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【蒼空に架ける橋】第4話の裏 終末へのアジェンダ

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【蒼空に架ける橋】第4話の裏 終末へのアジェンダ

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「まずは【神の目】であのウグノツとやらの目を眩ませ、混乱した中を襲うという作戦なのですが――」
 アルツール・ライヘンベルガー(あるつーる・らいへんべるがー)が言い終えるのを待たず、司馬懿 仲達(しばい・ちゅうたつ)が「却下」と遮る。
「先に刺激するのは避けた方が良いだろう。こっちは小型船だ。奴の攻撃を受けたら一たまりもあるまい」
 仲達の意見に賛成するかのように騎沙良 詩穂(きさら・しほ)シグルズ・ヴォルスング(しぐるず・う゛ぉるすんぐ)が頷く。
「しかし何の策も無く飛びついたとしても……」
 ちらりとアルツールがウグノツに視線を向ける。
 雲海を漂うウグノツの胴体に、柚木 桂輔(ゆずき・けいすけ)がぶら下がっていた。電撃を受けたせいで所々燻っている。
 意識は無いが、銛と手を縄で結んでおり落下の心配は今の所無さそうである。電撃を受けたのも銛のせいであるのだが。

――桂輔は詩穂やアルツールと一緒にウグノツを狙いに来た一人である。
 モリ・ヤからウグノツの捕獲方法、特徴を聞いた桂輔はその通りに飛びついて銛を使っての捕獲を試みたのである。
「これでよし……っと」
 両手に銛を持ち、それが離れぬように握った状態で縄で縛る。後は飛びついて一つの銛で刺してしがみ付き、もう一本で狙う。
 ウグノツは攻撃されると防衛本能からか放電するという特徴がある。放電を食らっても落とされぬようにとしがみ付く為の両手の銛である。
「そんじゃ、ちょっと行ってくる」
 そう言って先陣を切った桂輔。雲海に身を投げ出し飛びつくと同時にウグノツの身体に銛を突き刺した。
――瞬間、ウグノツの全身に電流走る。その電流はしがみ付く桂輔の身にも襲い掛かる。
 想像以上の電流に、桂輔の身体が勝手に硬直する。しかし何とか力を振り絞り、弱点と思われる頭を目指そうとする。
 だが振り落とされないようにするにはその度に銛で刺さなくてはならない。その度に電撃を食らい、遂には桂輔は動かなくなった。銛と手を結んでいなければ今頃きっと雲海の藻屑となっていただろう。結果的にウグノツの一部みたいになってしまったが。

「だから、どうすべきかというと電撃対策だと思うよ!」
 そう言う詩穂に、アルツールが訝しげな表情を向ける。
「……で、その格好は?」
「詩穂なりの電撃対策だよ!」
 胸を張って応える詩穂の格好はゴム長靴、ゴム手袋、ゴムエプロン等々……ゴム製品で身を固めた通称ツキジスタイルと呼ばれそうな格好であった。誰が呼ぶかは知らないが。
 これらは全てモリ・ヤから借りた物である。貸した本人も一体何に使うか首を傾げていたが。本来はこれに加え、ウグノツの身体にぬめりがあった時用に重曹も借りるつもりであったが、『別にそんな事は無い』というので不要となった。
「……大丈夫なのだろうか」
 自信満々の詩穂に頭痛を押さえる様にこめかみに指を当て、アルツールが呟く。
「まあ大丈夫なんじゃないかな」
 そう言いつつシグルズは命綱となる縄と銛を用意している。
「そう言うシグルズ様が大丈夫とは思えないんですが」
 アルツールが視線を向けた先にいるシグルズの格好は、特別何かしているという訳ではない。いつも通りの格好である。
「ああ、【オートバリア】に【フォーテューティド】と【エンデュア】使えば短時間なら何とかなるのではないかと思ってね。いやぁそれにしても思い出すねぇ、ファヴニールに挑んだ時の事を」
 アルツールの心配など露とも知らぬように、何処かシグルズは浮かれているようである。
「貴公ら、ちょっとこっちに来るがいい」
 仲達が詩穂とシグルズを手招きすると、【耐電フィールド】を敷設する。更に「後出来る事と言ったらこれくらいか」と【強化装甲】を施した。
 準備を終えると、「じゃ、いってくる」と詩穂とシグルズが雲海を泳ぐウグノツに向かって跳びついて行く。
「……本当に不安になってきました」
「心配する暇があるならワシらに出来る事をやるまでよ。ワシ、元軍人だけど力仕事は不得手だからな。というか引退した親父に何か期待されても……その……正直困る。それにほれ、見てみろ」
 そう言って仲達がアルツールにウグノツに飛びついた詩穂とシグルズを見る様に促す。

「こういうの相手にするなら鰓だよ! まずは鰓狙うよ!」
「よし目頂きぃッ! もう一本目いっとこうか!」

「何か心配していたのが馬鹿らしくなってきました」
「そういうもんよ」
 電撃を食らいながらも嬉々として鰓を狙い銛を刺しまくる詩穂と、目に銛を刺すシグルズを見てアルツールと仲達は呟いた。
「貴公はあの二人が戻ってきた時に怪我でもしてたら回復でもしてやるがいい。尤もあの様子だとそんな事も無さそうだが」
 仲達の言葉通り、少し後に返り血を浴びた詩穂とシグルズが、銛で滅多刺しにされ動かなくなったウグノツを縄で縛って戻ってきたのであった。
 ちなみに桂輔は全身燻っていたがアルツールの手により一命は取り留めた様である。