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リアクション
4‐04 森奥の死闘
その頃、森奥では……まさに、最大の死闘が繰り広げられていた。
すぐ、後ろに控える強大なオーク・キングの姿。森の巨木程の、胴回りはある。あれにどう致命傷を加えるのか……いや、しかしそれを考える前に、目の前の敵がどうにも煩い。
「ホヒィィィィィ」
「ムハーーー」
他にも、ぞろぞろとオークの精兵は、ベオウルフ隊の周囲を囲みつつある。
しかし、後方では、獅子小隊がオークらと剣を交える音が、銃声が聞こえる。獅子小隊がまだ後陣に居てくれているおかげで、退路は断たれる心配はなさそうだ。
サッ
村雨の姿が、消えたかのように、素早く動いた。
「ムハ!」
足に斬撃を加え、一撃離脱。
戦斧を下ろす巨オーク。
あれにやられたら、ひとたまりもない。
「クルード……! もう一度行く」
「……村雨……!」
村雨が、再び一撃離脱に入る。
クルードが、剣の狙いを定め、それに続く。
クルードの脇にいた曲刀のオークが、すかさずクルードを狙う。
「おっと、あんたさんのあいては、私どすぇ」
それへ立ち塞がる、燕。紫織はその後ろをとる。
斧を振り下ろしたオークの腕を切り付ける、クルード。
地に振り下ろされた斧が、そのままくるりと向きを変え、クルードを襲う!
「専守!」
そこへやって来たのが、ベア・ヘルロット。
斧をかろうじて、受け流した。
燕、紫織の同時攻撃、これも飛ぶように交わす「ホヒィ!」。交わしながら曲刀のカウンターが来る。
「いい動きしてはるなぁ。ほんにやくたいなことどすぇ、このひとら……」
だいぶ、見切ってきているが、攻撃を当てるのは困難だ。
こちらへ駆け上がったのは、ユウ・ルクセンベール、ルミナ・ヴァルキリー。
曲刀の攻撃を、盾で受ける。「くっ」連続攻撃を受け、押されるユウだが、一回の攻めは、深くない。
ユウの後ろから、ルミナが踏み込む。
「ホヒィ!」はそれを交わすとそのまま向きを変え、燕に攻撃を転じる。しかし紫織が、燕の隙をフォローし、燕は攻撃に専念。
ホヒィはたまらず、キングの傍まで、逃げ出した。
燕、ユウらは踏み込みを止める。
が、見ると、そのキングの反対側の傍らに、人の姿。
腰まで届く髪が戦場でも艶々と輝く、百鬼 那由多だ。誰かに、合図をしている。
すると、側面に現れたのは、もちろん、彼女のパートナー、アティナ・テイワズ。普段はほんわり穏やかな彼女も、緊張に少しこわばっている。が、決断したのか、一気に、バーストダッシュで、キングの前を横切り、切り付ける。それは受け流されるが、百鬼のダガーが、キングを襲う。
そのまま、こちらへ、駆けて来る百鬼。
今度はキングが手にした長柄が、百鬼へ猛然と襲いかかる。間一髪、ユウ達のもとへ、転がり込む百鬼。
キングの膝には、突き立つダガー。
百鬼がそれを引っぱる仕草をすると、ダガーは百鬼の手もとに戻ってくる。リターニング・ダガーだ。
「血は……。傷は、浅いですね……」
森へ姿を隠したアティナも、こちらへ戻ってきた。
キングは蚊に刺されたかという具合に、膝を掻いて血を舐めとってみせた。
「とにかく、キングを引っ張り出しましたよ!」
「……やっと出てきたな、……キング……!」
「ここからが勝負だぜ!!」
すでにキングの前に立つクルードと村雨。
「専守! とは言え、こいつ相手に一人は、きついなっ」
一人で戦斧を交わすベアの耳に、「ワルキューレの騎行」が聞こえてくる。
4‐05 その裏で……
さて密かに森へ入り、独自に救助と捜索を行ってきた宇都宮は、木々の向こうに剣の響きと喚声の聞こえる、森奥の裏手まで到達していた。
「お姉さま……!」
セリエが、声をあげる。
「しっ……」
セリエが、木立の茂みに、気配を見つけた。
「シャンバラ教導団の敵は……」
「……」
返事がない。
「……セリエ」
「お姉さま」
二人は、武器を構え、互いに前後から踏み込んだ。
「……!」
そこには、キングに一撃で弾かれた、と聞いた部隊長の眠る姿があった……。
起きることなく……。と、思ったが、仲間の到来を感じ取ったのか、一度、部隊長は薄目を開き、胸にしていた短刀を持ち、宇都宮の手を握った。もうほとんど固まった血糊の着いたそれが、宇都宮に手渡されると、彼は再び目を閉じ、二度と開くことはなかった。
今ここから運ぶことはできない。宇都宮は弔いの代わりに一礼をしたが、怒りと悲しみが渦巻く一方どこかとても冷静な心持でいた。
セリエがふと指さす方を見る。
樹上の影にじっと潜む姿……ここにも、宇都宮と同じく、独自の行動をとって先行していた者が、いたのだ!
あれは、見たことがある……確か、あの人だ。
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