校長室
魔法薬からの挑戦状
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第三章 実践魔法学教室にて 「外が大分騒がしいなあ。解毒薬なんていらなかったかもなー」 アーシアがそんな事を呟いていると、実践魔法学教室の扉がガラリと開かれる。 「ん?」 そこから飛び込んできたのは、葛城 吹雪(かつらぎ・ふぶき)だった。 「偽ロリ減給先生!!」 「うわぉっ!?」 どうやら、途中で吹雪は惚れ薬の効果を存分に受けてきたようだった。 アーシアに思い切り抱き着くと、そのまま押し倒さんという勢いで床に転がる。 「アーシア先生の給料と同じぺらぺらの胸が大好きです!」 「ゼロだって言ってんのかコラ! 胸をもむなー!」 「揉む程無いであります!」 「なんだとぅっ!?」 バタバタと暴れる二人の元に、ノックをしてやってきたのは、ロロット・マニカ(ろろっと・まにか)だった。 「困りますよ、アーシア先生。学園の清潔を守るのはメイドの仕事だと思ってるから。このままじゃ学園も教室も先生も汚れ放題……そんなのはイヤですよ」 「あ、うん。ごめんロロット」 アーシアはロロットにそう答えて、吹雪を剥がしながらそう答えて。 「なんか今妙な事言わなかった? ていうか、モップで魔法薬ゴーレム片付けるとか言ってたような……まさかっ!」 そのまさかである。 ロロットもまた、吹雪と同じく惚れ薬の効果を受けていたのである。 しかもロロットの場合、全部キレイに片付けて、アーシア先生に恩を売って……などと考えていたのが災いした。 暴走惚れ薬ゴーレムの効果により、ロロットの思考もまた、綺麗に暴走したのである。 「傷一つつけずに、全部綺麗にしてあげますから」 「が、学園をかな?」 「学園もです」 惚れ薬の解毒薬は少し手を伸ばせば届く。 アーシアが吹雪とロロットから距離をとろうとしていると、そこにもう二人が駆け込んでくる。 「何か変なのが一杯いるーっ!」 「私はノーマルだっ!」 「は?」 飛び込んできたのは、ルカルカ・ルー(るかるか・るー)とダリル・ガイザック(だりる・がいざっく)だった。 「丁度いい、そこの二人を抑えなさいっ!」 「なんだかんだと巻き込まれるなお前も……」 「えー、ルカの所為だけじゃないと思うー」 言いながらもルカルカとダリル、アーシアの三人で吹雪とロロットを抑えにかかる。 幸いにも普通に近い惚れ薬だった為、妙な能力上昇は無く。 まともな思考能力を暴走させた吹雪とロロットは、惚れ薬の解毒薬で正気を取り戻す。 「魔法薬は俺の専門である薬とは同じ薬と言っても内容は全く違うものだ。だが全くの門外漢でもないから役には立てるだろう」 「謙遜とかいらないから。できるなら手伝って。できないならいらないから」 手伝おう、と言うダリルに、アーシアは渋い顔をしながらレシピを示す。 「つか、君等はなにかな。手伝いにきたの?」 「うん。解毒薬は後で皆に配る為に作ってるのかなって思ったの。責任感じてるんじゃないかなってね。ね、アーシア。違う?」 ルカルカの、そんな言葉に。 アーシアは、素知らぬ風でビーカーに薬の材料を混ぜ込む。 「さあね。どうだかねえ」 「しかし魔法薬には興味が尽きないな。特に「無機物を一日だけゴーレムにする薬」には興味深々だ」 「あー、そっちは触っちゃダメだよ。うちの悪魔ロリ校長からの依頼品だからねー」 床には気絶したままの吹雪と。 それを机の上に載せて、床を掃除しているロロットの姿。 「この素敵な学園の清潔を守らなきゃ」 そのロロットの姿を見て、アーシアはルカルカとダリルに肩をすくめて見せる。 「まあ、お聞きの通りに素敵な学園だからね。自分の玩具箱の後始末は……ね?」 そう言って、アーシアは笑う。 これが今回のイルミンスール魔法薬ゴーレム暴走事件の、顛末である。
▼担当マスター
相景狭間
▼マスターコメント
こんにちは、相景狭間です。 皆様、おつかれさまでした。 イルミンスールを舞台にしたドタバタ劇、如何でしたでしょうか? 今回の冒険、お楽しみいただけたなら幸いです。 それでは、また次の冒険でお会いしましょう。