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【十二の星の華】黒の月姫(第2回/全3回)

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【十二の星の華】黒の月姫(第2回/全3回)
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…リハーサル日当日。

 その日は真珠も久々に顔を出していた。
「真珠、大丈夫だったの?」
 リリィと、涼が駆け寄るが真珠はにこっと笑う。それが微妙に人形じみていた。
「ええ、なにが?」
「いや、メールが途中だったから、心配したんだ」
 涼の言葉に小首をかしげると
「そうだったかしら? ごめんなさい、良く覚えていなくて。ありがとう」
 そういうと、真珠は二人のもとを去る。
「なんか、以前の藤野とは違うとは思わないか」
「ええ、あんな『お人形さん』みたいな子じゃなかったはず…」

☆    ☆    ☆


「クイーン・ヴァンガードとは関係がないが、ミルザム護衛をさせてくれ」
 環菜にミルザムに護衛を申し出る橘 恭司(たちばな・きょうじ)だったが、あっさりと断られてしまう。
「ただ、今日に限ってはミルザムを遠くから『応援』するのは許可するわ」
 意味深な言葉を吐くと、環菜はくるっときびすを返す。

 そしてこれまた、ミルザムをおとりにして、ネラをつかまえようとするトライブ・ロックスター(とらいぶ・ろっくすたー)がいた。
「ミルザムが卒業式のリハーサルに来るって言うじゃないか…」
 壇上に潜み、時を待つ。ミルザムを囮にして、敵をやっつける作戦に出ているのだ。
 その一方、校内にいるミルザムの側にはりついている警護をするトライブのパートナー、蘭堂 一媛(らんどう・いちひめ)。ミルザムに手紙を渡し、ネラが現れたら読んで欲しいという。
「おぬしはテロリストが蒼学の生徒だったら、どうするつもりなのだろうか? 斬り捨てるのか、擁護するのか。判断しだいでは、飼い主殿、トライブ・ロックスターはその場でおぬしに刃を向けるであろう。飼い主殿はそういう男だ。女王候補を名乗るなら、毅然とした判断を願う」
 と言う蘭堂 一媛(らんどう・いちひめ)
「私は出来うるかぎり説得します。でもそれが通じない場合、私は戦います」
 そう返したミルザムだった。

 そしてミルザムは洋服を着替えに奥の部屋に入ると、あでやかなロングドレスにつばの広い帽子を被って出てきて、リハーサル会場へと向かう。
 壇上へと上がっていくミルザム。
 その時、突然、放送室から非常音が鳴り始める。
「爆破物が見つかった! それぞれ、退避せよ!」
「なんですって!」
「ミルザム様!!」
 環菜が慌てて、ミルザムの名を叫んだ。
 そこに日比谷 皐月(ひびや・さつき)雨宮 七日(あめみや・なのか)が現れる。
 皐月のパートナー、如月 夜空(きさらぎ・よぞら)がニセの爆破情報を放送室から流していたのだ。
「狙われてるのを分かってて顔を出すかよ馬鹿。いや、安全圏に籠もってて何が女王か、なんてのも理解出来る話だけどさ。にしたってもう少し自分の身を大事にしたって……ああくそ、苛々する。まぁ、何にせよオレのやる事は変わらねーか。友の、大切な人の為に、やるべき事をやるだけだ。ついでに、ミルザムにも少し怖い目にあって貰って……少しは自分を大事にする事を覚えさせてやるとしますか!」
 そして、朱雀鉞と交換条件にするため、ミルザムを誘拐しようとする。
 ディフェンスシフト、ファイア&アイスプロテクトを使用し、混乱に乗じて煙幕ファンデーションを使用、煙幕に紛れてミルザムを攫うつもりでいたのだ。七日も遠当てで校舎の窓を割り、その場に居る全員の気を逸らす。
 そして煙幕の効果が切れないうちに予め張って置いた禁猟区でミルザムをかっさらい、バイクで警戒しつつ撤退しようとするが、ミルザムも戦う意志を見せる。
 ミルザムが
「トラちゃん。出番でありんす!」と叫ぶ。
 思わぬところでミルザムを助けることになったトライブ!
「うっしゃあ!」
 床をブチ破って飛び出してくるトライブ。皐月たちをみるやいなや
「アッサシーナ・ネラかと思ったら、ただの生徒じゃねえか」
「…るっせーなあ、こっちの邪魔すんじゃねえよ」
 皐月がミルザムの手を掴み、バイクに乗せようとし、七日が顎を掠めるような蹴りをトライブに食らわせると、肉を切らせて骨を絶つ、ワザと一撃を身体で受け止めて腕を掴み、直接スキル・雷術を叩き込んだ。
「きゃあ!」
 七日が吹き飛ばされかけるのを、ミルザムの手を離し、皐月が受け止める。
「てめえ! 良くも!」
 そこに待機していたローザ・セントレス(ろーざ・せんとれす)が軍用バイクに乗り、ミルザムの元へと到着。ディフェンスシフトを掛けてガードし、ミルザムをバイクに乗せて去ると、こんどはコレット・パームラズ(これっと・ぱーむらず)が皐月たちに対してスキル「光術」で目くらましをする。
「うわあ!」
「そこだ!」
 トライブや恭司が皐月と七日を取り押さえ、一媛が放送室に駆けつけ、鉢合わせした夜空をつかまえる。
「ミルザム様、良かったです…」
「…ごめんなさい、ローザさん、自分、ミルザムではないのです」
「え?」
 ふわっとつばの広い帽子がバイクの風でたなびいて、銀色の髪が現れる。
 ミルザムと思っていたのは、朔だったのだ。
 朔は環菜と相談し、アッサシーナ・ネラをおびき出すため、
「ミルザムがリハーサルの日にやってくる」
 と噂を流し、洋服を着替えに奥の部屋に入ったとき、入れ替わっていたのだ。
 
 捕らえられた日比谷 皐月(ひびや・さつき)雨宮 七日(あめみや・なのか)如月 夜空(きさらぎ・よぞら)「パラ実送り」になることとなった。
 環菜が「ふう。本命の『アッサシーナ・ネラ』じゃなくて余計なものがつれたわね…これでまだまだ気を抜けない状況が続くのね。苦労が絶えないわ」とぼやいた。