First Previous |
1 |
2 |
3 |
4 |
5 |
6 |
7 |
8 |
Next Last
リアクション
3.偽神討伐会議
採水場を制圧しているというドージェ・カイラスの偽物を倒すために集まった学生たちは、対策案を話し合うための場を設けた。
百合園女学院のミルディア・ディスティン(みるでぃあ・でぃすてぃん)は話し合いに参加している学生たちに紅茶を配っていく。メイド服を着ているから、という理由で押しつけられた役目であるが、文句一ついわず笑顔を振りまいている。
「ぐずぐずしている時間はない。今すぐ潰すべきだ」
鬼崎 朔は、彼女として珍しく自分の意見を強く主張する。
「でも、それだと採水場に被害が出るでしょう」
伏見 明子(ふしみ・めいこ)は、朔の強硬論に反対する。彼女は、見聞を広めるためにここまでやってきた。採水場がどうなろうが彼女には全く関係のないことだ。しかし、そこは仁義に篤い明子としては被害は最小限にする努力を怠りたくはない。
「でもよ、キマク家っつうのか? あいつらが偽ドージェのことかぎつけたらいろいろ面倒なことになるんじゃないのか。決着つけるなら早いうちにするべきだと思うぜ――今日中にキメちまうってのには、賛成だぜ」
百々目鬼 迅(どどめき・じん)が右腕の包帯を気にしながら挙手する。
パラ実生のほとんどは、迅の言葉に物騒な歓声で答える。自分たちの崇拝するドージェを僭称するものへの敵対心なのか、単純に早く暴れたいだけなのかはよく分からない。
ミルディアは、活気づくパラ実生たちの姿を見て目を丸くする。パラ実生の思考回路は、やはりミルディアには理解できない。今後、パラ実と百合園との対立が増えるとの予測から、パラ実生をより知りたいと思っているのだが――
「しかしよ、やり合うんなら逃げも隠れもできない砂漠までおびき出した方がやりやすいんじゃないか」
国頭 武尊(くにがみ・たける)が発言する。かつてシャンバラ教導団に身を置いていたこともある武尊は、相手に建造物の中に立てこもられると面倒なことになりかねない。
「俺が偽ドージェをおびきだそう」
先ほどまでじっと話に耳を傾けていた弐識 太郎(にしき・たろう)が立ち上がる。
「目算があるのか」
「武人としての矜恃に賭けて」
武尊の言葉に、太郎は頷いてみせる。
「弐織さんが敵をおびきだして、それを一気にたたくというわけですね」
「よっしゃ、こまけぇことはともかく、ドージェを語ろうなんて輩をたたこうぜ!」
武尊の声に、パラ実生たちが拳を振り上げて答える。
「「はぁ〜、なんかあついんね」
百合園女学院の学生の中ではずば抜けて勢いの良いミルディアだが、粗暴さと紙一重の、あるいはむき出しの粗暴さそのもののようなパラ実生たちの熱さには思わず気圧されてしまう。
あついは、パラ実生と戦いになるとき、いかにしてこの勢いを受け流せるかがポイントになるかもしれない。
ミルディアはゆるスター柄のボールペンでそっとメモをとった。
First Previous |
1 |
2 |
3 |
4 |
5 |
6 |
7 |
8 |
Next Last