First Previous |
1 |
2 |
3 |
4 |
5 |
6 |
7 |
8 |
9 |
10 |
11 |
Next Last
リアクション
こちら観戦席
「……なるほど、セルベリアは兄貴分と小隊の戦友の応援に来たのか」
呼雪の言葉にイリーナはうんうんと頷き、先ほど携帯で撮った、亮司が悠の耳元で囁く姿を、教導団の仲間に心を込めて一斉送信した。
「これで良し、と。後は早川とゆっくり観戦しよう」
「そうか」
自分の隣に座るイリーナを微笑して見つつ、呼雪はフィナンシェを差し出した。
「たいしたものじゃないが、茶菓子にと思って持ってきたんだ」
「ああ、ありがとう。私は紅茶を持ってるので良かったら」
イリーナが紅茶を入れて呼雪に渡す。
それを受け取り、一緒に競技の様子を眺めながら、呼雪が首を傾げた。
「それにしても、この競技……審査の基準はどうなっているんだ?」
「なんだろうな……ジェイダスの独断で決まるとか?」
「……」
まったくないと言えないところが、薔薇学生としては辛いところだ。
呼雪の複雑そうな顔を見ながら、イリーナは呼雪のパートナーの事を聞いた。
「ファルやユノはどうした?」
「ユノは今回出場している」
「そうなのか、それじゃ後でユノの応援をしよう。早川はなんで出なかったんだ?」
「執事なんて柄じゃないからな……それよりもユノに、人に喜んでもらうということを学んで欲しかったんだ」
2人が話していると、そのそばに、白い瞳の少女が立った。
「あら……もしかして、お邪魔かしらぁ?」
メイベル・ポーター(めいべる・ぽーたー)がイリーナと呼雪の前に立ち、小さく首を傾げた。
「良かったらご一緒にと思ったんですけど〜……」
「ああ、どうぞ。別にお邪魔とか、そんな心配は無用だ」
イリーナが手を振り、呼雪が小さく頷く。
互いに恋人のいる身なので、2人きりで……という気はない。
ただ、百合園の制服を着たメイベルを見て、イリーナは首を傾げた。
「百合園のお嬢様ならば、観戦じゃなくて参加じゃないのか?」
「いえいえ、私はお嬢様というタイプではないので」
いかにも令嬢然としたメイベルを見て、イリーナは「もったいない」と言ったが、メイベルは笑顔で首を振った。
「どうぞであります! いつもデートだと連れて行ってもらえないので、こうやって他校の方と遊べるのは歓迎であります!!」
トゥルペが踊りながら迎えると、フィリッパ・アヴェーヌ(ふぃりっぱ・あべーぬ)がパラソルを立てながら、不思議そうにチューリップの花弁を触った。
「お花のゆる族って珍しいですわね」
「お褒め頂き、ありがとうございますー」
「サンドイッチとかもあるのでどうぞー♪ みんなで食べよう」
温かい飲み物の入った水筒も置き、セシリア・ライト(せしりあ・らいと)が笑顔を見せた。
セシリアの見せたサンドイッチは、たくさんの種類があって、どれもおいしそうだった。
「ああ、ありがとう。なんだか本格的になってきたな」
呼雪がテーブルに広がった食べ物を見て、そう呟いた。
「お茶もお菓子も軽食もですから、本格的ですわねー」
「エレーナさんの作られたお菓子もおいしいですよ」
メイベルの言葉にエレーナがうれしそうに笑顔を見せた。
「でも、本格的なのもいいんじゃないかな。みんなの応援を最後までだから、かなり時間かかるだろうし」
「そうですね。ただ、時間はかかっても、それだけ得るものがあると思いますわ」
「それは同意だな。専門だったり、やる気のある連中のお手並みを拝見させて貰うには良い機会だ」
呼雪がもらったサンドイッチを摘みながらメイベルの意見に同意する。
「だけどさ、目的の一つは達したよね?」
「目的の一つ?」
「うん、みんなで楽しくわいわいやりたいなって思ってたから。イリーナちゃんや呼雪ちゃんと知り合えてこうやって楽しく観戦できるから、目的の一つは達成だよ」
楽しそうなセシリアを見て、イリーナと呼雪は顔を見合わせ、冷静な2人が珍しく笑顔を見せた。
「私たちもみんなと観戦できて楽しいよ」
そのまま6人と1花は仲良く観戦をするのだった。
First Previous |
1 |
2 |
3 |
4 |
5 |
6 |
7 |
8 |
9 |
10 |
11 |
Next Last