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リアクション
第1章 決して悪意はないんです・・・悪意は・・・
今日は2020年3月14日。
バレンタインデーのお返しを渡す日。
大切な人に思いを伝えるチャンスでもある。
エリザベート・ワルプルギス(えりざべーと・わるぷるぎす)はチョコをもらっていない人でも、気持ちを伝えたいなら思い切って渡してもいいと言い出しました。
「チョコを渡してない人でも、思い切って渡してしまうといいですぅ!もらってないからって、あげちゃいけないわけじゃないですよぉ〜♪」
しかし、その伝え方をアーデルハイト・ワルプルギス(あーでるはいと・わるぷるぎす)がバイオレンスにしてしまった。
「臆病な態度ではいつまでも相手に伝わらぬぞ?時には攻めて攻める、積極的な行動に出なければならん。この飴玉銃で相手のハートを打ち抜くのじゃぁあっ」
彼女の言葉を女子たちが信じてしまい、イルミンスールの校舎内はもう大混乱。
「せっかく思いを伝えるんですから、字はゆっくり綺麗に書かないと・・・」
神代 明日香(かみしろ・あすか)はエリザベートのために一生懸命、飴玉に1文字1文字丁寧に書く。
飴に“大好きなエリザベートちゃんへ♪何があっても護ります”と心を込めて、ホワイトデーの数日前から半日も時間をかけて書いた。
「そろそろ時間ですけど、明日香さん・・・もう書き終わったのでしょうか」
文字を書き終わったのか、ノルニル 『運命の書』(のるにる・うんめいのしょ)がそっと彼女の部屋のドアを開けて様子を見る。
「出来ましたぁ〜!」
「綺麗に書けましたね。きっと明日香さんの思いも伝わりますよ」
ノルニルはニッコリと微笑みかける。
「ありがとうございますノルンちゃん♪」
「では出かけましょうか」
「はい、行きましょう〜」
明日香とノルニルは急ぎ、魔法学校へ向かった。
「こんな寒い日に、買い物につき合わせてごめんな」
大切なパートナーに何を送ったらいいか分からない七枷 陣(ななかせ・じん)は、遠野 歌菜(とおの・かな)に聞こうと、イルミンスールの町中へ一緒に来てもらった。
「特に忙しいわけじゃないですから、気にしないでください」
陣の方へ振り返り、ニコッを笑いかける。
「さあ、陣さん。まずは有り金を申告するデス!ケチケチするのはナシですからね?」
手持ちの資金がどれくらいあるのか、ニヤニヤと黒い笑顔で言う。
「これで足りるんかな」
「ちょっと見せてください♪」
ポケットから陣が財布を取り出した瞬間、彼の手からひったくるように歌菜が奪い取る。
「えーっと・・・それくらいでどうなん?」
「―・・・・・・」
「あのー・・・歌菜ちゃん・・・?もしもーし?」
財布の中を覗き込んだまま無言の歌菜に、恐る恐る声をかける。
「ちっ、これだけですか」
少ない資金しか入っていない財布に対して、歌菜は顔を顰めて嘆息する。
「へ!?」
彼女の黒い言葉を聞いた陣は、頬に一筋の冷や汗を流す。
「―・・・うーん、これくらいでたぶん大丈夫だと思いますよ?いくら安いプレゼントでも、送る人の気持ちがこもっていればいいと思います♪」
彼に財布を返してニコッと微笑む。
「(なーんか、ひっかかるような言い方やね)」
ブラックフェイスから笑顔に戻った歌菜を見て首を傾げる。
「なぁ・・・どんなのを送られると、女の子って喜ぶんかなぁ。歌菜ちゃんなら、何を貰えたら嬉しい?」
「そうですね〜・・・好みに合った物を贈って貰えると、“自分のことを考えてくれてる!”って、嬉しいですかね〜♪」
「へぇ〜そうなんか」
「ちょっとおしゃれで可愛いクッキーの詰め合わせなんてどうですか?」
歌菜はお菓子屋の前で足を止めて、焼き菓子の入った箱を指差す。
「箱がアクセサリー入れになるヤツとかオススメです♪」
「彼女にはやっぱ食いもんかな」
「これなんかいいんじゃないんですか?」
「それじゃこれにするか。おばちゃん、これ!あっ、プレゼント用だから、ラッピングもよろしく」
プレゼントを渡す相手に似ている少女がユニコーンに乗っている絵柄の菓子箱を買った。
「もう1人には料理用の道具・・・とか?ていうか、ホワイトデーに調理器具とかプレゼントするのは良いんやろか・・・」
「彼女なら調理器具もアリです!ピンクとか黄色のカラフルな色のもありますし・・・。あと、ハート型や星型の可愛いフランパンやお鍋もあるんですよ♪」
「ほんじゃ、ちょこっと見に行ってみるか」
調理器具を探しに行こうと、2人は別の店へ向かった。
「これなんかどうです?」
歌菜は取っ手が流れ星のフライパンを手に取り陣に見せる。
「普通のフライパンやね」
「料理している時、熱を感知してフライパンの底がなんと綺麗な夜空色になって、まるで映像みたいに流れ星が流れるんですよ」
「へ〜、そうなんか!これが説明書やね、ふむふむ・・・季節ごとに星座も見えるんか。えーっと値段は・・・げっ、高っ!!」
特殊な技術がほどこされているため、値段も普通のフライパンを買うよりもゼロが5つ多い。
「いくら余ってるんかな。うぁ、足りない・・・」
陣は手持ちの資金と相談しようと、財布の中を見るが明らかに足りない。
「ねぇ陣さん。貯金・・・いくらありますか?」
「あの歌菜ちゃん、それはつまり・・・」
「この先に銀行があります。残り1つですからここで確保して待っていますね」
迷わないよう陣のために、歌菜はメモ用紙に道順を書いてやり手渡す。
「えっ、マジ?」
「冗談で言っているように見えますか。だって年に1度なんですから♪」
彼の背中をぽんっと押し、問答無用で貯金を下ろしに行かせた。
数分後、プレゼント代金を持って陣が店に戻ってきた。
「お帰りなさい、ちゃんと確保しておきましたよ」
「お〜、まだあったみたいやね」
陣はレジに並び、もう1人の彼女用のプレゼントを買った。
「実は今日、イルミンスールの校舎でホワイトデーのイベントをやっているんですよ。行ってみません?」
「ちょこっと時間もあることだし、行ってみるか」
プレゼントを買った2人は、イルミンスールの校舎へ向かった。
「ごめんね、キルティ。キミを恨んでるわけじゃないんだよ。とりあえず・・・・・・的になってね!!」
東雲 秋日子(しののめ・あきひこ)はそう言うと、キルティス・フェリーノ(きるてぃす・ふぇりーの)に飴玉銃を向ける。
「やはり、僕と一緒にここに来たのにはそういう意図があったんですね。秋日子さんはいつもあの子と一緒だから、おかしいと思ったんです」
連れてこられた彼女は何のためにここへ一緒に来たのか、薄々気づいていたらしく、秋日子の言葉にまったく驚く様子がない。
「だ、だって、もしあの子を連れてきたとして、私が流れ飴に当たって負傷。なんてことになったら、その飴玉銃撃った子・・・あの子に殺されるかもしれないでしょ!?」
「これから、よろしくお願いしますね。秋日子さん」
覚悟を決めたキルティスは静かに目を閉じる。
「―・・・いくよ」
「いつでもどうぞ・・・」
ダァンッと校舎内に銃声が轟く。
撃ち抜かれた彼女は階段を転げ落ちていった。
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