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リアクション
第5章 策謀で勝利を我が手にする伏線
「これがロケット花火と一体化した人間ランチャーさ!」
着火して今にも飛んでいきそうなロケット花火を抱えた東條 カガチ(とうじょう・かがち)は、東軍目掛けて花火を爽快に飛ばす。
顔にゴーグルをかけて頭にバンダナを巻いている姿は、さながらテロリストのような格好になっていた。
標的の方へ花火が向かって行くのを確認し、もう一度ぶちかまそうと箱の中からロケット花火を取り出そうとした瞬間。
拡声器で怒鳴る男の声が、東西の中間地点から響き渡る。
「くぉらぁああーっ!そこのお前たち、何をしているんだぁあ!!」
警察官のようなコスチュームを着用した博士が、拡声器を使って双方へ怒鳴り散らす。
「何だ、警察のヤツか?」
何事かとカガチが双眼鏡で中央にいる彼を見る。
東西両方とも一旦、ロケット花火の発射の手を止めた。
「この近辺にいる遊牧民の皆さんが、あちこちから花火が飛んできて迷惑していると通報してきとるのだぞー!」
博士が大声で叫んでいると、岩場の影から遊牧民に変装したロ式 火焔発射器(ろしき・かえんはっしゃき)が通りがかる。
「一体何なんだ・・・あいつらは・・・」
双眼鏡で相手を見ながら、カガチは眉間に皺を寄せて呟く。
「クックク・・・フハハハ!貴殿たちに華麗なる戦い方を魅せてしんぜよう。そして人々は我輩をこう呼ぶことになるだろう・・・地獄博士と!」
博士は制服を脱ぎ捨て、裏面が赤色の黒いマントを身に纏い黒のシルクハットを頭に被った。
地面に置いておいたカバンの中から、博士とロ式は2本の大筒を取り出す。
「このパラミタの地に厄災をもたらす者、我輩の存在を覚えておきたまえ!!」
ロケット花火の束を大筒の中に入れ、博士は東軍側へロ式は西軍側へ向けた。
「何だかよく分からないけど面白そうだ。よしっオレもそっちにいってみるか!」
ニヤリを笑いカガチは博士たちがいる中央地点へ駆ける。
「この戦は全て台無しだ、もう最高最低にぶち壊しだ!西東双方の皆々様、戦争マーチに足並み揃えて地獄へ進軍しようじゃあないか!」
カガチが空高く両腕を広げたのと同時に、博士とロ式が両軍目掛けてロケット花火砲を放つ。
「ソウカイニフキトベ・・・スベテノニンゲンドモ・・・・・・」
それだけ言い残すと、ロ式は博士をその場に取り残して素早く立ち去った。
突貫仕様の大型のロケット花火を空飛ぶ箒に搭載した御厨 縁(みくりや・えにし)は、東軍へ襲撃する準備をしていた。
「中央によく分からん連中がおるようだが、わらわはゆく!」
「いくよー縁、点火3秒前ー。3・・・2・・・1・・・発射ー!」
多連装ロケット花火ポッドを身体中に付け終わったサラス・エクス・マシーナ(さらす・えくす ましーな)が、箒に付属している花火にライター点火する。
2人のポッドはRocketDive号と命名され、その文字がスプレーで書かれている。
シュォオオーッと凄まじい音を立て、空飛ぶ箒に乗った縁は時速550kmの猛スピードで東軍へ向かう。
両軍の中間地点で花火を空へ打ち上げるカガチに出くわし、彼の背中に激突して縁はそのまま東軍の方へ飛んで行く。
「うっ・・・ぐわぁあっー!」
カガチは両手を上げたままの状態で、笑顔の表情を崩さずに砂の上へ顔面直下する。
「急いでいるので、すまーん!」
前を向いたまま大声で謝るが、すでにカガチの耳には届かなかった。
「あちゃー、人にぶつかっちゃったみたいだねー。まぁ、こういう状況だし・・・こんな中間位置じゃあ仕方ないか」
縁の後からロケット花火で空を飛んできたサラスは、倒れている人間の姿を見下ろして現場を通過する。
「何だか途中で撃ち合いが止まっちゃったけど、そろそろ敵陣へ攻撃しようかな」
小鳥遊 美羽(たかなし・みわ)は向かってくる花火を能力のスウェーで発動して避け、敵陣の東軍へ向かう。
向かってくる花火を美羽の身長より大きいサイズの、光輝く剣型の光条兵器で薙ぎ払う。
「でも・・・どうせやるなら、効率よく命中させた方がいいよね」
空洞に花火を詰めた数本の鉄パイプを水辺に投げ、剣を持っている逆側の手に持っていたガスバーナーで花火に火を着けて放つ。
「いくわよー、それぇえー!」
ヒュゥイーンと敵陣へ花火が飛んでいく途中で、その数本が不幸なことに高笑いしながら花火を放つ博士の足元を掠めた。
その拍子に博士は転んでしまい倒れているカガチの頭の上に、頭を打ちつけて東西の中心で叫ぶような笑い声を上げて気絶してしまう。
勢い良く通り過ぎて行った美羽の視界に、倒れている2人は入らなかった。
「これはまた派手に散りましたね」
オペラグラスでその光景を、高台の安全地帯で眺めていたミストラルはクスリと笑う。
「フッ・・・威勢よく出てきたわりに、案外早く散ったようね」
冷ややかな目で散っていく彼らの姿を、メニエスは退屈そうに眺める。
美羽が東軍側へたどりついた頃、縁とサラスの2人が空からロケット花火を敵軍目掛けて放っていた。
「だいぶ盛り上がってるようね。私も楽しまなくっちゃ♪せっかく用意してきたコレ・・・使わないとムダになっちゃうし」
「あたしも協力するよー」
こっそり東軍に忍び込んでいた弥隼 愛(みはや・めぐみ)が物陰から現れる。
ガスバーナーをカバンの中に放り込むと、スプレー缶を1本の取り出す。
数台の砲台を愛とユインが爆破したのと合わせ、東軍の人々に向けて美羽は唐辛子スプレーをかける。
「少しパクっていっちゃおう」
愛はダンボールの中にある花火を10本ほど奪う。
「いえーい♪そろそろ戻ろうか」
3人は軽い足取りで西軍の基地へ戻っていく。
救護班テントの傍で国頭 武尊(くにがみ・たける)は、どこかに負傷者が倒れていないか望遠鏡を覗き込んで探す。
「げっ・・・あんなところに・・・。一応、開戦前に両軍のやつらにオレたちを撃つなと言っておいたから、大丈夫だろうな・・・たぶん」
東西両軍の中心で倒れている2人の男を見つけた。
この戦争で最も危険な場所は中間地点で、彼らがいる場所に行くには落下した花火が燃えているところを通らなければいけない。
そこは火の海と化し、まるで地獄絵図のようだった。
「リヤカーで運んだほうがいいんでしょうか?」
「どうだろうな・・・2人だけのようだが」
「じゃあ私たちが引っ張っていきますね」
「あぁ、怪我しないように気をつけろよ」
武尊はバイクに乗り、戦場の中央へ向かう。
スフィーリアとフタバがリヤカーを引きながら彼の後に続く。
「まったく・・・無謀なことしてこの有様か」
深いため息をつき、武尊は地面に倒れている博士とカガチを乗せてやる。
「運べるか?」
「大丈夫ですよ。フタバ、後ろから押してくださいね」
「了解ー!」
3人は負傷者を連れて救護テントへ向かう。
「メイベルちゃん、武尊さんたちが負傷を連れて戻ってきたよ」
「はいはいー、では頑張って治療しましょう〜」
スフィーリアたちが運んできたタンカーの中で気絶している2人を、メイベルとセリシアがヒールで傷を治療していく。
「花火がこっちに飛んできたわよ!」
「僕がガード耐性をかけます」
降りかかる火の粉から守るために葉月が救護テント周辺にいる人々に、ファイアプロテクトをかける。
「やっぱり戦争の参加者たちがいくら気をつけてても飛んでくるようね」
「そのようですね・・・できる限り僕が守りますよ」
「頼んだわよ」
ミーナは頼りにしているという表情で、葉月へ微笑みかける。
「ソイツヲヒキトリニキテヤッタ」
安全地帯に逃れていたロ式が博士を引き取りに現れた。
「この方のパートナーですか?」
ロ式はメイベルの問いに答えず、タンカーの中から博士を乱暴に引きずり降ろした。
「あぁっ、怪我しているのにそんな扱い方・・・!」
「ドウアツカオウガ・・・ワタシノジュウ」
博士の襟首を掴み、ロ式はズルズルと引きずっていく。
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