃねーのか?」
「絶対違いますよっ! 行きましょうベア!」
「チッ、しょうがねーなぁ」
 ベアは渋々……と見せかけて実は少し楽しそうにソアの後についていったのだった。


 ソアたちは途中、波のプールでクラーケンと対峙していた百日紅 火焔(さるすべり・かえん)陽炎 橙歌(かげろう・とうか)を引き連れて、タノベさんの事務所の前までやってきた。扉を開けようとしたその時、背後から声を掛けられた。
「あれ? みんなもタノベさんのところに用事?」
 遊びに来ていたカレン・クレスティア(かれん・くれすてぃあ)だ。その後ろではジュレール・リーヴェンディ(じゅれーる・りーべんでぃ)が頭をぺこりと下げた。
「はい! うなぎとかクラーケンが出没してますから、タノベさんなら何か知ってるかと思いまして」
「我らも一緒だ」
 ソアの言葉にジュレールが答えた。
「じゃあ、一緒に行きますか」
 火焔はそういうと、扉を開け中へと入っていったのだった。
 みんなが通されたのは事務所のタノベさんの部屋だった。
 ソファを勧められ、座るとすぐに秘書から冷たい飲み物が出された。それからソアやカレンから事情を聞くとタノベさんが口を開く。
「助かります……。先ほども流れるプールを止めてうなぎをすべて取ってくださるという誠治さんの申し出もありましたし。犯人を捕まえてくださるのでしたら協力を惜しみません。ですが……ワタクシにも犯人までは……。昨日まではこんなものたちはいなかったことは確かなのですが……」
「役に立たず……ですの」
 タノベさんに痛恨の一撃を与えた橙歌の口を火焔が慌ててふさぐ。
 苦笑いしながら、今度はソアが口を開いた。
「それじゃあ、従業員さんとかに聞き込みをしても良いですか?」
「もちろんです。聞き込みに協力するようにみんなには伝えておきますからよろしくお願いします」
「はいっ!」
 タノベさんの言葉にみんなで頷く。
 こうして、手分けして聞き込み開始となった。ソアとベアは近隣の住民に、ジュレールと橙歌は従業員に、カレンと火焔は生き物の出所を調べに、それぞれ走り出した。


 日没。
 陽が落ちると、少しだが暑さが和らぐ。
 みんなで目撃情報などを持ち寄り、いったんテーマパークの入口に集合していた。口火を切ったのはソアだ。
「色々聞いて回ったんですが、情報はいっぱい集まりました。なんだかお粗末極まりないです。住民の話によると昨夜遅く大型のトラックがテーマパークをうろうろしていたそうです。トラックはちょうど空京にあるホイップさんが住んでいる宿屋の方角へ向かったそうです」
 ソアとベアの集めた情報を聞くと、今度はジュレールが発言した。
「昨夜の警備員の話によると、仕事の帰りにトラックの近くを通ったら小太りなおやじが気持ち悪い笑みを浮かべていたと言っていた。街頭に照らされてさらに気持ち悪さがアップだったという」
 そんなジュレールの言葉を聞き、火焔と橙歌以外は一瞬固まった。
(……なんか思い当たる人物がいるような、いないような……)
 思う事はみんな一緒のようだ。
 そして最後に話すのはカレン。
「ネットとかでこの生き物を取り扱っているところがないか調べたら、ヒットしたよ! 『ファラオと白衣の研究所』ってところで貸出してた!」
「……」
 探偵たち以外はカレンの言葉を聞き、だいたいの察しはついたようで、顔を見合わせる。
「なぁ、なんか思い当たる場所が一か所あるんだが……行ってみるか?」
 ソア、カレン、ジュレールはベアの言葉にいやいやだが、頷いたのだった。


 到着したのは、とある元薬屋の前。ここの主はもうここに住んでいないのだが、未だに次のテナントが入らないので、薬屋のお店がそのままになっているのだ。
 誰もいないはずのお店になぜか明かりがともっている。壁に耳を当て、聞き耳を立てると中からごそごそと人のいる音が聞こえてきた。
 ソアとカレンが頷き合うと、2人で合図をし、一斉にお店の中になだれ込んだ。
「だ、誰だ!?」
「大人しくしてな!」
 抵抗しようとするおやじをベアがロープでぐるぐる巻きにしてしまった。
 そして、顔をよく見る……みなの心の中にはやはりという言葉が浮かんでいた。
「元薬屋で元ティセラ配下の変態ドM親父……いい加減更生して昔みたく真面目に働けよ……」
 そう、そこにいたのはなんと良い人のふりをして潜伏し、村に火まで放った変態おやじシャガ・コチョウだった。
 ややあってからカレンが口を開く。
「で、なんでこんなことしたの?」
「……誰が言うか!」
 おやじはそっぽを向いてしまった。見かねてベアが橙歌の方へと向く。
「橙歌ー。こいつちょっと罵ってくれ。橙歌の罵りなら効きそうだからな」
「絶対お断り……ですの。こういう輩はそれが心地いい……ですの。そんな快楽を与えてやる義理はねぇ……ですの」
 橙歌は冷たい眼差しでおやじを見下した。が、おやじは身もだえし、恍惚の表情を浮かべていた。この場にいたおやじ以外の人はあまりの気持ち悪さに鳥肌が立った。
「ああ……凍てつく眼差し最高……! げふんげふん……良いだろう話してやる……ティセラ様に……ティセラ様に完全に振られたからその腹いせにリア充どもを苦しめたかったんだ!」
 シャガの言葉を聞いて、みんな無言でシャガをテーマパークへと運び、プールの掃除を言いつけたのだった。
 掃除が終わった後、シャガの姿はどこにもなかったという。