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伝説のメイド服を探せ!

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伝説のメイド服を探せ!

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罠の正体
「いやああぁぁ、何なのぉぉ!」
 ひとつめの扉から、頭を真っ白にしたすいかが飛び出してきた。
「頭いたいよー!」
 ふたつめの扉から、頭を抑えた翔太が駆け戻ってきた。
「こいつのせいであります!」
 その後ろからロレッカが、何か銀色のものを運んできた。
「ひどい、ひどいッス!」
 目に涙を浮かべながら、サレンがみっつめの扉から戻ってきた。
 沙幸とエレン、ゆずきも、顔を真っ赤にしている。
「おい、何なんだ! 罠か?」
 悠が、戻ってきた一行に尋ねた。
「これであります!」
 ロレッカが運んできたのは……大きな金ダライ。
「こっちなんか、これッス!」
 サレンが持っていたものは、こんにゃくのようだ。
「俺なんか、これで転んじゃいました」
 陽太が手にしているのは、バナナの皮。
「この白い粉は……」
 すいかが頭の白いものをぱっぱと払っている。
「これは……けほっ。チョークの粉じゃない?」
 白く舞い上がる粉。これはどうも授業でおなじみチョークの粉だ。
「ってことは、頭に落ちてきたアレは……黒板消し?」
 すいかが、がっくりと肩を落とした。
「古代の罠とは思えんバイ。罠っていうか、これはイタズラ……」
 ゆずきが周りを見回した。
「何かいるのか……?」
 他の一行も、周囲に警戒した。
「どっかから……視線を感じる……」
 何かに気が付いたのは、白河 康平(しらかわ・こうへい)だ。
「ご主人様、どうなさったのです?」
 ゆずきが不安そうに、康平に尋ねた。
「しっ。たぶん、誰かが見てるぜ。観察されているというか……」
 どこからか見られている予感。背筋がぞくぞくする。
「でも、天井も周りも、何もいないように見える。どこから……」
 康平は視線をあたりに巡らせる。が、相手の姿は認められない。
「あれ……?」
 小柄なクー・ポンポン(くー・ぽんぽん)が、他のメンバーよりも低い視線だったおかげで、怪しい場所を発見した。
 壁に、不自然なほどまんまるな穴があいているのだ。
「こういう時はこれかな……」
 クーは、『小人の小鞄』を取り出した。
 小さな小人さんが、鞄から現れた。
「小人さん。難しいことはしなくていいよ。ただ、ちょっとコレを持ってあの穴の中に入って。すぐに戻ってきていいからね」
 クーは小人に小さなお菓子をひとつ持たせ、穴の中へと入らせた。
 しばらくの後。
 戻ってきた小人の手に、持たせたはずのお菓子が無かった。
「なんかいるよ」
 クーは確信を持って、皆にそう言った。
「こ、こんな方法で敵を見抜けるんですね……」
 浅葱 翡翠(あさぎ・ひすい)は、感心してつぶやいた。
「敵はもしかしたら天然さんかもしれないですね」
 翡翠はそう言いながら、てきぱきと何かの準備を始めた。
「それは……?」
「しっ。みんな普通にしていてください。あの穴から見える範囲の死角に入って、作業しますから」
 翡翠は素早く皆のもとを離れると、壁づたいに穴の方へと向かった。
 そして、穴の周りに仕掛けをし、手を挙げて皆に合図をした。
「いきますよーーーー!」
 バーーーーーン!
 翡翠の『破壊工作』で、穴のあった壁は見事に崩れ落ちた!
「うっひゃあ! 見つかっちゃった!」
 煙の向こうから姿を現したのは……。
「妖精ピクシー!」
 ピクシーはふわりと飛び上がると、ゆずき一行の頭上を、挑発するようにくるくると飛び回った。
「ここは今、あたしのおうちなの。入り込んだってことは、あたしのおもちゃになってもいいってことでしょ」
 きゃははっとピクシーは甲高い声で笑った。
「家ってことは……あの扉の開け方も知っているのか!?」
 悠がピクシーに向かって叫んだ。
「ああ、アレ見つけたんだ。うん、もちろんあたしは開けられるよ。教えないけどね」
「だったら聞き出す!」
 悠が身構えた。
「やだあ、マジになっちゃってもぉ」
 ヒュッ!
 風を切るような音がして、ピクシーの姿が見えなくなった。
「ゆずきちゃん、逃げて!」
 最も早く反応し、ゆずきに警告をしたのはカーマル・クロスフィールド(かーまる・くろすふぃーるど)だ。
「痛くなっちゃえ!」
 いつの間にかゆずきの頭上にいたピクシーは、大きめの石を、ゆずき向かって投げつけた!
「危ないっ」
 カーマルは、持ち前の瞬発力で、素早くゆずきを抱きかかえて飛んだ!
 ゴンッ!
 鈍い音がして、石は今までゆずきがいた場所の床にぶつかった。
「けっこう大きな石……。危なかったねぇ」
「あ、ありがとうございます……お嬢様」
 カーマルの手を借りて起き上がるゆずき。
「危機察知や瞬発力には自信があるの。理数が苦手なんだけどね」
 カーマルは、そう言ってゆずきに笑いかけた。怖い思いをしただろうから、緊張をほぐしてあげようと考えたのだ。
「側にいるから安心して。大丈夫だから」
 カーマルはゆずきの前に立った。
「お、お嬢様……」
 ゆずきはまだショックが抜けきらないようだ。
 ふらりと後ろに倒れかかる。
「おっと!」
 その背中を白雪 魔姫(しらゆき・まき)が素早く支えた。
「そこ、踏まない方がいいわよ」
「え?」
 ゆずきの足元。ここにも不自然な出っ張りがあった。
「危なっかしいわ。ちょっと待ってて、その罠なんとかするから」
 魔姫は床の出っ張りを調べ、解除できる罠と判断した。
「とりあえずこれで……いいわ」
 床の出っ張りは、踏んだら針が飛び出る原始的なものだった。解除にそう時間はかからなかった。
「助かりました。ありがとうございます!」
「ワタシは魔姫よ。感謝してくれるのなら、今度ぴなふぉあでサービスをして欲しいわ」
「ええ、ぜひいらしてください!」
「パートナーのエリスにもサービスしてくれるかしら?」
「もちろんですよ、魔姫お嬢様」
 メイドさんとのコネを作ることを目的としていた魔姫は、見事目的を達成できて、満足げに微笑んだ。
「これでウチのエリスを……ふふ……」


ピクシーを捕まえろ!
「出たり消えたり、ちょこまかと厄介なヤツだ!」
 ピクシーは、素早い動きで皆の目の前に現れたり、消えたりを繰り返している。
 遊んでいるかのようだ……というか、遊んでいるのだろう。
「あれを捕まえて、扉の開け方を白状させないと……」
 しかし、目で追うこともできないピクシーの動きに、皆は疲れてきていた。
「ゆーずきーーーーー!」
 遺跡に響く叫び声。バタバタと複数の足音。
「ともちゃん!」
 バトル担当ともチームが、異変を察して走ってきたのだった。
「後は任せて!」
 ともが身構える。
 先ほどの戦闘で、ともの言う「七つ星拳法」が意外と頼りないことを悟った周囲は、ともの警戒を怠らない。
「ともちゃん! ひゅんひゅん飛んでいるピクシーさんを捕まえて欲しいバイ!」
「わかりましたぁ!」
 返事だけは力強いとも。
「また新しい子が来たの? あっははは、それじゃご挨拶!」
 どこからかピクシーの声がしたかと思うと、次の瞬間、ともの目の前にいた!
 バシッ!
 ともにピクシーが突撃する寸前。
「……させるか!」
 シールドでピクシーを白砂 司(しらすな・つかさ)がはじき飛ばしていた。
「助かりました……」
「いや」
 ともの礼に、司はぶっきらぼうにひとこと答えた。
「ちょっと何なのよあんた! なんで邪魔するのよ」
 間違いなくともをとらえたと思っていたピクシーは、邪魔をした司に食ってかかった。
「彼女は仲間だから守る。他に理由が必要か?」
「キーーー! まだまだ!」
 再びピクシーが飛び上がった!
「まだ来るぜ。全員、油断するな!」
 司が周りに呼びかけた。緊張感が高まる。
「むぅーーー! あの子、ともが捕まえてお説教するのです!」
 ともはどうやら本気モードに突入したようで、ぶんぶんと拳を振り回した。
「へへ。ちょっとご立腹のともちゃんもかわいいぜ」
 ともの様子を後ろからじっと見ていた国頭 武尊(くにがみ・たける)がにやにやと笑った。
「何をニヤニヤしてるんだ?」
 武尊に気が付いた司が、ため息混じりに突っ込む。
「べ、別にいやらしい気持ちでガン見してる訳じゃないぜ。彼女をサポートするには、その一挙一動を見逃す訳には行かないんだよ!」
「……ふうん」
 武尊は非常にもっともらしいことを言ったが、司は全く信じなかった。
「必死に敵を探して、輝く瞳で周りを見回してるぜ。へへ、いい光景じゃねぇか。あのピクシーも空気読んで、スカートのあたりを飛んでくれりゃあ風でさぁ……」
 ドンッ!
 一人妄想を膨らませていた武尊は、突然襲いかかった後頭部への衝撃に絶えられず、前のめりに倒れた。
「いったぁ。あんたどこ見てんのよ! ぼーっとしてないでよばかぁ」
 攻撃を加えたのはピクシーだが、どうやら当たるつもりはなかったらしく、事故のようなものだった。
 床に倒れた武尊は、それでもまだともを見つめていた。
「へへ……これも……いいアングルじゃねぇか」

 相変わらずピクシーは動きまわっている。
 だが、先ほど事故的に武尊の後頭部に衝突したのがダメージになったのか、徐々に動きは鈍くなってきているようだった。
「このーーーっ!」
 再びピクシーが攻撃に転ずる。どうやらともをリーダーだと知ったようで、集中的に狙ってくる。
「とも殿!」
 藍澤 黎(あいざわ・れい)が素早く『弾幕援護』し、七枷 陣(ななかせ・じん)が機関銃をかまえて飛び出した!
「……もうっ!」
 ピクシーは再び上空に逃げる!
 陣は一瞬間に合わず、攻撃を加えることができなかった。
「く……逃げられた! 認めたくないものだな……自分自身の、若さゆえの過ちというものを……」
「別に、若さゆえの過ちってわけじゃないと思いますけど……」
 すかさずともが突っ込む。
「とも殿。もはや素手では太刀打ちできまい。これを使うといい」
 黎はずいっと機関銃をともに差し出した。
「いらないですっ! 一子相伝の七つ星拳法は、武器なんていりません! 武器は邪悪なお兄様が使うものですっ!」
「武器。そう、そんなのは飾りだ! 偉い人にはそれが分からんのだ!」
「ご主人様には、現在の状況が分からんのですかっ!」
 そうこうしているうちに、再びピクシーが頭上に現れた!
「何っ! この時点での攻撃は、古今例がない!」
「……あの、相手にとって好機だと思いますけど……」
 バカにされているような気がしてきたピクシーが、怒りにまかせて飛びかかってくる!
 「く、ふふ、ふはははははははははは……!」
 明智 珠輝(あけち・たまき)が前に躍り出て、機関銃を乱射した!
 ダダダダダダ!
「あえて言おう。一発も当たっていないと……」
 ともが深い深いため息をついた。
 一発も攻撃が当たらなかったピクシーは、そのまま一直線に飛んできて、ヴィナ・アーダベルト(びな・あーだべると)の顔面に直撃した!
「もう一発喰らっちゃえ!」
 ターンして飛んできたピクシーが、今度はヴィナの反対側の頬を直撃した!
「殴った……二度もぶった……奥さんにしかぶたれたことないのにっ!」
「坊やだからさ」
 何にもしていないのにダメージを受けたヴィナにかわり、前に進み出た陣が、にやりと笑ってつぶやいた。
「ともちゃん、オレはあのモンスターを討ちたい。オレを導いてくれ!」
「悲しいけどそれ、無理なのよね」
 どうやらともも調子が出てきたようだ。
「ふふふ……見えた、見えたぞ!」
 珠輝が叫んだ。
「分かるぞ、ピクシーよ。妖精とはいえ女性なのだ。貴様のコトは、貴様以上に知っているつもりだ! あくまでつもりだ! さあ、欲していたのであろう……お色気を!」
 何故か珠輝は、着ている服を脱ぎだした!
「ちょ、ちょちょちょちょ……!」
 さすがのともも大あわて。
「な、なんで脱ぐんですかあぁぁ!」
「珠輝さんがチャーミングすぎるからさ」
 ヴィナのフォローは、フォローになっていない。
「ちょ、明智さん何水浴びしてんですか!? ここ水ないし!」
 陣の声も、珠輝には届いていないようだ。
「何やってる、明智! 服を着ろ、服を!!」
 ドゴオッ!
 黎の上段回し蹴りが珠輝の後頭部にクリーンヒット!
「黎……はかったな、黎っ!」
「これが逆襲のヴィナだ!」
 ドスウッ!
 ヴィナの上段回し蹴りも、珠輝の後頭部にきれいに入った。
「な、なぜ……だ……」
 珠輝はついに膝を突いた。
「なんでなんでなんであんたたちだけで盛り上がってるのよぉぉ!」
 遂にピクシーがキレた。
「みんなしんじゃえーーーー!」
 飛び込んでくるピクシー!
「よし、ジェットストリームアタックだ!」
 陣が立ち上がった!
「了解!」
「いくぜ!」
「よしっ!」
「一人多いですけどぉ!」
 そんなことはおかまいなし。
「「「「ジェットストリームアターーーック!」」」」
 4人いっせいにピクシーに飛びかかる!
 おまけに一人半裸だ!
「きゃああああああああぁぁ!」
 どさどさどさどさっ。
 4人が折り重なるように倒れた、その一番下。
「きゅううぅぅ……」
 ぺっちゃんこになったピクシーが目を回していた。