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三章 洗脳

 天野 稲穂(あまの・いなほ)はペンダントの情報を探すために隠れ身で身を潜めていると、暗がりの中に盗賊が一人入ってきた。
天野 木枯(あまの・こがらし)はタイミングを見計らって稲穂に合図を送り、稲穂は暗闇か飛び出すと、
「動かないでください!」
 盗賊の背中に銃口を押し当てた。
 盗賊は突然のことながら事態をある程度把握し、冷や汗を滲ませながらその場に固まった。
「やったあ、大成功〜」
 木枯はのんびりとした足取りで盗賊の前に立つ。
「大丈夫ですよ、質問に答えてくれれば解放しますからぁ……」
「質問……?」
 木枯の代わりに稲穂が後ろから質問する。
「この洞窟にペンダントがあるんですが、場所を知りませんか?」
「し、知らねえよ! 見たこともねえし聞いたこともねえよ!」
「あなたたちのリーダーもペンダントの場所を知らないんですか?」
「知るかよ! 俺たちの目的はお宝で何か特別な品を探しに来たわけじゃねえんだ! なあ、質問には答えたぜ? 俺を解放してくれよ!」
「……どうしますか? 木枯さん」
「ん〜そうだねぇ……」
「そんなこと悩む必要は無いさ」
 二人の会話に割って入ってきたのは同じく身を潜めていた五十嵐 睦月(いがらし・むつき)だった。
「睦月さんには、何か考えがあるんですか?」
「もちろんさ稲穂ちゃん。皐月、ここは僕に任せてくれないかな?」
「ああ、別に構わないけど荒っぽいことはするなよ?」
 日比谷 皐月(ひびや・さつき)が釘を刺すと、睦月はニヤリと笑みを浮かべた。
「もちろんさ、僕は暴力が嫌いだからね」
 そう言って睦月は盗賊の前に立つ。
「さて、当たり前な話だけどこの件が終わったら君たちは全員ブタ箱行きだ、けど僕たちの言うことを聞いてくれれば逃がしてあげてもいい」
「聞く、言うことでも何でも聞く! だから」
「じゃあ話は簡単だ、君が君たちのリーダーを殺してくれ」
 睦月の提案に盗賊は目を丸くする。
「な……! そ、そんなこと……」
「出来ないって? 何、難しいことは無いさ。ちょーっと頭が油断しているところを後ろからざっくりやってくれればいいだけだ。それだけで君は自由になるし、なんなら頭の賞金とペンダント以外の宝は君にあげてもいい」
「……本当か?」
「ああ、天使はウソをつかないさ」
 盗賊はしばらく沈黙した後、
「……やる。どうせこのままじゃ捕まるしな」
 そう言って、盗賊はフラフラとした足取りで暗がりの中に消えてしまう。
 皐月は心配そうに声をかける。
「大丈夫なのかよ、あのまま逃げられてもつまらないぞ」
「大丈夫だよ、心配はいらない」
 睦月は再び笑みを浮かべる。
「細工は流流、仕上げをご覧じろってね」