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第三章 昼とご飯

「おかえり、疲れたろ。そこら辺適当に使ってゆっくり昼にしてくれ」
 調味料を買いに行っていたあゆむ達が噴水広場よりもひらけた北側広場に戻ると、そこではクロイス・シド(くろいす・しど)ルウネ・シド(るうね・しど)によってテーブルやイスが並べられていた。
 あゆむ達は荷物を置くと、クロイスに勧められてイスに座った。
 そこへメイド服姿のケイ・フリグ(けい・ふりぐ)があゆむの所へやってくる。
「お帰りなさいませ〜、ご主人様。昼食はこちらの特製オムライスになりま〜す♪」
 ケイがあゆむの前に置いた皿には、可愛らしい猫の顔が描かれていたオムライスが乗せられていた。
 あゆむはぼんやりがケイのことをを見つめる。
「どうかしたの?」
「あ、その。あの……なんだか、メイドさんがメイドさんに迎えられるのってなんだか変な気分ですよね」
 あゆむは頬を染めて苦笑いを浮かべていた。
 するとミスティ・シューティス(みすてぃ・しゅーてぃす)が飲み物をあゆむに差し出す。
「お疲れさま。これ、喫茶麗茶亭オーナー、レティの『おすすめ水出しアイスコーヒー』よ」
 あゆむの前には飲み物だけでなく、グラスにまでこだわりを感じるアイスコーヒーが置かれていた。
 氷の透明感がアイスコーヒーの黒を引き立て、グラスの中でを魅惑的な幻想世界を描いていた。
「ありがとうございます。……あれ? レティシアさんはどちらに?」
「え、えっと、レティは今、集中しすぎちゃって……」
 あゆむが感謝をしようとアイスコーヒーを作った本人であるレティシア・ブルーウォーター(れてぃしあ・ぶるーうぉーたー)の場所をミスティに尋ねると、彼女は苦笑いを浮かべて後方を指さした。
 そこでは味噌汁の味見をするレティシアの姿があった。
「……ちょっと違いますかね」
 レティシアは親子丼の時に振る舞う味噌汁を最高のものにしようと、分量を研究し、味見を繰り返しているのだった。
 そんなレティシアの姿を見てエイボン著 『エイボンの書』(えいぼんちょ・えいぼんのしょ)が、涼介・フォレスト(りょうすけ・ふぉれすと)に問いかけた。
「兄さま、わたくし達もそろそろお米を炊く準備をした方がいいでしょうか?」
「そうだな。実際に炊くのはもう少し先でもいいだろうが、そろそろ下準備は始めたほうがいいかもな」
「わかりました」
 『エイボンの書』は昼ご飯を食べると、米炊きの準備を始めることにした。


「なんだあれ、キャンプファイヤーでもするのか?」
 広場の中で積み上げられていく大木を見た直江津 零時(なおえつ・れいじ)は、騨が働いている喫茶店から戻ってきた正光・シュクレール(まさみつ・しゅくれーる)に尋ねる。
「違うよ。あれで大人数用の親子丼を作る鍋を煮るんだってさ」
「ふ〜ん」
 正光達が椅子に腰を落ち着かせながら眺めていると、作業をしていて男達から手助けを頼まれた。
「ゼロ、行くよ」
「わかった。食後の運動にちょうどいいな」
 正光と零時は椅子か立ち上がると、作業の手伝いに行こうとする。
 すると、同じテーブルに座っていた正光の婚約者アリア・シュクレール(ありあ・しゅくれーる)が声援を送った。
「おにーちゃん、頑張ってね」
「うん。アリアは待ってて、すぐに戻ってくるから」
「うん」
 正光は頬を赤くすると、手を振りながら作業をしている広場中央へと向かった。
 その様子を零時はにやけ顔で見つめる。
「やれやれ、熱々だな」
「わかりました〜。零時くんは羨ましいんだよねぇ?」
「!?」
 零時の後ろにいつの間にかチャティー・シュクレール(ちゃてぃー・しゅくれーる)が立っていた。
 その時、零時の脳裏をデジャブが駆け巡る。
 確か、前回あゆむを助けた時にも同じようなことがあった……。
 チャティーの両手が零時の頬へと伸びる。
「じゃあ、そんな零時くんには――」
「お、俺、正光の奴を手伝ってくるぜ!」
「あ――」
 零時はチャティーの手を振り切って正光の元へと逃げ出した。
 零時の『潜在的危機感知能力』が発揮された瞬間だった。
「零時くん、恥ずかしがり屋ですねぇ〜。どうしましょうかぁ。なんだか、中途半端で私、不満ですねぇ〜……あ、ちょうどいい所に人が〜」
 唇に人差し指を当てて悩んでいたチャティーは、近くを通りかかったクロイスに近づいていった。
「クッロイスくん〜」
「なんで――へ?」
「ご飯、ごちそうさまですぅ」
「んぅぅ――!?!?」
 クロイスの頬を両手で挟んで抑えたチャティーは、【アリスキッス】をプレゼントした。
 数秒に渡る【アリスキッス】。
 クロイスは解放されると、ワナワナと拳を震わせた。
「オ、俺、今、じょ、女性からのキス、可愛い子からのキッスで、もしかして、これは、あ、あ……ああああ! よっし――」
「てぃ!!」
「んがっ!?」
 ガッツポーズをかまして雄叫びを上げるクロイスの脇腹に、ケイが強烈なドロップキックをかました。
 激しく回転してテーブルに突っ込むクロイス。
 ボロボロになったクロイスは、脇腹を抑えてよろよろと立ち上がると、威嚇する猛犬のようなにケイに叫んだ。
「いきなり何するんだ、ケイ!!」
「うるさい! シ、シドのばーかばーか!!」
「はぁ? 赤くなってなんで怒ってんだよ! てか、これは不可抗力だって、みればわか……あれ? こんな時に一番に突っかかってきそうなルウネは、どこいった?」
「え? さっきまで昼食の手伝いをしてたけど……」
 二人は慌てて周囲を見渡すが、ルウネの姿が見当たらない。
「みんな、すまん。ちょっと俺達、ルウネを探してくる! 行くぞ、ケイ!」
「うん!」
 クロイスとケイはルウネを探すため、広場を出て行った。


「あっゆむぅぅ〜〜〜!!」
「きゃあぁああー―!?」
 昼食後にゆっくりと休んでいたあゆむの所へ、戎 芽衣子(えびす・めいこ)がいきなり飛びついてきた。
 芽衣子はあゆむを地面に押し倒すと、頬ずりをしだす。
「やっと見つけたぞ、あゆむ。会いたかったぞ、あゆむ。可愛いよ、あゆむ。ああ、メイドさん。ヒャッホォォォォォォォイ!!」
「や、やややめてください。あわっ!? ど、どを触っているんですか――!?」
 芽衣子は頬ずりをしながら、あゆむのスカートへと手を伸ばす。
「ふふふ、よいではないか。よいではないか」
 あゆむは必死に逃れようとするが、腰をがっちり抱え込まれて逃げられない。
 すると、突如広場に声が響いた。
「待てぇぇぇい!!」
「誰だ、相思相愛のあたし達を邪魔する奴は!」
 芽衣子が声のしたほうを見ると、テーブルの上に想詠 瑠兎子(おもなが・るうね)が腰に手を当てて立っていた。
「一歩的な向けられた好意を、人は相思相愛とは言わない。ましてや相手を抑えて自分の愛情を強要するなど、汚れた心も持つ者だけ! そんなあんたの下劣な行いを神も決して許しません! 崇高なる者の裁き……」
 人、それを『雷』と言う…!」はビシッと芽衣子を指さす。

「人、それを『天誅』と言う……!」

 芽衣子は立ち上がって瑠兎子を睨みつける。その隙にあゆむは両手をつきながら、慌てて芽衣子から逃げ出した。
「てめぇ。あたしとあゆむのちょっと子供には見せられないような愛の育みを邪魔しようというのか!」
「……マスターは下品です」
「「うっせぇ。」
 芽衣子のパートナーフィオナ・グリーン(ふぃおな・ぐりーん)が感情が読み取れない表情で突っ込む。
「……一応聞いておいてやろう、誰だ、てめぇ!?」」
「あんたに名乗る名前はないわ!」
 瑠兎子がテーブルから飛び降りる。
「あんたの好きになんかさせないわよ!」
「瑠兎子さん……」
「だって、あゆむちゃんは私の物なの。だから、愛でていいのはワタシだけよ!」
「ガーン!!」
 胸を張って言いきる瑠兎子。一瞬だけ感動したあゆむは、多大なショックをうけていた。
「人のもんを奪おうとはいい度胸だな。泥棒猫はここで討つ!」
「あ、あの、あゆむはだれのものでもなくてですね――」
「そうね。ここで決着をつけましょう」
「あ、あの、だから――」

「「愛のために!!」」

「うぅ、全然聞いてませんね……」
 あゆむはしくしくと涙を流した。
 そこへ、飲み物をもらいに行っていた想詠 夢悠(おもなが・ゆめちか)が戻ってきた。
「ちょ、ちょっとどうなってるんだ!? 喧嘩はやめろよ」
「止めないでユッチー! これは今後あゆむちゃんと過ごすために必要なことなの!」
「い、意味わかんないし! オレ達は皆と協力して親子丼を作りに来たんだろう!? だったら喧嘩はだめだって! ほら、あゆむさんだって悲しんでいるじゃないか!!」
「ふえ?」
 夢悠に言われて瑠兎子と芽衣子があゆむが泣いていることにようやく気づいた。
 だが、その涙は決して喧嘩をする二人を見てではない。
 瑠兎子があゆむに近づき、指で涙をぬぐった。
「ごめんね、あゆむちゃん。そうよね。争いはよくないわよね」
「そうだな。さすがにあゆむを泣かれるのはよくないな。だが、決着もつけねばならないだろう……」
「だったら……親子丼で勝負するのはどうかしら?」
「ああ、それなら怪我もないし、いいな。勝った方があゆむを手に入れる。それでいいか?」
「もちろん」
 いつの間にか好敵手のように握手を交わして宣戦布告を始めた瑠兎子と芽衣子。
 結局、あゆむ自身の意見はないまま話は進んでいく。

 こうして、親子丼の料理は大人数用の鍋を作る前に、四チームに分かれて料理対決を行うこととなった。
「……二人は、人間として不適格者なのではないか、と思案します」
「同感だよ」
 フィオナの言葉に夢悠が同意した。