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幻のダイエット草を探せ!

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幻のダイエット草を探せ!

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 第4章 一方そのころ、独自に動く人たちのこと

 そのころ、ジーナ・ユキノシタ(じーな・ゆきのした)とパートナーのドラゴニュートガイアス・ミスファーン(がいあす・みすふぁーん)は、ザンスカールのヴァルキリーに事態を収束する相談に行っていた。
 「ふむふむ、おぬしらはこの蒼空学園とイルミンスールの対決が心配だというのじゃな?」
 好々爺然としたヴァルキリーの老人に、ジーナは真剣に訴える。
 「蒼空学園側は、あまりにも軽率というか、地元民感情を無視しすぎているような気がします。それに、長期的に考えれば、ダイエット草を取りつくしてしまったりしたら、大損です。カジュアルな抗争も、校長のお墨付きであれば、もし怪我人がでたときなどに、深刻な遺恨を残すかもしれません」
 「若輩のパートナーが疑問を抑えられん。もしよければ、成長のために話を聞かせてやってはくれまいか」
 ガイアスは、あくまでも保護者役としてついてきていたが、実際にはジーナの「こんなことしてて、大丈夫かな……」という感情を、「過去のパラミタでもつまらないことから深刻な争いがおきたものだ」などと言って煽り、ヴァルキリーに相談させようとしたのだった。
 「ここは、ヴァルキリーの皆さんに喧嘩両成敗ということで、事態の収束をはかっていただけないでしょうか」
 真剣に訴えるジーナに、ヴァルキリーの老人は自分の顔の前で手を振ってみせる。
 「いやあ、この程度のことは日常茶飯事だからのう。別に心配しなくていいっスよ? マジでマジで」
 「え? お、おじいさん、キャラ変わってないですか?」
 「そ、そんな軽いノリでよいのか?」
 脱力するジーナとガイアスであったが、ヴァルキリーの老人はにっこり笑ってみせる。
 「この程度のことでは森はびくともせんし、学校も大丈夫じゃよ。心配してくれてありがとう」

 ところ変わって、森の中では。
 「下剤を1本、2本、3本……えーい、めんどくさいので全部投入〜♪」
 島村 幸(しまむら・さち)が、下剤入りほうれん草ジュースを準備していた。
 「貴重種を保存するのは研究者としての努めです。たとえ同学園の方でも商売目的の方は妨害させていただきます!」
 マッドサイエンティストの幸は、ダイエット草乱獲に腹を立てており、同じ蒼空学園の生徒を狙って屋台を出していた。
 パートナーの剣の花嫁ガートナ・トライストル(がーとな・とらいすとる)は、「休憩どころ◎P」と書かれた看板を背負っていた。
 ガートナは、騎士団服を着たあご鬚のあるダンディ花婿だが、休憩どころには看板娘が必要だと幸に説得されて、フリフリリボンカチューシャとフリフリピンクエプロンドレスを無理やり着用していた。
 「だ、大丈夫ですかな」
 とはいえ、ガートナは良心の呵責に苛まれており、こっそり下痢止めを用意したりしていた。

 同じように下剤ジュースを用意する者達がいた。
 イルミンスール生のカレン・クレスティア(かれん・くれすてぃあ)であった。
 パートナーの機晶姫ジュレール・リーヴェンディ(じゅれーる・りーべんでぃ)と協力して罠を準備するカレンは、憤っていた。
 「森の草をお金儲けに使おうとするなんて許せない!」
 自称・調合師のカレンは、森の草花にお世話になっているので、必要以上に森を荒らそうとする者達にそれ相応のしっぺ返しを食らわそうと考えていたのだ。
 「他校生と揉めるのは気が進まぬのだが……。直接、魔法を打ち込むよりはよいだろう」
 ジュレールはしぶしぶ、パートナーに協力していた。

 そこに、 教導団所属の一色 仁(いっしき・じん)とパートナーのシャンバラ人ミラ・アシュフォーヂ(みら・あしゅふぉーぢ)が通りかかった。
 「現在この森近辺では、散発的に小規模な戦闘が発生しています。一般の方々はお気をつけください。また、戦闘されている方は付近の住民に迷惑をかけないようにお願いしま〜す!」
 ミラは拡声器を使って、周囲に注意を呼びかける。
 非武装で、「森に来た人に警告をしている」というポーズで、森に潜入し、ダイエット草を手に入れるという仁の作戦であった。
 「蒼空生じゃないみたいですが、ターゲット発見です!」
 「癒しの休憩どころぐるぐるP! ぐるぐるPですぞー!!」
 幸の言葉に、ガートナは仁とミラに迫る。
 「ぎゃああああ!? な、なんだ、このフリフリのおっさんはああ!?」
 「へ、変態ですわ! 森の妖怪ですわ!」
 仁とミラは、ガートナの姿にドン引きし、後ずさる。
 「失敬な! 私は看板娘ですぞ!」
 ガートナがさらに、仁とミラに迫る。
 「まあまあ、そんな人は気にしないで、ボクのサンドイッチを食べなよ」
 カレンは、サンドイッチを仁とミラに勧める。
 サンドイッチには下剤は入っていないのだが、水筒の中に下剤入りの森の果実ジュースが入っており、喉が渇いて相手が自然に飲むのを誘う作戦なのだ。
 「な、なんだ、こいつらは?」
 そこへ、蒼空学園の赤月 速人(あかつき・はやと)が通りかかった。
 「じゃ、じゃーん! イルミン生の友人にダイエット草を分けてもらえたんです。ジュースを作ってみたので、一杯いかがですか?」
 「それより、ボクのサンドイッチを食べなよ。美味しいよ」
 「散策者のための休憩所だ。休むといい」
 幸とカレンが競うように速人に休憩を勧め、ジュレールもフォローするように言う。
 「そんな怪しいもん、飲めるわけないだろ!」
 「誰がどう考えても罠ですわ!」
 仁とミラは、ほうれん草ジュースを断固拒否する。
 「ほう? 私の愛情のこもった料理を食べれないとおしゃるので?」
 ガートナがずずいっと迫る。
 「おまえらのそれも罠だろ……」
 速人も、カレンの用意した罠を見破っていた。
 「そんなことないよ? ボクたちは全然普通だよね、ジュレ?」
 「この状況では疑われてもしかたないのではないだろうか……」
 ごまかそうとするカレンだが、ジュレールはため息をつく。
 「では、実力行使するまでです!」
 「無理やり飲ませちゃうよー!」
 幸とカレンは仁、ミラ、速人に迫る。
 「うわああああ、来るなあああ!」
 「危険ですわ! この森に危険人物がいますわー!!」
 仁とミラの叫び声は、拡声器に乗って響きわたる。
 「くっ、同じ学校の奴が混じってるがしかたないぜ!」
 速人は、あらかじめパートナーと打ち合わせていた地点に逃げてきた。
 「にゃー、にゃん!」
 速人のパートナーの魔女、カミュ・フローライト(かみゅ・ふろーらいと)が、罠発見の合図の声を上げる。
 「かみゅ選手ぅ。ふりかぶってぇ〜うっちました〜」
 幸たちを、カミュが杖で背後から襲う。
 「なっ……こ、これは、モグラの穴ですか!?」
 「み、身動きが取れないですぞー!」
 「うわあああ、こっちこないでよ、変態!」
 「カレン、見たところこの鬚の御仁も必死なのだ。変態はどうかと……」
 「さりげなく女の子と密着だぜ!」
 「ちょ、仁、なんてことしてますの!!」
 「自然の罠に引っ掛ける作戦だったのに、なんで俺まで引っかかってるんだ!?」
 「ごめーん、こんなに大きな穴だと思わなくてえ。私も落ちちゃった」
 幸とガートナとカレンとジュレールと仁とミラと速人とカミュは、そろってモグラの穴に落ちてしまい、そのままさらに大混乱に陥るのであった。