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図書館“を”静かに

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図書館“を”静かに

リアクション

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図書館の最奥、開かずの書庫。数多くの危険な本を保管するそこを守る番人、入り口を塞ぐゴーレムは正体不明の傷を負って停止している。起動する間も無く、と言った風に一歩も動いていない状態で。
その奥から仕事を終え、何かの紙束を抱えたサングラスの男がピクシー数匹を伴って出てくる―――。
「よお、図書館は火気厳禁だぜ」
―――所を横から引き止めるような、咥えたタバコを注意する声。
「その怪しいナリからして……鏖殺寺院、か?存外、厄介な事件だったみたいだな」
声の主―――源 鉄心は、警戒しながらも一歩、また一歩と男に近づく。
「行動が早いな、なかなか、ここにきて」
「ここを張ってたのさ。確証は少なかったが……図書館にある貴重品は大体ここに集積されてる。誰か一人でも見張ったほうが良いだろうと思って、だが」
まさかビンゴとはな、と続ける。そのまま詰め寄っていく鉄心に、男の周囲にいたピクシーが襲いかかった。前方から直線的に来る数匹を素早く叩き落す―――が、本命は後ろに回りこんだ二匹。
「!」
「苦手だ、しゃべくりは」
張り付いてきたピクシーを振り払う時に生まれた隙に、男は素早く逃走を図る。
「……っくそ、貴様!」
「待てッ!」
その時である。窓から差し込んだ西日でシルエットしか見えないが、誰かが逃走経路に立ち塞がった。
「――ッ!?」
何とかピクシーを振り払い、仕留め終えた鉄心は安堵する。
「援軍か、助かった」
「皆を離れていった貴公を追って来たまでですよ。《トレジャーセンス》で気になってる場所でもありましたし……ね」
影はその言葉と共にむん、と大きく腕を振る。ベルトから漏れる光、やがてその人物自体から輝きが放たれ始める。
「……誰、だ」
変身という力の入った声、光子の輝きと共にシルエットが顕になったのは。
「蒼い空からやって来て、仲間の未来を護る者!」
銀色のメットとライダースーツ纏った、【図書館を護る者】風森 巽(かぜもり・たつみ)扮するヒーロー。
「仮面ツァンダァァ!ソークいてっ」
……が、いつの間にやら周囲に集まってきたピクシー達からプロテクターの無い部分を画鋲で突っつかれている、なんともシュールな光景だった。
「いた、くそっ、変身中の攻撃とは卑怯な、いてて」
「馬鹿が」
付き合っていられないとばかりに、そのまま立ち去ろうとする男。
「くっ、逃がさん!」
しかし、ここで遅れをとるヒーローでは無い。周囲のピクシー達を《風術》で一気に振り払い、そのまま風を使って高く飛び上がる。
「ソォォクゥ!イナヅマッ!キィィィィック!」
雷光と風塵の中から放たれた必殺技、輝きと共に真っ直ぐに犯人へ突っ込んでいく。だが叫びのせいか、大見得のせいか、余裕綽々とばかりに犯人は上半身だけでそれを躱した、巻き上がる粉塵……その先に。
「必殺技が必ず『決まり手』というワケでは――」
「――ない、か」
そこに待っていたのは鉄心の《超人的肉体》から放たれる鉄拳。メリ、と犯人の腹を穿った拳は男を一撃で昏倒させるには十分な威力だった。
「がぁ……!」
サングラスを落とした男はそのまま泡を吹き、意識を無くした。
「アドリブで良く合わせてくれました、ありがとう」
ヒーローの感謝に、鉄心は素早く犯人を拘束しつつ答えた。
「だが、折角の必殺技をフリになんて使って良かったのか?仮面ツァンダー」
「攻撃が見え見えな状況であれば、あえて派手で大掛かりな技の方が油断しやすいものです。『簡単に躱せる』って思ってしまうからね」
それに、と続けながらツァンダーは自分の後ろを示す。鉄心がティー・ティーに《テレパシー》で状況を知らせた為だろう、この片付けに参画した『魔本狙い』『本好き』達が目を光らせてやって来る。
「一応当てることも可能ではあったのですが……此奴を再起不能にしてしまったら、彼等の鬱憤晴らしを奪ってしまう」
その言葉に鉄心は苦笑する。足音と共に迫ってくるのは、明らかな殺気。
「ああ――ご愁傷様、だな」
この後引き起こされる事態を考え、鉄心とツァンダーは犯人に少し同情した……本当に少しだけ。


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