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幻のダイエット草を探せ!

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幻のダイエット草を探せ!

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 第6章 両者がダイエット草入手、引き分けと和解のこと
 
 「お待ちなさいなっ!!」
 戦い続ける学生達に、ロザリィヌ・フォン・メルローゼ(ろざりぃぬ・ふぉんめるろーぜ)が声をかける。
 「おーほっほ! わたくし、この、ロザリィヌ・フォン・メルローゼが、ダイエット草争奪戦には参加せずに、中立の百合園生としてイルミンスールの森にスイーツ屋を開店いたしますわ! 蒼空学園の子にも、イルミンスールの子にも分け隔てなく甘〜いスイーツを提供いたしましてよ!」
 お嬢様笑いしつつ、ロザリィヌは宣言する。
 「おーほっほっほっほ! 男は置いておいて、甘い物を食べたいという意思はどこの学校の女の子も一緒ですのよ。仲良くしないといけませんわーっ!」
 「す、スイーツ!?」
 「あ、待ってよ、マリエル!」
 マリエルが真っ先に戦線離脱し、愛美も後を追う。
 その場にいた者たちは、こぞって、ロザリィヌの屋台に殺到する。
 「ヴァイシャリーの高級スイーツですわよ! これで、ついでに生活費もゲットですわ!」
 ロザリィヌの屋台は大繁盛した。
 「皆様、私の料理も召し上がってくださいませ!」
 イルミンスール生の深見 ミキ(ふかみ・みき)も、蒟蒻のお米でできた豚丼を振舞う。
 「ヘルシーでダイエットには最適な蒟蒻を使用しているのでございます」
 ミキは、料理の解説をして、注目を集める。
 「ようこそ、おいでくださいました。ささ、お疲れでございましょう。休んでいってくださいませ」
 他校生の足止めが当初の目的だったが、ミキの用意した豚丼も、皆の気持ちを和ませた。
 「うまい! やっぱり、腹が減ったら仲良くできないよな!」
 豚丼を頬張りながら、笑顔でジャックが言う。
 「55人分ほど用意いたしましたので、どんどん召し上がってくださいませね!」
 ミキは、にっこり微笑んでみせた。
 
 皆がのんびり食事して、くつろいでいると、マリエルがすっ飛んできた。
 「たいへん、大変だよぉ!」
 「どうしたの、マリエル、口の周りにクリームついてるわよ」
 「それどころじゃないよぉ! むこうに、ダイエット草が、あったの!!」
 マリエルの言葉に、愛美はもちろん、その場にいた学生達の空気が一変する。
 
 アリス・ハーバート(ありす・はーばーと)は、保護者役として参加していたパートナーの魔女ミーナ・シーガル(みーな・しーがる)と一緒に、百合園でお茶会を開くためにがんばっていた。
 「あっちにダイエット草を持ったイルミンスール生がいるわよ!」
 「むこうに、蒼空学園生がダイエット草を持って走って行ったわよ!」
 アリスは、それぞれの学校の生徒に、ライバル校の生徒がむこうにいたと行って撹乱しようとしていた。
 「べっ別にお菓子に釣られたとかじゃないんだからね!」
 保護者としてしかたなくついてきたと称するミーナだったが、お茶会という目的のため、アリスと一緒にがんばっていた。
 一乗谷 燕(いちじょうだに・つばめ)は、蒼空学園生だったが、自分だけでダイエット草を手に入れるため、演技をしていた。
 「ぁ……たたた……じ、持病の差し込みが……!」
 うずくまる燕に、如月 陽平(きさらぎ・ようへい)が声をかける。
 「大丈夫? 僕はイルミン生だけど、蒼空生にもダイエット草を渡そうと思ってたんだけど……」
 「え、ホンマに?」
 燕が顔を上げ、準備していた竹刀を引っ込める。
 「うん、校長先生には内緒だよ。蒼空学園の人たちとも仲良くしたいからね」
 赤ん坊の頃に祖母に背負われ田んぼデビューを果たした陽平は、農業で日焼けした顔にさわやかな笑みを浮かべた。
 「ボクも、豊饒の守護天使として、薬草を巡ってケンカしてほしくないですからね」
 陽平のパートナーの守護天使シェスター・ニグラス(しぇすたー・にぐらす)も、陽平と同意見だった。
 「それにしても、森に住む知的種族が騒動で危険に巻き込まれないか心配だったんですが……。あらかじめ皆逃げてしまっていたようですね。よかったです」
 シェスターは、ほっと胸をなでおろしていた。
 「おおきに!」
 燕は、ダイエット草を陽平から受け取りつつも、その場で食すのは抵抗があったので、ビニール袋に入れた。
 「紫織はんと半分こしたらちょうど良ぇくらいに痩せますやろか」
 パートナーのことを思い、燕はつぶやいた。

 アリスも、陽平からダイエット草を受け取って喜んでいた。
 「やったあ、これでお茶会ができるね。ありがとう!」
 「どういたしまして。でも、そっちの君は、ダイエット草は食べない方がいいんじゃないの? 発育によくないんじゃないかなあ。 子どもはダイエットなんかしないほうがいいよ」
 陽平の指摘に、幼く見えることと胸がないことがコンプレックスのミーナはぶちキレた。
 「だーれが幼女にしか見えない上につるつるぺったんで胸と背中の区別がつかない洗濯板じゃあ!!」
 「だ、誰もそこまで言ってないんだけど……」
 大暴れするミーナを、アリスが慌てて静止する。
 「このままじゃミーナに殺されちゃうわ! に、逃げて!」
 「え、うん……わー!!」
 せっかくダイエット草を渡したのに、火術で攻撃され、陽平は必死で逃げるのであった。
 
 久世 沙幸(くぜ・さゆき)も手に入れたダイエット草を食べようとする。
 「本物かどうか試さなきゃダメだよね」
 自分に言い聞かせながら、ダイエット草を食べようとする沙幸だったが、パートナーの魔女藍玉 美海(あいだま・みうみ)に止められる。
 「食べてはいけませんわ、沙幸さんはBMI値的にも今が最適なんです。だから痩せる必要なんかこれっぽっちもありませんのよ」
 怒った口調で言う美海は、沙幸を抱きしめた。
 「ね、ねーさま、みんな見てるよ〜」
 沙幸は顔を真っ赤にして、困ったように言う。
 「今だってこんなにすばらしい抱き心地なのに、これ以上痩せてしまわれたら抱き心地が悪くなってしまいますわ」
 「ごめんなさいねーさま、私が間違ってたよ」
 沙幸は、照れながら美海の説得に応じ、ダイエット草を食べるのをやめた。
 
 ダイエット草発見に、蒼空学園、イルミンスール捜索隊はじめ、他校の生徒も喜んでいたが、いつのまにか、愛美がいなくなっていた。
 「お姉ちゃんが愛美さんと一緒にどっか行っちゃったの……」
 朝野 未羅(あさの・みら)の言うとおり、朝野 未沙(あさの・みさ)の姿も消えている。
 「こ、これは危険な予感がしますね!」
 當間 零(とうま・れい)が、マリエルと顔を見合わせる。
 「マリエルさん、一緒に探しに行くの!」
 「う、うん、待ってよお!」
 走り出した未羅を、マリエルがあわてて追う。

 森の奥、日のあまり差さない暗がりで、未沙は愛美に迫っていた。
 「愛美さんはダイエットなんてしなくても十分魅力的だと思うよ……愛美さんの肌すべすべで気持ちいいなぁ〜、止まらなくなっちゃいそう……」
 怪しく目を光らせながら、未沙は愛美の肌をなでる。
 「え、ちょ、ちょっと、未沙さーん? もしもーし?」
 すわ、制服のボタンに手がかかるかと思われたところで、未羅たちが飛び込んできた。
 「お姉ちゃん、何してるの!」
 「まさか、小谷さんに迫ろうとしているとは、予想外でしたよ……」
 零がため息をつく。
 「……あと少しだったのに」
 未沙はこっそりつぶやいた。
 「あはははは、た、助かった……」
 普段は自分が男の子に迫ってばかりの暴走肉食女子の愛美だが、こういうこともあるのだった。


 そして、こっそり単独行動していた志位 大地(しい・だいち)は、ダイエット草入手に喜んでいた。
 「これで、御神楽 環菜さんとのコネができますね。潜入して探し物をするのも楽しかったですし、万々歳です」
 伊達眼鏡を光らせて、大地はほくほくと微笑んだ。


 かくして数週間後。
 蒼空学園のマリエルと愛美だったが。
 「うわああああん! マナあああああああああ!!」
 「マリエル……ちょっとずつ気がついてはいたけど、すっかり元通りね……。私もだけど」
 「ダイエット草って、効果がずっと続くわけじゃないんだね……。調子に乗ってカロリーの高いものばっかり食べてたよぉ……」
 「やせてからは摂取カロリーに見合って体重が増加するだなんて、思わなかったわ……。ロザリィヌさんの大量のお菓子も原因かもね。あと、メタボリック草」
 「わーん! これから、スイーツ食べ放題だと思ったのにー!!」
 マリエルは、がっくりとうなだれるのであった。

 「まったく、あなた、本当、使えないわね。これじゃ、売り物にならないじゃないの。ダイエット草は結局、たいした数も取れなかったし、栽培するのも無理だっていうし」
 大地は、環菜に八つ当たりされていた。
 「で、でも、環菜さんの言うとおり、ダイエット草を入手してきたじゃないですか。これから、俺と特に親しくしてもらうわけには……」
 「いくわけないでしょ! 私にはノーリターンだったのよ!」
 「……じゃあ、環菜さんも、元通りの体型になったんですね。わー、や、やめてください!」
 大地は環菜に辺りの物を投げつけられた。

 「やっぱり、地道なダイエットが重要なんですよ!」
 騎沙良 詩穂(きさら・しほ)は、宣言していた。
 「というわけで、ほうれん草ダイエットをはじめましょう! 理論的にはほうれん草と牛乳だけで栄養素は足りるのです! メイド精神で朝昼晩とほうれん草料理をしますよ!」
 「私はもうどうでもいいわ。ダイエットなんて、考えるだけで腹が立つのよ」
 環菜は、もはや、完全に興味を失っていた。

 しかし、イルミンスール魔法学校では。
 「よし、今日もほうれん草ダイエットじゃ!」
 「大ババ様、なんでわたしもほうれん草料理しか食べちゃだめなんですかぁ」
 「ばかもん! 私がほうれん草しか食べられないのに、お前だけカロリーの高いものを食べていたら腹が立つじゃろうが!」
 「横暴ですぅ! 超ババ様はいいけど、わたしは育ち盛りなんですぅ!」
 「うるさい、好き嫌い言わずに食べなさい! それとも、パートナーと苦しみを分かちあえんというのか!?」
 「ヒドイですぅ!! わたしは関係ないですぅ!!」
 「まだまだ、おかわりがありますよー」
 詩穂は、山のようなほうれん草料理を運びながら微笑んだ。


 アーデルハイトのほうれん草ダイエットは一週間続き、つきあわされたエリザベートはたまったものではなかったという。

担当マスターより

▼担当マスター

森水鷲葉

▼マスターコメント

 ご参加ありがとうございました。
 皆様のおかげで、楽しくリアクションが書けました。ありがとうございます。
 「夏休みを取り戻せ!」から、継続してご参加いただいた方も、どうもありがとうございました。
 今回から参加された方も、リアクションを読んでくださっている方も、今後とも何卒よろしくお願いいたします。