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第7章 研究所防衛戦

 普段は静寂に包まれている大地に、馬のいななきと地響きが轟いた。
 シャンバラ大荒野に居を構えるライナスの研究所。
 その研究所に馬を走らせ、もの凄い勢いで近付いているのは、バルゴフの差し向けた馬賊たちである。
「ライナスの溜めこんでる機晶姫を見逃す手はねえよなあ! やっちまうぞ野郎ども!」
 哨戒に務めていた霧雪 六花(きりゆき・りっか)が、土煙をあげて迫る襲撃者たちを発見し、パートナーのシャーロット・モリアーティ(しゃーろっと・もりあーてぃ)に報告に走った。
「シャル、敵が来たわ。シャルの予想通り、あれはバルゴフの手下の馬賊よ」
「やはり来ましたね。警戒しておいて正解でした。奉先」
「わかった。行こうぜ」
 重いハルバートを軽々と担ぎ、凛とした表情で立ち上がったのは呂布 奉先(りょふ・ほうせん)
 彼らが研究所の外に出ると、既に戦いは始まっていた。
「深追いはするな! 研究所に近づけなければいい!」
 研究所の入口を固めた月島 悠(つきしま・ゆう)が、指示を出しながらスプレーショットを乱射する。
「まだまだ開発したりないですからね。とっととお帰り願いましょう」
 麻上 翼(まがみ・つばさ)が怖い笑顔を浮かべて、光条兵器による銃撃をひたすら繰り返していた。
 怒りの原因は、パーツ開発の邪魔をされたせいか。
 途切れることのない掃射によって、考えなしに突っこんでいた馬賊が相次いで落馬する。
「うぐぐ、てめぇらぶっ殺す!」
 馬から落ち、怒りに駆られた馬賊が研究所へ突撃をかけるが、そこに五条 武(ごじょう・たける)が立ち塞がる。
 敵を前にして、武は気合を入れるように両の手の鉄甲を打ちつけた。
「ようやくオレの出番だな。中での手伝いじゃ、たいして役に立てなかったからな、暴れさせてもらうぜ!」
 武が馬賊の集団に飛び込み、目の前の敵を拳の一撃で昏倒させた。
 直後に振るわれたいくつもの剣を回避しつつ、馬賊を次々と叩きのめしていく。
「くそっ、なにしてやがる! たかが小僧ひとりじゃねえか!」
「残念ながら、ひとりではありませんよ」
 悪態をついた馬賊の前に、シャーロットが立っていた。彼女の雷術によって、その馬賊はあっさりと倒されてしまう。
「奉先は前衛に。六花はかく乱ととどめをお願いします」
 シャーロットの指揮を受け、奉先がハルバートで馬賊を薙ぎ払った。
 体勢の崩れた隙を逃さず、六花が素早い動きで斬撃を加える。
「撃ぇ――!」
 悠と翼の後方支援もまだ続いていた。
「ちくしょう! こんなヤツラがいるなんて聞いてねえぞ! 退却だ!」
 馬賊のひとりがそう指示する前に、動ける馬賊のほとんどはその場から逃げ始めていた。


「ふむ、わりとあっけなかったな」
 馬賊の逃げた方向を見ながら、悠が言う。
「元々、こちらにはそれほどの戦力を割いていなかったようですね。本命は遺跡、ということでしょうか」
 シャーロットが言う通り、研究所を襲撃してきた馬賊の数は少なかった。
「もう一度襲ってくるだけの戦力はない、か……いや待て、なにか来るぞ!」
 武の声に、その場にいた全員の視線が集中する。
 彼の指差した先、馬賊が逃げたのとは別の方角から、新たな一団が研究所に近付いていた。
 しかし先ほどとは違い、その一団は馬の他にも空飛ぶ箒や小型飛行艇などで構成されている。
「いや、あれはおそらく……」
 悠がなにかを言う前に、かなりのスピードで近付いていた一団が、研究所の前で急停止。
「大変ですぅ! 隆さんが!」
 馬から降りた皇甫 伽羅が叫ぶ。
 悠たちが見たのは意識を失い、荒い息を吐いて弱りきった隆の姿だった。