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リアクション
チーム「聖獣封」のソウガ・エイル(そうが・えいる)とパートナーのアリア・エイル(ありあ・えいる)が、洞窟内から火ラメに包まれて地上に戻りきてチームに合流した時、チームの面々と葉月 ショウ(はづき・しょう)は、満身創痍であると言える程に消耗していた。
翼を広げた黄水龍の威圧感にソウガは圧されたが、自身を落ち着かせるようにディフェンスシフトを唱えてから大きく呼吸した。
雪ノ下 悪食丸(ゆきのした・あくじきまる)は後方の小型飛空艇を見つけて訊いた。
「あんたは? 誰だ?」
「シャンバラ教導団のルイス・マーティン(るいす・まーてぃん)です。こっちはパートナーのサクラ・フォースター(さくら・ふぉーすたー)です、よろしく」
何て呑気に言っている時に、黄水龍は氷矢の雨を振り向けて来た。
ソウガとルイスは借り物の小型飛空艇であるにも関わらず、船体を器用に操り、龍の上空へと避け昇った。
上空から見下ろせば、龍の背にフラッドボルグと数名の生徒たちの姿があった。
「サクラ、行ってきます」
「行ってくる? 龍の背に、ですか?」
「当り前でしょう、倒れている者が居る事も見えました。援護に回ります」
ノーム教諭の策、そしてそれを成す為にチーム「聖獣封」と葉月 ショウ(はづき・しょう)が黄水龍に仕掛ける策を伝える必要がある、伝えなければ生徒たちも巻き添えになってしまう、確実に。
「しっかり操縦なさい、良いですね」
「……はい」
「信じている」
「……はい」
言い残して、ルイスは龍の背に跳び移った。ルイス、そしてサクラが操縦する飛空艇が離れるのを見て、フラッドボルグは顔を歪めて笑った。
「何をしても無駄だ。今に黄水龍は怒りで完全に自我を失う。そうなれば」
「させないっ!」
トライブ・ロックスター(とらいぶ・ろっくすたー)の綾刀での一撃を短刀で流し、詰めていた千石 朱鷺(せんごく・とき)の轟雷閃を、もう一本の短刀で同じく轟雷閃を放って相殺させた。朱鷺は体を飛ばされたが、トライブは連続で綾刀を振ってフラッドボルグに受けさせるに成功した。力比べの場である。
「人が話している時は、大人しくしているものだ」
「へっ、そいつは悪かったなっ」
いつの間にかに結んだか、フラッドボルグの腕にも釣り糸が結んであり、トライブが綾刀を持たぬ腕を引いた事で、フラッドボルグの重心が僅かに前方に移っていた。
そこを狙うはヴィンセント・ラングレイブ(う゛ぃんせんと・らんぐれいぶ)のアサルトカービンであったが、ヴィンセントが引き金を引くより先にフラッドボルグの口元が動いていた。
「危ないっ」」
パートナーの王 天鋒(おう・てんほう)がヴィンセントを抱き避けた。フラッドボルグの雷術が上空からヴィンセントを狙っていたのである。
「大丈夫か、ヴィンセント」
「あぁ、助かった」
「アイツ、厄介すぎるな」
これだけ仕掛けているのにフラッドボルグは一歩も動いていなかった。時折笑みを見せながらも、両の足を龍の背につけたまま、皆の攻撃を捌き返していた。
「ん?」
フラッドボルグが視線を向けた。黄水龍が飛んでいる、動いているのを感じたからである。
「何を企んでいる、何をしても、!!!」
突然、黄水龍の体が大きく傾いた。そして龍の巨体が頭から落下していくではないか。
「馬鹿なっ」
フラッドボルグが動きを始めようとした時、サンダーブラストが彼を襲った。
放ったのは、ルイスの肩に支えられているブレイズ・カーマイクル(ぶれいず・かーまいくる)であった。
「へっ、一撃入れたぞ、どうだっ」
ブレイズを抱えながら宙に飛び出したルイスは、サクラが操縦する飛空艇に着するを成功させた。他の面々も黄水龍の体が傾いた瞬間に、それぞれの飛空艇に跳び移っていた。
フラッドボルグだけを乗せ、黄水龍は墜落して行くのである。
龍の背に跳び出したルイス・マーティン(るいす・まーてぃん)を見ながら、雪ノ下 悪食丸(ゆきのした・あくじきまる)は、しみじみと言った。
「あの先生の策は面白いが、何か、全部もって行かれてる気がして、気に喰わねぇな」
「そう言うな、鏖殺寺院なんてものが出て来たのでは仕方があるまい、それだけ大事なのだ」
「まぁな、あの男に女王器を持って行かれるのは、余計に腹が立つな」
「賛同する、全力で死守するべきだ」
「ところで、女王器って何だ?」
これまで軽快に応えていたパートナーのジョージ・ダークペイン(じょーじ・だーくぺいん)も言葉を無くして首を傾げた。
この問いには、クルード・フォルスマイヤー(くるーど・ふぉるすまいやー)のパートナーで剣の花嫁のユニ・ウェスペルタティア(ゆに・うぇすぺるたてぃあ)がクルードに問い直した。
「確か以前に……どこかの遺跡で朱雀の女王器が……見つかりましたよね?」
「あぁ……、アトラスの遺跡……だったと思ったが……」
「何か関係がある……のでしょうか」
「教諭は知っていても……、言わないだろう……、女王器に関する情報が少ない事は……間違いないのだが」
「はいはい、2人ともそこまで」
もう一人のパートナー、アメリア・レーヴァンテイン(あめりあ・れーう゛ぁんていん)が手を叩いて会話を制止した。
「ソウガの準備が出来たみたいよ」
パートナーのアリア・エイル(ありあ・えいる)が飛空艇を龍の眼前に移動させた所でソウガが小さく振り向いた。合図である。
ソウガはアリアの光条兵器である真っ白な片刃長剣で龍の鼻頭を突き刺すと、脱兎の如くに
飛空艇で逃げ出した。
黄水龍の視界を飛びまわりながら逃げる事で、追いかけるという行動を取らせる事に成功していた。もう少し。
陸が見えた浅瀬上において、策が開始された。
龍を狙う4機は黄水龍の頭上まで昇ると、揃って急降下を始め、落下の勢いのままに飛空艇を飛び出した。
ジョージが龍の頭に雷術を放つ。ダメージを期待したのではない、目印としたのだ。
その目印を中心に、小さな円を形成する位置に、各々が技を放つ。
ショウとクルードは渾身の轟雷閃を。
ユニは火術、アメリアは爆炎波を。
悪食丸とジョージは2人で編み出した一体技、吸精幻夜による「アイアンメイデン」を。
同時に叩きこむ事で威力を乗じさせた。
黄水龍を頭から墜落させるだけの威力となったのだ。フラッドボルグを乗せたまま、黄水龍は墜落して行ったのである。
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