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リアクション
「トオルちゃんはね、ナラカに行くのは難しいって言うんだよ」
ヘルに渡されたジュースを飲みながら、ぱらみいは、むー、とむくれて話した。
「そんな顔しても、難しいものは難しいの」
生者がナラカに行ける手段は多くない。
フマナとシボラには、ナラカまで繋がる大穴があいているが、それも艦隊で一月、それも多数の犠牲を出してようやく辿りついたものだった。
それを一人でなんて無茶すぎる、と言ったところ、ぱらみいはじー、とシキを見た。
シキは、トオル次第、とでも言いたげにトオルを見る。
シキがトオルを見るので、ぱらみいもじー、とトオルを見た。
で、トオルは、
「ああもう解った! 何とか調べてみるから!」
と白旗を揚げるに至ったのだ。
そんな話を聞いた呼雪は、デスプルーフリングを取り出して、ポンとぱらみいに渡した。
「なら……トゥプシマティに会ってみたらどうかな」
「トゥプシマティちゃん?」
今はルーナサズにいるという、彼女もナラカに戻りたいと言っていたらしい。
呼雪は彼女のことも気がかりだった。
二人が出会うことで、何らかの変化があれば、と思う。
ぱらみいは、デスプルーフリングをじっと見つめて、
「ありがとう」
と礼を言った。
さて午後の部だ! とトオル達はプールに飛び出して行ったが、クリスティーとクリストファーは、荷物番をしている、と言って残った。
「別に、気を遣わないで泳ぎたければ泳いでくればいいじゃない」
「楽器を濡らしたくないしさ」
クリストファーは、そう言ってリュートをしまう。
まあ嘘ではないからいいだろう。
もーりおんを誘ってザンスカール・ウォーターパークに遊びに来ていたエース・ラグランツ(えーす・らぐらんつ)達は、ぱらみいに気付いた。
「あれ? ぱらみいじゃないか?」
「え? 知り合い?」
どこどこ? と、クマラ カールッティケーヤ(くまら・かーるってぃけーや)が踵を上げて首を伸ばす。
そもそも、今日エース達がプールに来たのは、クマラが
「オイラこの夏全然川にも海にも山にも行ってない! プール行きたい! つれてけつれてけー!」
とバタバタ暴れたからである。
行くなら是非もーりおんも、とエースがもーりおんを誘った。
「今年水着を着れる機会はこれが最後かもね」
と、リリア・オーランソート(りりあ・おーらんそーと)も一緒に行くことにする。
彼等が、遊びだしたら際限なくハメを外しすぎるのが目に見えていたので、エオリア・リュケイオン(えおりあ・りゅけいおん)も引率責任を感じて同行した。
人込みに慣れていないもーりおんは、大勢の人がひとつの場所に密集している、という状況にびっくりして、暫く固まっていたが、エース達がゆっくり慣らして、ようやく昼近くになってから浅いプールに足をつけるようになった、という具合だった。
「折角、お揃いの可愛い水着を用意したのに」
と、未だ水着も着ないもーりおんに、リリアは残念そうだが、その内慣れてから、と諦めてはいない。
「スライダーとかスリル満点で面白そうなのににゃー」
もーりおんをエースに任せながら、合間、交代で色々なプールを楽しみつつ、クマラは、333メートルスライダーを見上げて言った。
空飛ぶ魔法も使ったらより面白そうだとわくわくしたのだが、各種スライダーでは、魔法使用禁止が掲げてあってがっくりだった。
そうして午後になり、皆でカキ氷を食べているところで、エースがぱらみい達に気付いたのだ。
「あら、かわいい子。
ぱらみいちゃんて言うのね。よろしく、私はリリアよ」
リリアは、自己紹介をすると、ぱらみい可愛さのあまりに抱きしめる。
「可愛い子は大好きよ。私とも、お友達になってね」
「それにしても、イルミンスール学校水着って……」
ぱらみいの着ている水着を見て、エースが苦笑した。
トオルは、たまたま学校の購買に売っていた水着に幼女用サイズがあったので、適当にそれを購入したのだ。
「まあ、可愛いからいいじゃない」
「ぱらみい、こっちの子はもーりおん。キマクにある聖地モーリオンの地祇だよ」
「こんにちは」
ぱらみいが笑いかけると、もーりおんは、こく、と頷く。
「ぱらみいも可愛いけど、もーりおんも可愛いでしょ」
「エース、鼻の下が伸びてる」
「それはリリアだろ」
「もー、二人して何やってんだようー、オイラも仲良しにまぜてよっ」
皆でスライダーだようー、とクマラが割り込む。
ちなみに、クマラ大本命の巨大ウォータースライダーには、ぱらみいは身長制限で挑戦できなかったのだが。
イルミンスールに遊びに来たついで、たまたまプールに寄った綾原 さゆみ(あやはら・さゆみ)とパートナーのアデリーヌ・シャントルイユ(あでりーぬ・しゃんとるいゆ)は、水着を持って来ていなかったので、売店で可愛いのを選んで購入した。
「どこに行きましょうか」
腕を組んで歩きながら、やはり流れるプールかしらね、と言うさゆみと、背景に他の客が大勢いても二人きりの時間、とアデリーヌは期待した。
が、さゆみが誰かを見つける。
「あら、久しぶりね!」
見れば、自分も憶えがある。
以前森で迷子になった時に偶然会って保護してくれたトオルだ。
「あの時はありがとう」
とアデリーヌも礼を言う。
「一人?」
「いや、あっちにダチがいる」
指差した所を見ると、随分大勢いて、中でも、シキの側にいる小さな子供が目に入る。
「あの子は誰?」
「ん? ぱらみいか? 地祇だって。パラミタの」
へえ、と言うさゆみの手にある水鉄砲が、トオルは気になったようだ。
四、五十センチ程の大きさのそれをじっと見ているのに気付いて、さゆみは軽く振ってみせる。
「やっぱり、プールと言ったら水鉄砲じゃない?」
水着と一緒に、売店で買ったのだ。勿論アデリーヌも持っている。
「どこか、遊べるところ無いかしら」
「ああ、あっちに広場があるぜ。
広場って言っても足首まで水に浸かるから、ちょっと簡単にはいかないと思うけどな」
にや、と笑うトオルは、水鉄砲バトルに参戦する気満々のようだ。
「皆も誘って来る。水鉄砲も調達して来なきゃな」
「じゃあ、先に行ってるわ」
言われた広場で待っていると、トオルや康之達が、それぞれ水鉄砲を手に集まって来る。
ぱらみいはシキと共に、広場の外側で観戦のようだが、そこに彼等の本気が伺えた。
にこ、とさゆみは彼等を笑顔で迎え、
「先手必勝!」
と、満タン準備していた水鉄砲を彼等に向けて、引き金を引いたのだった。
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