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飛空艇なう

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飛空艇なう

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カスタム祭だぜ



「ってことで、カスタム案を出してもらおうか。自己紹介と一緒にな」
 ドクがそう言うと、まずは最近ナナ・マキャフリーと結婚したルース・マキャフリー(るーす・まきゃふりー)が手を上げた。
「とりあえず、ドリルが男のロマンと言うのは同意です。近接武器が駄目ならドリルで射撃武器を作ればいいんですよ!! ドリルが付いたロケットで、先端のドリルで装甲に穴をあけてから敵内部で爆発するとかすればOKのはずです」
 するとドクは、
「んー、飛空艇用の衝角(ラム)はあるが、S@MPの飛空艇は飛行機型だから向かないな。ドリルミサイルも無理ではないが難しいだろう。一応試作品リストの中に入れとくがな」
 と答える。
「頼みますよドク。ドリルはロマンですから」
「うむ」
 ドクはカイゼル髭をしごきながら鷹揚に頷いた。
「お次は俺だな。朝霧 垂(あさぎり・しづり)。S@MPの楽団員だ。取り付けたいものは、他にも考えている奴はいると思うが、「全方位大型スピーカー」で、さらにS@MPのメンバーの機体にも連動したスピーカーを取り付け、『移動式反響装置』として使えないか試作してほしいぜ」
 と言った。すると
「そらなら、ソニックブラスターを是非とも搭載して欲しいですぅ。このために開発して貰ったようなものですからぁ。普段は大型スピーカーとして使用出来てぇ、戦闘時は音を利用した音波兵器としても使用可能なんですぅ」
 と朝野 未那(あさの・みな)が言う。
「ふむ。確かに既存のソニックブラスターを搭載すれば開発コストも抑えられるな。他のS@MPの機体にもソニックブラスターを装備すればいいのではないかな? とりあえず演習に出るS@MPの機体のデータを弄ってソニックブラスターを装備させておこう」
 ドクはそう言って次の提案を促す。
「『龍の咆哮』をマイクを通して使用し、飛空艇及びS@MP機のスピーカーを通した場合どのくらいの距離まで音(歌)が届くのか、すなわちS@MPの歌の効果範囲の実験を行いたい」
 垂がそう言うとドクは、
「ソニックブラスターの射程と同じだけの効果が期待できる。ちなみに連動スピーカーにする場合にはタイムラグの計算が必要になるので、特別なコンピュータを取り付けないとならんな。飛空艇に」
 と答えた。
夜霧 朔(よぎり・さく)です。『龍の咆哮』をソニックブラスターで増幅した場合、それはソニックブラスターの効果範囲全体に効果を及ぼすと考えていいのでしょうか?」
「いいと思うぞ。そうでなくても『龍の咆哮』は広い範囲に届くからな。ソニックブラスターが多少射程を伸ばす程度だ」
 朔の質問にドクはそう答える。
「まあ、まとめるとソニックブラスターを全方位に届くように搭載しようということだな。大丈夫だろうか、ドク?」
「大丈夫だ」
 垂の言葉にドクが保証をする。
朝野 未沙(あさの・みさ)だよ! ステージとイコン搭載スペースの換装式にするんだよね。換装って言っても、機材の乗せ代えで行うのかな? それとも甲板ごと交換?」
「甲板ごと交換になるな。ステージ用カートリッジとイコン搭載用カートリッジに分けて丸々交換することになるだろうな」
 ドクが答える。
「ふーん。でもさ、艦橋の上をステージに改造しちゃって、甲板にイコン搭載&修理スペース作ったらダメなのかな? 艦橋の上をステージにすれば、甲板を客席代わりにも使えていいんじゃないかなーって思うんだけど」
「ふむう……それは難しいのう。艦橋も狭いので、そんなスペースはないだろうな」
「そっかー。あ、朝野 未羅(あさの・みら)なの。ミサイルポッドを取り付けるのー。動きの重い機体は格闘能力が低いの。それを補うにはロックしてしまえば自動で追いかけていくミサイルが都合良いの。船体横に両サイド取り付けたら良いと思うの。使わない時は船体の中に隠しておくの。使う時に装甲がスライドして中から出てくるの。ミサイルポッドは船内からの操作で向きを変えられるようにしておくと使い易いと思うの」
 未羅の意見にドクは頷く。
「もっともだな。それは可能だから、検討リストに入れておこう、と……武器スロットは現状では2個消費したことになるな」
「艦橋の両サイドに配置したらどうでしょうかぁ? その位置ならぁ、ステージ使用時はスピーカーとしてぇ、戦闘時は音響兵器として使えると思いますぅ」
 未那がそういうと、
「ん……それはいい案だな。それなら武器スロットを消費せずに取り付けられる」
 ドクはそう言って未那の頭をなでた。
「くすぐったいですぅ〜」
 未那は猫のように目を細める。
「教導団中尉、ローザマリア・クライツァール(ろーざまりあ・くらいつぁーる)です。あくまでイコン運般の母艦に使用するのであれば大砲なんかは寧ろ無用の長物になりかねない恐れがあるので思い切って自艦防衛用の中近距離防衛に特化した火器で兵装を固める事を提案します。具体的にはS−01の20ミリレーザーバルカンやSAMのような艦対空ミサイルが現実的と思われます」
 ローザマリアの言葉は的確なものだった。ドクはそれに頷いて言葉を返す。
「ふむ。S−01の20ミリレーザーバルカンは採用だな。それから、先ほどのミサイルポッドの案は艦対空ミサイルに変更しておこう」
フレイ・アスク(ふれい・あすく)です。ヴリトラ砲とかどうでしょう?」
アポロン・サン(あぽろん・さん)です。コームラント用の大型ビームとかはどうでしょう?」
 二人の質問に、ローザマリアは
「あなたたちは大艦巨砲主義なの? まあ、確かに装填に時間がかかる大砲よりはエネルギー兵器のほうがいいでしょうけど……」
 としかめっ面をする。
「まあ、既存の射撃武器なら特殊な兵器を除いて概ね搭載可能だ。が、やはり大砲は重くなるから後回しだな」
「でしょうね。あと、飛空艇なので着水時を狙われることを想定し、ガネットの標準装備であるガネットトーピドーの搭載を提案するわ」
 ドクの言葉にローザマリアは頷きつつさらなる兵装の提案をする。
「悪くない。これで武器スロット3個消費だ」
「あの、光学兵器は天学のお家芸ですよね? ならこういうのはどうでしょう」
 湯上 凶司(ゆがみ・きょうじ)がこっそりと手を挙げる。
 彼の言うには、艦載型のビームシールドで、非戦闘時はそのビームの膜に映像を写すというものだった。
「有事は防御、非戦闘時はスクリーンとして演出にも使えるような……」
 その言葉にドクは顔をしかめて
「うーむ。ビームシールドは無理だの」
「そうですか……」
 凶司は残念そうに頭を振る。
天城 一輝(あまぎ・いっき)だ。飛行艇の内部を一望出来るコーナーに台座を作る。この台座は、中心に鉄の軸を付ける事で多目的に使えるようにする」
「ふむ。面白いな。先を続けてくれ」
「さらに台座を貫通する穴を開け、そこから電線を通す。テレビカメラやスポットライトの電源として使う電線で、台座の下にバッテリーを設置すれば停電の時にも使えるという寸法だ。台座から延びる鉄の軸は、カメラの固定の他にも銃座としても使える。俺の小型飛空艇にもあるタイプで、さらに電動式にすれば長期戦でも使える」
「なるほど……しかしな……」
「出来ればこの台座は、外にも射撃出来るように窓際に設置したい。敵が艇内に侵入した際にも対処出来るので、この「台座」は、どちらに換装した時にも活躍する筈だ。以上。実際の改造工事には俺も参加する」
「うーむ。台座か……面白いが、しかしスペースが足りんなあ。外に銃座だけを取り付ける方向にして、それに20ミリレーザーバルカンを取り付けるというのはどうかね?」
「カメラやスポットライトのスペースとしても使いたいのだが……」
「ふむ。それなら常設ではなく外付けのオプションとしてなら可能だろう。飛空艇は母艦であるからにして、母艦内部に敵が侵入してくるようではその戦いはすでに負けたも同じだ。よって、艦内部の自衛スペースは必要ないだろう」
「そうか……」
「気にしてはダメですわ。ドクの言うことももっともです。ああ、私はローザ・セントレス(ろーざ・せんとれす)、一輝のパートナーのヴァルキリーですわ。実際のカスタムには私も参加致します」
「了解した。三トン半・一杯だな?」
「はい」
 ローザが笑顔で答えると、ドクは次を促した。
富永 佐那(とみなが・さな)です。スモークディスチャージャーと敵ミサイルの赤外線装置を惑わすためのフレアの搭載を提案します。これなら武器スロットを埋めずに装備可能なはずです」
「そうですね。でもシャナさん、他にも狙いあるでしょ?」
 アポロンが尋ねると、佐那は笑って答える。
「当然。両方共舞台演出に使えるからね。スモークを炊くというのはステージ演出としてはごくあたりまえだし、フレアは綺麗な光を放出するという意味では演出装置としても最適だと思うわ。あとレーザーポインタを複数設置し、ステージのレーザー演出も行いたいわね。出力を上げたレーザーをミサイルの弾頭部に照射することで狙いを狂わせられるのではないかとも思うし」
 佐那の言葉にドクは「OK」と答える。
「それなら、武装ではないからパーツスロットに搭載できるな。いいアイデアだ。次は誰だ?」
天貴 彩羽(あまむち・あやは)よ。まず、直衛機は必須よね」
「うむ。必須だな。S@MPのメンバーに歌を歌いつつ飛空艇の直衛をしてもらえればと思ってはいるが……」
「そこらへんは演習の時に考えましょう」
 フレイがそう言って続きを促す。
「魔道レーダー、これは迎撃機早期出撃用ね。それから迷彩塗装、発見率低下のために。次に仏斗羽素、これは緊急回避用。そして、ビームシールド、対射撃防御強化に。んで、エネルギーシールド……これは貴重な第二世代機を分解する価値を認められるかが問題ね。最後にガトリングガン。ミサイル迎撃用だけど……素直にフレアやチャフやECMを積んだほうが良さそうね」
「ふむ。方向性はわかった。魔道レーダーの代わりに何らかの強化したレーダーを積むのも可能だろうし、迷彩塗装は戦闘に出る前に準備すればいいだろう。仏斗羽素とビームシールドとエネルギーシールドは、正直難しいな。ガトリングガンに関しては先ほどフレアを搭載するという意見が出ていたし、チャフとフレアとECMとECCMは標準搭載としておこう。これでどうだ?」
「ええ……だいたい私の言いたいことは理解していてくれているようね。イコンのパーツを使わなくても代用できるなら、それでもいいと思うわ」
 彩羽はそう答えると「お次の人、どうぞ」と言った。
 そんな一連のやり取りを、本の形のまま彩羽に抱かれたアルハズラット著 『アル・アジフ』(あるはずらっとちょ・あるあじふ)が黙って見ていた。
十七夜 リオ(かなき・りお)だよ。イコン搭載スペースとステージとの換装が出来る様にするんだっけ? 武装のカスタマイズも行うらしいけど、換装する際にいちいち武装も取り外すような事になったら手間になるから、換装には影響のない場所に武装を取り付ける様にしたいね」
「うむ。後部デッキを換装するので、共通の武装は両方に取り付けたままカートリッジを交換するようにすればいいだろうな」
「ならいいんだけど。それと、イコン搭載スペースの方も、艦内での修理・補給などの整備を行う事を考えたら、移動中に資材やイコンが動いたりしないように固定したり、整備を行いやすい様に内装や設備を搭載したほうがいいんじゃないかな?」
 リオの言葉にドクは
「それは考えている。が、念のためメモをしておこう。忘れると困る」
 と真面目な顔で答えた。
「おいお〜い。忘れちゃダメでしょ忘れちゃ」
 とリオが突っ込むと、ドクは「冗談だ」と返した。
「さてさて、みなさんそろそろお茶にしませんか?」
 堂島 結(どうじま・ゆい)が2リットルヤカンに入れた麦茶を持ってきてそう言う。
 一応最初にも麦茶とコップとお菓子は提供されていたのだが、そろそろ尽きてしまいそうになっていたのだ。
「おお、ありがたい。そこにおいてくれ」
 ドクが喜んでそれに応じる。
「ついでにぶどうジュースも持ってきたよ。手摘みでワインを作るときに余ったジュースだから、新鮮でおいしいよ」
 フレイがそう言って瓶に入った紫色の液体を持ってくる。
「あとアップルジュースもあるよ」
 アポロンが琥珀色の液体の入ったペットボトルを持ってくる。
「ついでにお菓子のおかわりも持って来ました」
 朝野三姉妹がお菓子をもってやってくる。
 そうして一服入れることになったのだった。